QSTでは、放射性医薬品を用いる「標的アイソトープ治療」の研究開発に取り組んでいます。標的アイソトープ治療とは、がん細胞特有のタンパク質やホルモン受容体などに結合する化合物に、放射線を放出する物質(放射線同位体:RI)を載せた放射性医薬品をがん細胞だけに届け、放射線をがん細胞に直接照射する治療法です。
この治療法の鍵となるのは、がん細胞を死滅させる効果が高く、その効果が及ぶ範囲が細胞1~2個分ほどのα線を放出するRIを製造し、それをがん細胞だけに届ける技術です。QSTでは、2016年にα線を放出するアスタチン211の加速器による製造に成功し、治療が難しい悪性褐色細胞腫、胃がん腹膜播種、悪性黒色腫などに対する治療薬候補を開発してきました。治療薬候補が、各疾患の治療の新たな選択肢になることを目指して研究を進めています。今後は膵臓がんを対象とした研究も進めていく予定です。
この治療は、RIを治療用から診断用に置き換えれば、事前に薬の有効性を画像で確認することができます。QSTでは、同じ薬で診断と治療を行う「セラノスティクス(Theranostics)」の実現に向けて画像診断技術を高度化する研究などにも取り組んでいます。
インタビュー
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治療とイメージングを両立する、国内初 放射性治療薬「64Cu-ATSM」の実用化に向けて、悪性脳腫瘍で第1相臨床試験を進行中 |
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近年の主なプレスリリース
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滑膜肉腫に対する新しいα線標的アイソトープ治療薬候補で腫瘍消失 ―若年層に多く、治りにくく予後が悪い、滑膜肉腫の新たな治療法として期待―(2021年12月22日)
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悪性中皮腫に対する新しいα線標的アイソトープ治療薬候補を開発 ―既存の治療法では効果がない悪性中皮腫に新たな治療法として期待―(2021年9月23日)
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「酸化ストレス」を検出する世界初の量子センサーを開発 -光とMRIを使い、生活習慣病や炎症から体を守る先制医療に向けて-(2021年1月29日)