退職を迎えられる皆様へ

本日3月31日をもって量研を退職される皆様方、無事、お元気でご定年の日を迎えられたこと、心よりお喜びいたします。また長年の皆様方のご貢献に対し量研を代表し心より感謝いたします。

ここにおられる皆様方の多くは、昭和50年代から60年代にかけて採用され、それぞれの組織さらには我が国の発展に心血を注いでこられた方々であり、これまで旧組織時代を含め量研が社会や国民の負託に応えることができたことは、ひとえに、それぞれの分野において職務に精励された皆様のご尽力の賜物であります。その皆様方のこれまでの多大なご功績に、ここに心からの敬意と謝意を表したいと思います。

長年、働き慣れた職場を後にすることは、色々なことが走馬灯のように脳裏を去来し、感慨も一入のことと想像します。私自身、一昨年の大阪大学総長を退任した際には、これまで労苦を共にした同僚や仲間との惜別、やり残したことへの心残りなど、名状しがたい寂寥感を抱いたことを鮮明に記憶しています。

量研は発足して1年とまだまだ未熟な組織であり、発展途上にあります。豊富な知見と貴重な経験をお持ちの皆様方を本日お送りしなければならないことは、量研の経営責任を担う者として誠に残念でなりません。幸い、皆様方の多くは、引き続き量研を支えていただけるとお聞きしており、量研に残る我々としては大変心強く感じております。

我々は、量研の理念である量子科学技術による「調和ある多様性の創造」により、平和で心豊かな人類社会の発展に貢献していくため、今まさに様々なことに取り組み始めたところであります。

放医研が世界で初めて開発に成功した重粒子線によるがん治療装置に関しては、核融合部門やパワーレーザーの研究者、更には国内メーカーと連携し、「がん死ゼロ」による健康長寿社会の実現に向けた新たな「量子メスプロジェクト」を立ち上げました。その他にも部門の壁を越え、更にはQSTの壁も越えた新たなイノベーションの創出に向けた取り組みが始まっています。勿論、融合研究以外にも、国際プロジェクトとして進められているITER計画の国内実施機関としての着実な遂行や指定公共機関としての役割などもしっかりと果たしていかなければなりません。

このような取り組みの中で、これから直面する数々の課題に対しても決してあきらめることなく、皆様方お一人お一人の力もお借りしながら、目標に向かって全力で立ち向かっていきたいと思います。

最後にサミエル・ウルマン原作、岡田義夫訳、「青春」の詩を皆さんに贈ります。なお出典は青春の会です。

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青春とは人生のある期間を言うのではなく、心の様相を言うのだ。
優れた創造力、逞しき意志、炎ゆる情熱、怯懦を却ける勇猛心、安易を振り捨てる冒険心、こう言う様相を青春と言うのだ。
年を重ねただけで人は老いない。理想を失うときに初めて老いが来る。
歳月は皮膚のしわを増すが、情熱を失う時に精神はしぼむ。苦悶や狐疑や、不安、恐怖、失望、こう言うものこそ恰も長年月の如く人を老いさせ、精気ある魂をも芥に帰せしめてしまう。
年は七十であろうと十六であろうと、その胸中に抱き得るものは何か。
曰く、驚異への愛慕心、空にきらめく星座、その輝きにも似たる事物や思想に対する欽仰、事に処する剛毅な挑戦、小児の如く求めて止まぬ探求心、人生への歓喜と興味。
人は信念と共に若く疑惑と共に老ゆる、人は自信と共に若く恐怖と共に老ゆる、希望ある限り若く失望と共に老い朽ちる。
大地より、神より、人より、美と喜悦、勇気と壮大、そして偉力の霊感を受ける限り、人の若さは失われない。 
これらの霊感が絶え、悲嘆の白雪が人の心の奥までも蔽いつくし、皮肉の厚氷がこれを堅くとざすに至れば、この時にこそ人は全く老いて、神の憐れみを乞うる他はなくなる。
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引き続き量研に残られる方、第2の道を歩む方、すべての皆様方、どうぞ、いつまでも若い心を抱き続けてください。また、なにかあるときは量研を思い出していただき、訪ねていただければ幸いです。皆様の益々のご健勝とご多幸、ご活躍を心から祈念し、私の挨拶とさせていただきます。

長い間、本当にご苦労様でした。
平成29年3月31日
国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構 
理事長
平野俊夫
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