計測・線量評価部とは
計測・線量評価部は、放射線に関連する様々な研究開発の基盤となる放射線計測及び線量評価に関する基礎・応用研究を包括的に行っています。
具体的な研究内容としては、最新技術を利用した放射線計測技術に関する研究開発、多様な放射線被ばく事故時において正確かつ迅速に患者の被ばく線量評価を行うための研究開発、すなわち、物理学的線量評価及び生物学的線量評価に関する研究開発など幅広い分野に渡ります。
<組織構成>
・物理線量評価グループ
・生物線量評価グループ(英文紹介ページ)
・放射線計測グループ
計測・線量評価部の研究内容
内部被ばく線量評価研究
吸入や経口を介して放射性核種を体内に取り込むことで受ける被ばくを内部被ばくと言います。
内部被ばく線量評価では、まず放射性核種の種類に応じて被検者の体外計測やバイオアッセイを実施し、次に放射性核種の物理的化学的性状や体内動態を考慮し初期摂取量を推定します。
放射線緊急時に内部被ばく線量を評価するための研究として、人体を精密に再現した数値ファントムを用いた体外計測装置の応答シミュレーション、迅速なバイオアッセイ手法の開発、新しい体内動態モデルの解析等を進めています。
α線を放出するアクチニド元素(PuやAm)は、微量の摂取でも高い内部被ばく線量をもたらすおそれがあります。
したがって、これらの元素を取り扱う施設で事故が起こった場合には、体内除染剤投与などの医療処置の必要性を判断するための材料となる内部被ばくの有無及び程度を迅速に判断しなければなりません。そのための方法のひとつに、吸入摂取によって肺に沈着したPuやAmから放出される放射線を肺モニタで検出する体外計測法があります。
肺内の放射能を定量するためには、既知の放射能が封入された肺ファントムを使用して検出器を予め校正しておく必要があります。
自然放射線によるバックグラウンドを低減することで検出感度を高めるために、肺モニタは厚い遮蔽体で囲まれた鉄室内に設置されています。
外部被ばく線量評価研究
体外から放射線を受けることを外部被ばくと言います。
物理ファントムを使用した実験や数値ファントムを使用した計算シミュレーションによって、外部被ばくによる各臓器・組織の吸収線量や実効線量を評価しています。
環境中の自然放射線による低線量被ばくなど、幅広い線量レベルに対する包括的な外部被ばく線量評価手法を開発しています。
環境中の放射性物質による様々な方向からの外部被ばく線量を評価するために、人体形状物理ファントムの前面に設置した線量計の方向依存性を評価しています。
後方からの照射に対して個人線量計の指示値は低下しますが、体格の小さい小児の場合は成人と比較して方向依存性が小さいことを確認しています。
生物線量評価研究
放射線被ばくによって生じた交換型染色体異常[転座染色体や二動原体染色体]を3色FISH法により検出し、低線量域線量効果曲線を確立しました。(左図:1番染色体・赤色;2番染色体・緑色;4番染色体・黄色、右図:対比線色・青色)
最新技術を利用した放射線計測技術に関する研究開発
様々な線質と線量(率)の放射線に対する計測技術を最新の知見を導入して研究開発し、正確な線量評価を行います。
治療や診断用の放射線、原子力に関わる放射線、地球や宇宙環境における放射線等の計測・線量評価に資する研究開発を国内外の研究機関と協力して実施します。
また、先進的な計測機器等を駆使して、物理や生物分野における先端的な研究開発に対する支援も実施します。
国際連携
ARADOS
ARADOS(Asian Radiation Dosimetry Group) は、各研究機関の協力の下、自発的に構築されたアジア各国間の線量評価に関するネットワークであり、2015年より活動しています。
線量評価分野における研究開発の推進と、アジア域内の協力体制発展のプラットフォームとなることをその活動目的としています。