放射線高度利用施設部

タンデム加速器の概要

掲載日:2019年4月26日更新
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3MVタンデム加速器

 本加速器はペレトロン型のタンデム加速器(NEC社製9SDH-2型)で、3MVの静電加速器としては比較的コンパクトなサイズです。負イオン源(外部イオン源)は、セシウムスパッター型及びRF荷電変換型の2種類を備え、水素からビスマスまでの幅広いイオン種の発生が可能です。加速電圧の変更は容易で、任意のエネルギーのDCビームが得られます。また、イオンの価数(荷電数)を選択することにより、広い範囲のエネルギーを得ることができます。本加速器はエネルギー安定度も良くマイクロビームラインも備えています。表1に本タンデム加速器の主要な性能と諸元を示します。

   表1 3MVタンデム加速器の主要な性能と諸元

項 目 明 細
型名   9SDH-2(NEC)
加速電圧  0.4~3.0MV 連続可変
昇電圧方式  バンデグラフ(ペレットチェーン)
充電電流  250μA
加速管  セラミックとチタンのメタルボンディング方式
電圧分割方式  抵抗分割
加速イオン質量  1~200amu
電圧安定度  3×10-4
電圧安定化方式 (GVM+CPO)モード、または、(スリット+CPO)モードによるコロナ電流制御
荷電変換方式  窒素ガスストリッパー
絶縁ガス  SF6(6kg/cm2・G)
90度分析電磁石  質量分解能 M/ΔM≧100
イオン源  セシウムスパッター型負イオン源×2、RF荷電変換型負イオン源
加速器本体の寸法  直径1.2m、長さ5.6m

エネルギー

 タンデム加速器で得られるイオンのエネルギーE(MeV)は次式で得られます。
      E = Ei + Vt ( 1 + q )
  Ei イオンの入射エネルギー(MeV)
  Vt 加速電圧(MV)
  q イオンの価数(荷電数)

<解説>
 負イオン源は1価の負イオンを発生します。入射エネルギーは、イオン源からの引出し電圧と初期加速電圧の和であり、加速器本体に入射する負イオンのエネルギー(Ei)です。通常この値は0.07〜0.08MeVです。タンデム加速器の高電圧ターミナルの印加電圧(Vt)は0.4〜3.0MV連続可変です。高電圧ターミナルまで加速された負イオンは、高電圧ターミナルのガスストリッパーで電子をはぎ取られ、価数分布を持った正電荷のイオンに変換されます。正電荷となったイオンは、更に高電圧ターミナルの電圧×価数のエネルギー(Vt×q)により加速器出口まで加速されます。この中から利用する価数のイオンを選択することになります。この価数分布のピーク値は、高電圧ターミナルでの加速エネルギーに依存しますが、炭素(C)以上のイオンでは加速電圧が3MV程度ではほぼ3価になります。より高いエネルギーを必要とする場合は、4価あるいは5価のイオンを選択することになりますが、当然ビーム電流強度は小さくなります。図1にC、Ni及びAuイオンに対するガスストリッパーを通過した後の価数分布(実測値)の例を示します。
最終的にイオンのエネルギー(E)は、これらの総和 E = ( Ei + Vt + Vt ・ q ) = Ei + Vt ( 1 + q ) となります。

加速電圧3MVにおける炭素、窒素および金イオンの価数分布のグラフ
図1 加速電圧3MVにおけるC,Ni及びAuイオンの価数分布

イオン種とビーム強度

 タンデム加速器では、主にセシウムスパッター型負イオン源を使用します。このイオン源から得られるビーム強度はイオンの種類によって異なります。これはイオン源における負イオンの収率が、主にその元素による電子親和力に違いがあるからです。従って、電子親和力が負または非常に小さい希ガスを負イオンに変換するのは困難ですが、希ガスのHeについては、正イオンから負イオンに変換するセルを備えたRF荷電変換型イオン源が設置されています。
 表2に、現在利用者に供給できるイオンの種類と、ターゲット上で得られる凡そのビーム強度(eμA)を示します。また、数種のイオン(C,Cu及び Au等)についてはクラスターイオンの利用も可能なので、ご希望の場合はご相談ください。尚、水素ビームまたは重水素ビームでLiやBe等の軽金属をターゲットとして使用すると中性子が遮蔽能力を超えて発生する恐れがあるため、ビーム強度を制限する場合があります。

表2 利用可能なイオン種とビーム強度  (2017.11現在)

