量子生命科学領域は、量子科学技術研究開発機構(QST)で進められてきた量子科学技術の研究をさらに発展させ、量子論・量子技術と生命科学を融合するための研究開発を推進し、国内外の優秀な研究者を結集することにより、量子生命科学研究の世界的拠点を構築するため2019年4月に発足しました。量子生命科学研究のさらなる進展のため、2021年4月1日、量子生命・医学部門 量子生命科学研究所として新たなスタートを切りました。
量子生命科学研究により、生命科学にパラダイムシフトをもたらすとともに、がんの新しい診断・治療法の開発、再生医療への貢献、脳機能解明、加齢状態解明など医学・医療分野におけるイノベーション創出に加えて、情報、エネルギー、農業、環境、宇宙分野等でのイノベーションをもたらすことで、平和で心豊かな人類社会の発展に貢献していきます。
皆様のご助言、ご支援、ご鞭撻のほどお願いいたします。
所長 馬場嘉信
量子生命科学とは、生命の基本単位である細胞の代謝・継承・進化に関わる生体分子を、量子レベル特有の性質を持つ粒子の集合体として扱い、その集合体としての生命システム全体を統計学的手法によって探求する学問です。そこで、露わになる系の恒常性、ダイナミズムや異方性、揺らぎといった、時間軸を含む位相空間内での特徴によって、“粒子の集団が恒常的に生きている”状態を物理・化学の観点から定義しようという野心的な科学分野だと思っています。
前世紀に量子論と古典力学を連続的な学問として結びつけようとした知性は、それを乗り越えて、素粒子論、時間軸を含む多次元空間、宇宙論などを創出しました。量子生命科学の発展もまた、これとアナロジーがあります。従来の物理、化学生物の垣根を超えて、新しいエネルギー概念、情報学、心理学、哲学、倫理学、統計学をも創出すると期待しています。
量子生命科学研究統括 白川昌宏