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QST未来ラボ

生体量子状態の多角的制御に基づく新規生体イメージングの創成
(量子MRI研究グループ)

磁気共鳴イメージング(MRI)は、磁場とFMラジオ波を使って安全に体内を観察できる診断技術で、国内の病院で6千台以上が稼動しています。また、磁場の強い特別なMRIは、腫瘍内部の変化や治療効果、脳の活動や心の病気など、体の形状・機能・代謝などを詳しく観察でき、生物医学研究を支える重要な理化学機器でもあります。MRIの信号源は、体の水(H2O)を構成する「水素原子核」です。本研究グループは「水素原子核の量子状態を、物理的・化学的・生物的現象を利用して多角的に制御する」という新コンセプトを掲げ、分野横断的に集まった研究者により、その先端技術を駆使して「量子制御・核磁気共鳴イメージング(量子MRI)」という新世代技術と研究分野を開拓します。「量子の眼(quantum eyes)」を開発する本研究は、多くの病気や生物の謎の解明、より安全で効果的な診断技術の開発、そして診断と治療を統合した未来医療の開拓に貢献します。



量子メスの研究開発によるがん死ゼロ健康長寿社会への貢献
(量子メス研究グループ)

量研がこれまで進めてきた重粒子線治療は、優れた成果を得てきましたが、今後は小型化・低価格化と治療高度化が求められています。現在の重粒子線治療装置は、60m x 45mと非常に大きなものですが、量研がもつレーザー加速技術と最新の超伝導技術をフルに活用することで、20m x 10mのスペースに導入できる超小型治療装置の実現を目指しています。また、難治がんの治療成績向上と治療期間の短縮化に向け、腫瘍に合わせて複数のイオンビームを照射して生物効果を最適化するマルチイオン治療を実現すべく、放射線生物・生物物理の研究を進めています。並行して、免疫療法などとの併用に向け生物・臨床研究もおこなっています。さらに、量研が有する世界最大の重粒子線治療データベースを活用し、治療の予後予測システムの開発も進めています。このように、従来の課題を克服し、高度化・超小型化された次世代の重粒子線治療装置は、より多くの症例で日帰り1 回治療が可能になることが期待され、量子ビームによる腫瘍除去手術になぞらえて、「量子メス」と呼ぶにふさわしいものです。我々は「量子メス」の開発を通じて、量研が目指す、がん死ゼロ健康長寿社会の実現に貢献していきます。

量子メスの概念図

 

量子技術の生命科学への導入と量子力学に基づく生命現象の理解
(量子細胞システム研究グループ)

偏光特性・コヒーレント特性を活用する光源や量子ナノセンシング技術と、ゲノムレベルの生命科学が連携・融合することで、細胞内の機能発現や制御を探索する新しい研究領域を切り拓きます。また同時に、ミクロな粒子の奇妙な振る舞いを扱う量子力学を基盤に、細胞中で量子効果が果たす役割を理論と実験の両面から検証します。これらのチャレンジを通じて、DNA損傷や細胞ががん化する仕組みや、電子輸送とプロトン輸送が結合したミトコンドリアにおける超高効率のエネルギー産生の仕組みの謎などに挑みます。さらには、人類の究極のテーマである脳・意識のメカニズムの探索に、量子力学の数学的定式の導入を検討します。

量子生命科学の概念図



次世代の半導体素子の製造に不可欠なEUV(軟X線)超微細化技術を創出
(EUV超微細化技術研究グループ)

人工知能(AI)などの情報技術(IT)の急速な進歩には、半導体素子の集積密度を向上させてコンピューターを高性能化する必要があります。EUV超微細化技術(EUVリソグラフィ)は、半導体素子の集積密度の向上に不可欠です。そこで、①現行のシステムで実現可能なEUV超微細化技術、②露光強度やレジスト感度などの特性で①を凌駕する次世代技術、③半導体素子材料に微細な回路のパターンを直接刻むEUV一括描画技術の3テーマの研究開発を行います。量子ビーム・放射線の科学技術を基盤としたQSTの複数拠点が連携融合し、総力を結集して、今後数十年間の主要技術分野であるEUVの基礎研究から、発生装置、微細加工工程に用いる材料に関する産業応用までをカバーする世界の研究ハブを目指します。

EUV超微細加工技術の研究概念図


量子機能材料スピントロニクスによるアトムテクノロジー時代の情報技術の発展に道を拓く
(先端量子機能材料研究グループ)

今日のエレクトロニクスが直面するエネルギー消費の問題や性能向上の限界に対して、それらを打破する新しい情報技術「スピントロニクス」が大きな期待を集めています。スピントロニクスでは、電子の量子力学的な性質であるスピンを利用して情報処理を行うことで、情報機器の飛躍的な高速化や省エネ化を実現することが期待されています。本研究グループでは、それら未来の情報技術の基盤となる材料技術の構築を目標に、グラフェンや有機分子など「量子機能材料」の電子スピン物性の解明と制御の研究に取り組みます。
具体的には、グラフェンの内部を流れる電子のスピンの向きを多様の手段で制御するマルチフェロイックスピン流制御技術や有機分子などを用いた超高密度磁気記録材料の研究を行います。私たちは、量子機能材料の構造や物性を原子レベルで観測できる最先端の量子ビーム分光技術を駆使することでこれらの研究を推し進め、超高速・省エネデバイスの実現など量子機能材料スピントロニクスによる情報技術の発展に道を拓きます。

量子機能材料スピントロ二クスの研究概念図
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