QST2016での開会挨拶

QST2016
~量子科学技術 調和ある多様性の創造を目指して~

 
 量子科学技術研究開発機構(量研機構: QST)は、本年4月に、放射線医学総合研究所と、日本原子力研究開発機構の量子ビーム応用研究部門、核融合研究開発部門が統合し、量子科学技術という新しいサイエンスの領域を切り拓く国立研究開発法人として発足しました。全国に5箇所の研究所と7箇所の拠点を有しています。
 人類20万年の歴史の中で、今我々は5回目の大変革期に生きています。それは量子科学と生命科学の時代です。あらゆるモノ、コト、ヒトがICTでつながり世の中のありかたそのものが大きく変化しています。また生命科学の進歩は40億年続いた自然淘汰による生命進化から科学設計へと未踏の世界へと進んでいます。人の心の問題や人間の存在そのものの意味が問われる時代でもあります。また見方を変えれば「多様性爆発の時代」でもあります。このような時に量子科学技術を標榜するQSTは誕生しました。
 私たちQSTは、量子科学技術により「調和ある多様性を創造」し、我が国はもちろんの事、平和で心豊かな人類社会の発展に貢献することを理念とし、世界トップクラスの量子科学技術プラットフォームになることを志しています。人類究極のエネルギー源である核融合研究、革新的機能材料の研究開発、重粒子線によるがんの治療や認知症などの診断・治療研究開発、安心・安全を支える放射線被曝・防御医学・医療など、量子科学技術を基盤としてエネルギー、生活、命にかかわる幅広い研究領域を推進しています。

 本シンポジウムでは、私たち、QSTが何を目指し、どのような研究開発を進めようと考えているのか、そして、法人の名称にもなっております、量子科学を私たちがどのように捉えているのかをご紹介したいと考えております。
 量子科学は、量子論や量子力学ではありませんが、密接に関係しています。普段、私たちが生活の中で見たり感じたりすることができる様々な現象には、実は、量子論や量子力学で論じなければ説明できない現象があります。皆様がよくご存じのリニアモーターカーを支える超伝導はその代表格です。この超伝導は、QSTが進める、核融合研究においても重要な役割を果たしております。
 一方で、量子論が入り込む余地がない、と思われてきた現象にも、実は、量子論的な視点による解析が必要であることが示唆されつつあります。例えば、渡り鳥が正しく自分の位置を判断するために、からだの中では量子が持つスピンという特性が不可欠である、という報告があります。このことは、生命科学の分野においても、量子論的な視点の導入が必要であることを示しています。
 私たちは、QSTが進める研究開発において、量子の世界がそれぞれの研究対象の背後に潜んでいることを強く意識をして、さらに研究を深めていこうと考えており、このような考え方にもとづく研究を、量子科学研究と定義したいと考えております。

 本シンポジウムでは、QSTの研究についてご紹介をさせて頂きますが、会の前半では、宇宙論に関する第一人者でいらっしゃる佐藤勝彦先生に、宇宙の始まりにどのようなことが起こっていたのか、それを138億年経った今、どのように観測するのか、といったお話について、また、会の後半では、レーザーの理論研究の第一人者でいらっしゃる田島俊樹先生に、レーザーに関する理論から実現への道が見えてきた、レーザー加速について、特別講演を頂くことになっております。

 また、特別講演をして頂く佐藤勝彦先生と、世界的に有名なアスリートで、世界陸上で2度の銅メダルに輝いた、為末大さんとの対談では、会場の皆様が不思議に思ったり、疑問に思ったことが議論されることと思います。

 私たちは、QSTの理念である、量子科学技術による「調和ある多様性の創造」により、平和で心豊かな人類社会の発展に貢献するとともに、量子科学技術そのものを社会に還元することにより、エネルギーや生活環境問題、そして健康長寿社会に貢献し、人類の未来を切り開いていく覚悟です。また同時に放射線被曝・防御医療など、公共指定機関としての役割を確実に果たして参る所存でございます。

 今後一層、皆様方のご支援、ご鞭撻を賜りますことをお願い申し上げます。
 
国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構
理事長 平野俊夫

 
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