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六ヶ所フュージョンエネルギー研究所

所長挨拶|研究所紹介

掲載日:2023年4月10日更新
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竹永所長

国立研究開発法人
量子科学技術研究開発機構
六ヶ所フュージョンエネルギー研究所
所長 竹永 秀信

 

 六ヶ所フュージョンエネルギー研究所は、量子科学技術研究開発機構における量子エネルギー研究分野の中核研究所の一つとして、核融合反応で発生するエネルギーにより電力を生み出す発電システムの研究開発を行っています。核融合反応は、太陽などの恒星の中で起こっている反応です。この反応を地上で実現することで発生するフュージョンエネルギーは、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を排出しない、容易に反応を止められるので安全性に優れている、燃料資源が枯渇することがない等の特長を有しており、人類の未来を切り拓くエネルギー源といえます。

 

 ここ青森県六ヶ所村では、平成21年(2009年)より、フュージョンエネルギーの早期実現に貢献する日欧協力活動「核融合エネルギー研究分野における幅広いアプローチ(BA)活動」を本格的に開始しました。BA活動では、50万キロワットのフュージョンエネルギーの発生を世界で初めて実証するため日本、欧州、アメリカ、ロシア、韓国、中国、インドが共同で「核融合実験炉イーター(ITER)」を建設する大型国際共同プロジェクト「イーター計画」を支援するとともに、イーター計画の次段階としてフュージョンエネルギーによる発電を初めて実証する「核融合原型炉」の早期実現に向けてイーター計画を補完する研究開発を推進しています。

 

 BA活動には3つの事業があり、国際核融合エネルギー研究センター(IFERC)事業と国際核融合材料照射施設の工学実証・工学設計(IFMIF/EVEDA)事業の2つを、ここ六ヶ所研にて進めています。IFERC事業では、原型炉の設計・研究開発、南フランスに建設中のイーターとの遠隔実験設備の構築や最新鋭のスーパーコンピューターを用いたプラズマ挙動等の研究を実施しています。IFMIF/EVEDA事業では、核融合炉材料の中性子照射影響を検証するため、核融合反応で発生する高エネルギーの中性子を模擬する加速器型中性子源の開発を行っています。これまで、IFERC事業で約1万km離れたフランスの核融合実験装置との遠隔実験を成功させるとともに、IFMIF/EVEDA事業で世界最高電流となる125mAでの5MeVまでの重陽子ビーム加速試験を日欧の緊密な協力の下で成功させるなど、数多くの国際的に価値ある成果を創出してきました。

 

 また、六ヶ所研では、核融合炉においてエネルギーを熱として取り出すとともに、燃料を製造する「ブランケット」の開発を推進しています。イーターに六ヶ所研で開発したブランケット試験体を取り付けて性能実証を行うため、取り付け前に確認すべき安全実証試験を進めています。さらに、産学連携のオールジャパン体制で日本の原型炉(JA-DEMO)を設計するとともに、燃料製造に必要なリチウムを海水から回収する技術やベリリウムを二酸化炭素の排出を抑制して精製する技術などフュージョンエネルギー以外の分野にも応用できる技術を開発してきました。2023年には、これらの技術を早期に社会実装することを目指し、六ヶ所研発の2つのベンチャー企業が誕生しました。

 

 今、世界的なカーボンニュートラルへの意識の高まりを背景に、フュージョンエネルギーへの期待が高まっています。2023年4月には統合イノベーション戦略推進会議にて「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」が策定され、原型炉開発を見据えた研究開発の加速とともに、フュージョンテクノロジーの産業化が掲げられています。六ヶ所研は、フュージョンエネルギーの早期実現を目指して、当研究分野のもう一つの中核研究所である茨城県の那珂フュージョン科学技術研究所とともに、大学等や産業界と連携したフュージョンテクノロジー・イノベーション拠点としての取り組みを推進しつつ、将来に向かって引き続きフュージョンエネルギーの国際的総合研究開発拠点としての役割を果たしていきます。


 今後とも、皆様のご理解とご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。