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緊急被ばく医療の概要インタビュー

掲載日:2020年3月16日更新
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被ばく医療の豊富な経験を伝え、線量評価技術を全国に波及させる

インタビュイーの2名

山下俊一(高度被ばく医療センター長:左)

栗原治(高度被ばく医療センター 計測・線量評価部長:右)

2019年4月、QSTは国から「基幹高度被ばく医療支援センター」に指定されました。その使命の一つが、実行性のある全国的な被ばく医療体制の確立と均てん化した医療につながる線量評価の提供です。QSTを含む5機関の「高度被ばく医療支援センター」では、連携して様々な研修の標準化を進め、新プログラムによる研修を2020年4月より実施します。

新プログラムでは災害・事故の現場での初動訓練においても、従来のものに比べ、より大規模な災害を想定しており、多数の一般公衆を想定した個人被ばく線量の測定方法も伝授します。例えば近年、QSTで実施している甲状腺測定研修では、放射線源が仕込まれた約10体の人形の頸部を研修生が順番に測ります。研修生はピタリと止まることの無い測定器の指示値から代表値を読み取る技術を習得するとともに、他の研修生の結果と比較しながら放射能測定に伴う統計的ばらつきについての理解を深めることができます。

検査法以外にも、検査の場所、受付での情報収集、体表面汚染検査の方法なども伝えていきます。そこで重要になるのが、東海村JCO臨界事故(1999年)や東京電力福島第一原子力発電所事故(2011年)などの放射線事故・災害への対応を経験したQSTが持つノウハウです。放射線事故には何一つとして同じものがなく、さまざまなケースに柔軟に対応することができる専門的な人材を育成していきたいと考えています。

緊急被ばく医療関連の研修の様子

また、東京電力福島第一原子力発電所事故では、直後から不確かで真偽のほどが未確認な情報が流布してしまい、国民に大きなストレスと心理的な後遺症を与えました。これを教訓とし、新プログラムでは被災者に対する放射線リスクの伝え方、情報の伝え方、発信の仕方についても重要な研修要素と位置付けています。

新プログラムによる研修を通じて、各地の原子力災害拠点病院、さらに原子力災害医療協力機関に知識と経験を伝え、技術を波及させるとともに、養成された専門家が、各地域の実情に合わせた緊急被ばく医療訓練を実施できる体制を整えることが、基幹センターとして研修指導と人材育成に取り組む私たちの目標です。

私たちには、被ばくした患者さんに高度専門的な治療を行うという使命があります。大量被ばくによる急性放射線障害の治療には、精度の高い「被ばく線量測定(線量測定)」とその結果から導き出す「被ばくリスク評価(線量評価)」を迅速に行うことが最も重要です。特に内部被ばくの場合には計測方法、測定値の見方などの技術と、事故当時だけでなく、事故後に蓄積される様々な情報に基づく精度の高い線量評価が必要であり、QSTには国内唯一の内部被ばくのリスク評価技術と実績があります。ホールボディーカウンタによる体外計測はもちろん、排せつ物などの検体(バイオサンプル)からも内部被ばく線量を推測することができます。

内部被ばくを体外計測する肺モニタ

どのくらいの量の放射性物質が体内に入り、体内に留まり、どの程度の速さで排せつされたかによって被ばく線量は異なります。バイオサンプルからの内部被ばく線量評価は、個々の検体について採取時からの時間経過を踏まえてデータを解釈しながら線量を確定していく作業であり、検査方法として標準化することが難しい技術です。しかし、その中でも、例えばバイオサンプルの採取方法をマニュアル化して他の「高度被ばく医療支援センター」に技術移転するなど、検討していきたいと思っています。

さらに、量研では、内部被ばくによって体内のどこが、どの程度の放射線を受けるのか、人体内部の線量分布を速やかに推定するための算出方法の開発にも取り組んでいます。この技術が確立されれば、放射線内用療法の分野で利用されているα線治療法や標的アイソトープ治療などの効果判定にも貢献できると考えています。いずれAIなどの最新技術の導入により線量評価にかかる時間がより短縮され、内部被ばくされた方への治療方針をいち早く立てることができ、より迅速で的確な対応ができるようになることを目指して、線量評価技術の開発に取り組んでいます。

 

研修等の状況についてインタビュイーの2名が情報交換する様子

*所属・役職はインタビュー当時(2019年10月31日)のもの

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