QSTでは、放射性医薬品を用いる「標的アイソトープ治療」の研究開発に取り組んでいます。標的アイソトープ治療とは、がん細胞特有のタンパク質やホルモン受容体などに結合する化合物に、放射線を放出する物質(放射線同位体:RI)を載せた放射性医薬品をがん細胞だけに届け、放射線をがん細胞に直接照射する治療法です。
この治療法の鍵となるのは、がん細胞を死滅させる効果が高く、その効果が及ぶ範囲が細胞1~2個分ほどのα線を放出するRIを製造し、それをがん細胞だけに届ける技術です。QSTでは、2016年にα線を放出するアスタチン211の加速器による製造に成功し、治療が難しい悪性褐色細胞腫、胃がん腹膜播種、悪性黒色腫などに対する治療薬候補を開発してきました。治療薬候補が、各疾患の治療の新たな選択肢になることを目指して研究を進めています。今後は膵臓がんを対象とした研究も進めていく予定です。
この治療は、RIを治療用から診断用に置き換えれば、事前に薬の有効性を画像で確認することができます。QSTでは、同じ薬で診断と治療を行う「セラノスティクス(Theranostics)」の実現に向けて画像診断技術を高度化する研究などにも取り組んでいます。
インタビュー
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近年の主なプレスリリース
- 顕著な抗がん作用を有する、生体に安全なナノ薬剤を開発 ― 「治す」と「みる」2つの機能をもつ光温熱材として、がん光温熱療法への応用に期待 ―(2020年6月8日)
- 現状検出が困難な1cm未満の膵がんを画像化-早期膵がんを診断でき、治療にも有用な画像診断法を開発-(2020年3月10日)
- 悪性黒色腫に対する標的アイソトープ治療薬候補を開発―α線を放出するアスタチン-211を用いた新たな薬剤により悪性黒色腫の顕著な抑制に成功―(2019年9月24日)
- 悪性脳腫瘍に対する日本発放射性治療薬の製剤化に成功―日本で初めて放射性治療薬を第I相臨床試験に製造・供給―(2018年7月17日)
- 滑膜肉腫に対する新しいα線標的アイソトープ治療薬候補を開発―若年層に多く、治りにくく予後が悪い、滑膜肉腫に新たな治療法として期待―(2018年6月28日)