イオン種 エネルギー
(MeV)
ビーム強度(eμA) 備 考
~6MeV
(1価)
~9MeV
(2価)
~12MeV
(3価)
~15MeV
(4価)
~18MeV
(5価)
~21MeV
(6価)
H 0.8~6 3.0  
D 0.8~6 1.0  
He 0.8~9 0.2 0.2 ビーム強度が不安定な場合有
Li 0.8~9 0.2 0.2  
Be 0.8~12 0.1 * *  
B 0.8~12 0.2 * 2.0 ※ クラスタービーム利用可
C 0.8~18 0.4 1.0 3.0 1.0 0.01 ※ クラスタービーム利用可
13C 0.8~15 0.004 0.003 0.04 0.002  
N 0.8~15 * 0.4 * 0.2  
15N 0.8~15 * 0.1 0.2 0.2  
O 0.8~18 0.8 1.0 1.5 1.0 0.2  
F 0.8~15 * * * 1.5  
Mg 0.8~15 * * 1.0 *  
Al 0.8~18 * * 0.2 * * ※ クラスタービーム利用可
Si 0.8~21 * 1.0 3.0 2.0 0.5 0.2 ※ クラスタービーム利用可
P 0.8~21 * 1.0 2.5 1.5 0.5 0.1  
S 0.8~18 * * 0.8 * *  
Cl 0.8~18 * * 2.5 * *  
Cr 0.8~18 * * 0.03 * *  
Fe 0.8~15 * 0.1 0.5 0.3  
Co 0.8~12 0.08 0.4 0.5 0.4 0.2 0.1  
Ni 0.8~18 0.4 0.5 2.0 1.0 1.0  
Cu 0.8~18 * * 1.0 * *  
Zn 0.8~18 * 0.1 0.1 0.1 *  
Ge 0.8~18 * * 0.2 * *  
Br 0.8~18 * * * 0.6 0.3  
Zr 0.8~18 * 0.05 0.08 0.08 0.04  
Mo 0.8~18 * 0.03 0.04 0.02 0.01  
Pd 0.8~11 0.05 0.03 0.02 0.01  
Ag 0.8~18 * * 0.3 * *  
In 0.8~15 * * 0.2 0.2 0.6  
I 0.8~33 0.5 1.0 1.4 1.0 1.0 更に多価も可能
Er 0.8~12 * 0.02 0.02 0.02  
0.8~15 0.05 0.03 0.025  
Pt 0.8~18 * 0.5 0.4 0.4 *  
Au 0.8~18 * * 0.8 0.3 0.3 ※ クラスタービーム利用可 
C60 0.8~9 * * ※ご希望の場合、ご相談ください

注) 表中の「*」は利用可(データ無し)、「-」は利用不可
   単位(eμA)エレクトリックμAは、 ファラデーカップで計測される電流値(μA)
   単位(pμA)パーティクルμAは、 =(eμA)/価数
   フルエンス換算は、価数とビームサイズ等を考慮する必要有

※ クラスタービームの利用について

最大エネルギーは6MeV、使用可能なクラスターの大きさには制限があります。 電流量については数enA程度ですが状況によって変化します。

  1) ビーム強度、安定度について
表3.5に示すビーム強度は、照射チェンバー直前のファラデーカップで測定したビーム電流の実績値で保障値ではありません。また、加速電圧が1.5MV以 下の場合、ビーム電流は減少します。
  2) 同位体分離については可能な範囲で実施します。お問合せください。
  3) 新ビーム開発などについて
表3.5に無い多価のイオンについても利用が可能な場合があります。また、他のイオン種の新ビーム開発も行っていますので、ご相談ください。
  4) TA, TD, TE ラインへのビーム輸送におけるエネルギー制限
右式で表される偏向マグネットの最大偏向能力で制限されます:M・E/q2≦150 (TA), ≦83 (TE,TD)。 
Mはイオンの質量数 (amu)、 Eはエネルギー(MeV)、qは価数です。
  5) 加速器(RI)施設としての運転許可条件について
利用できるイオン種・エネルギー・ビーム電流には制限があります。タンデム加速器における重イオン(Li〜Bi)の最大エネルギーは1.7MeV/amu、最大ビーム電流は25eμAです。
  6) 申請時のビーム条件入力について
利用するエネルギーに範囲がある場合には、「0.8〜15」「〜15」(単位はMeV)などと入力してください。研究計画記入用紙の実験計画に加速器側で運転条件が確認できるように、利用を希望するイオン種・エネルギー毎に、希望するビーム電流値を具体的に明記してください。表3.5の値を超えるビーム電流値での利用の希望は、過去に利用実績があったとしても、実験時におけるイオン源の状態により発生可能な最大値とさせていただきます。
  7) 申請時の質量数の記載について(タンデム加 速器の場合)
同位体の分離をご希望の場合には質量数を明記してください。 利用実績がある場合を除き、分離が可能であるかをお問合せください。希望の質量数を中心に分離可能な範囲で実施します。

ビームコース

 タンデム加速器には、第1ターゲット室に3本(TA、TB及び TC)、第2ターゲット室に2本(TD及びTE)のビームコースがあります。施設共用で利用可能なビームポート(チェンバー)につきましては、こちらをご覧ください。

TA 汎用照射チェンバー(TA1)とスキャナが設置されており、最大20mm×20mmの拡大照射が可能です。スイッチングマグネットのTAコース(30°)に対する偏向能力(M・E/q2)は150amu・MeVなので、Au(金)などの重いイオンは偏向できないことがあります。 この場合は、エネルギーを下げるか価数の多いイオンを選択することを考慮してください。
TB マイクロビーム形成装置(TB1)が設置されており、数ミクロン程度のビーム径での照射が行えます。
TC 細胞照射装置(TC1)が設置されており、大気中でのイオン照射が可能です。
TD
TE
Dコースにはイオン注入装置のビームとデュアル照射が可能なチェンバー(MD1)が、また、TEコースにはイオン注入装置及びシングルエンド加速器のビームとトリプル照射が可能なチェンバー(MT1)が設置されています。 TD、TEこれらのコース(40°)に対するスイッチングマグネットの偏向能力(M・E/q2)は83amu・MeVなので、TAコースと同様の考慮が必要となります。
     

静電加速器に関する問い合わせ先

  イオン加速器管理課
  静電加速器係
  担当 千葉
  (Tel:027-346-9642)

静電加速器実験ポート図
図2 静電加速器系のビーム輸送系

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