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高崎量子応用研究所

研究課題1 - プロジェクト先進触媒研究

掲載日:2018年12月26日更新
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研究課題 1.重イオンビームによる高分子ナノ構造の応用

-超高アスペクト比の細孔と細線をつくる・つかう-

MeV以上の重イオンビームは、高密度にエネルギー付与された円柱状の潜在飛跡を形成し、照射する材料系の選択によっては、この微小空間を反応場に利用することができる。高崎量子応用研究所のイオン照射研究施設(TIARA)における研究では、切断高分子の選択的溶出に伴う孔形成(イオン穿孔膜)や高分子の架橋反応による不溶化(ナノ細線)が知られている。これらに共通しているのは、単一のイオン飛跡で引き起こされる反応により、最高10,000を超える非常に高いアスペクト比のナノ構造が形成される点である。このような微細構造の研究は、いわゆるナノテクノロジーの中核として推進されるべきであると同時に、その特長を活かした最適な応用分野を見出す必要がある。
 そこで本研究では、上記のナノ構造を利用して、触媒担持や酸素拡散などの機能を兼ね備えた新規の空気極構造を構築する。例えば、ナノ細線の上に微粒子触媒を接合、担持することで、その高い表面積を活かした高活性な電極開発が期待できる。触媒作製から電極のモルフォロジー制御、電気化学デバイス化まで一貫して取り組み、相互にフィードバックをかけながら効率的な目標達成を目指している。

アスペクト比の画像

(1)イオン穿孔膜の孔径・形状制御とテンプレート利用

 イオンビームを高分子の薄膜に照射すると、イオン個々の通過により局所的に高いエネルギーが付与され、潜在飛跡と呼ばれる損傷(分解)領域が多数形成される。この潜在飛跡を化学エッチングで選択的に溶解させて得られる多孔質体がイオン穿孔膜である。イオン穿孔膜の主な研究は、既に市販されているポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート素材を対象に行われてきている。

イオン穿孔膜の孔径・形状制御とテンプレート利用の画像1

 これに対し我々は、フッ素系高分子のポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなるイオン穿孔膜の研究に着手している。PVDFイオン穿孔膜における孔径と形状が制御できれば、素材の高い化学的、熱的安定性から、応用分野の拡大が期待できる。また最近では、このイオン穿孔をテンプレートに利用して、金属や酸化物のナノ構造を成長させ、次世代電池に応用可能な触媒の創製を進めている。
 このような応用研究と同時に、高分子膜の潜在飛跡における空間(3次元)線量分布と化学的・物理的変化との関係を包括的に理解することが重要である。潜在飛跡の構造を予測、制御するための基礎的研究は、ドイツ重イオン研究所(GSI Helmholtzzentrum für Schwerionenforschung GmbH)と共同で進めている。

イオン穿孔膜の孔径・形状制御とテンプレート利用の画像2

(2)単一粒子ナノ加工法による高分子ナノ細線の形成と応用展開

 高分子薄膜の潜在飛跡に沿って架橋反応が起こった場合、未架橋部分を良溶媒で溶解させると、元の高分子の性質を反映したナノ細線が形成される。このいわゆる“単一粒子ナノ加工法”の特長として、(1)さまざまな高分子(例えばポリスチレン、ポリカルボシラン、ポリビニルアルコール、ポリアニリン、チオフェンなど)で細線化できること、(2)長さ・太さ・本数を独立に任意制御できること、(3)異なる高分子を積層した薄膜を用いると、積層順につなぎあわせたナノ細線が容易にできること、などがある。
 私たちは、大学と共同で、ヒト血清アルブミンからもナノ細線を作製することに成功している。この細線は、トリプシンにより完全に分解されるとともに、アミノ基を使ってビオチン標識できたことから、タンパク質としての性質を保持していることが実証されている。この結果は、アビジン-ビオチン相互作用やペルオキシターゼ活性などの生物学的機能を示すナノ細線に変換できることを示唆しており、極めて大きな表面積を持つタンパク質の表面機能化という新たな展開が期待できる。また、同じ手法によりフラーレンやその誘導体からナノ細線を形成し、高効率な有機色素増感太陽電池にも応用している。

単一粒子ナノ加工法による高分子ナノ細線の形成と応用展開の画像1

タンパク質の薄膜への応用例の画像

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