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量子医学・医療部門

スキャニング照射の紹介

掲載日:2019年6月26日更新
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3次元スキャニング照射システム

従来の照射法である「拡大ビーム照射法」では、加速器からの細いビーム(ペンシルビーム)を、腫瘍を覆うように広げ、コリメータにより腫瘍の断面形状に合わせてビームを整形します。一方、深さ方向には,リッジフィルターやボーラスを用いて整形します。この照射法は、腫瘍全体を同時に照射できるという特徴があります。

3次元スキャニング照射システムを開発する以前は、放医研ではこの拡大ビーム照射法を用いて、呼吸に伴い移動する腫瘍を照射する2次元呼吸同期照射法による治療を行うことにより、体幹部の適用部位を大きく拡大させました。

拡大ビーム照射法の模式図

一方、世界的に見ると、ボーラスやコリメータを用いない「3次元スキャニング照射法」が、スイス、ドイツをはじめ、複数の施設で臨床に使用されていました。これは加速器からのペンシルビームをそのまま使い、腫瘍の形に合わせて塗りつぶすように照射するものです。下図の下側は、それを模式的に示したもので、腫瘍を深さ方向に分割(スライスと呼ぶ)し、スライス平面上を塗りつぶした後、次のスライス平面を塗りつぶしていくといった順序で照射します。

3次元スキャニング照射法の模式図

3次元スキャニング照射法は拡大ビーム照射法に比べて、

  • 複雑な腫瘍形状に対応可能
  • ボーラス・コリメータが不要
  • 日々変化する腫瘍の形や位置に対応可能
  • ビーム利用効率が高い

などの優れた特徴を持っています。これにより、さらなる線量の集中と副作用の低減が期待されます。また、ボーラス・コリメータが不要となるため、腫瘍の形状が変化しても臨機応変に治療照射が行えます。しかしながら、呼吸に伴い移動する腫瘍をスキャニング照射することはできておらず、頭頸部腫瘍のような固定標的にだけ実用化されていました。

呼吸同期3次元スキャニング照射法

我々は、3次元スキャニング照射法においても、拡大ビーム照射法と同様な呼吸同期照射を実現するために、呼吸位相同期リペインティング法(Phase Controlled Repainting, PCR)を提案しました。この方法は、1つの呼吸ゲートで1つのスライスに対して重ね塗り(リペインティング)をする方法です。各スライスを同じ呼吸位相で何度も塗ることで、線量分布ムラが平均化され、均一な線量分布が得られることが期待されます。この照射法で、8回リペインティングしたシミュレーション結果を下図に示します。PCR法により均一な線量分布が得られることがわかります。

 
リペインティング無しの線量分布 8回リペインティングの線量分布
リペインティング無しのシミュレーション結果 8回リペインティングのシミュレーション結果
リペインティング無しのシミュレーション結果2 8回リペインティングのシミュレーション結果2

しかしながら,PCR法の実用化には2つの技術的な課題がありました。1つは、スライス毎に必要とされる照射ビーム量が異なるため、一定の呼吸ゲート内で照射を完了しようとすれば、ビーム強度をスライス毎に変化させる必要がある点です。そのため、HIMACシンクロトロンのビーム取り出し法を改良し、照射ビーム強度をスライス毎に制御するシステムを開発しました。
2つ目は、PCR法では同じスライス面を何度も照射するために、通常の治療照射に比べて何倍も時間がかかる点です。そのため、下記3つの手法の導入により、従来の100倍の高速化を実現しました。

  1. 高速スキャニングシステム:10倍
  2. シンクロトロン運転モードの改良:2倍
  3. 治療計画の最適化:5倍

重粒子線高速スキャニング照射

人体を模擬した標的に重粒子線のビームを重ね塗りするように照射する様子(左側は照射中のスライス毎の線量分布、右側は照射した線量の積算分布画像)です。

重粒子線高速スキャニング動画にリンクします

X線透視による呼吸同期

呼吸を模擬して移動する標的を追尾している青い枠が、治療計画で設定した位置を示す黄色の枠に入った時(枠の色が黄色から緑に変わった時)と重なった時だけ重粒子線が照射されます。

X線透視による呼吸同期動画へのリンク

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