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量子医科学研究所

分子イメージング診断治療研究部

掲載日:2024年3月27日更新
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分子イメージング診断治療研究部は、分子イメージングを用いた診断やそれを利用した治療を研究しています。分子イメージングとは、生体内で起こる様々な生命現象を分子レベルで捉えて身体を傷つけることなく画像化するもので、これを応用したPETやMRIなどの診断法は幅広く臨床応用されてきました。昨今診断(diagnosis)を治療(therapy)に融合直結させる「診断治療の融合」(theranostics)という新しい分野が世界的に注目されています。我々はこの「診断治療の融合」を一つのテーマとして、分子イメージング診断とその治療への応用、個別化医療の実現などを目指して、PETやMRI、放射性同位元素(ラジオアイソトープ)などを用いて、基礎的研究、医工連携研究、前臨床研究、臨床応用研究などの幅広い分野でがんを中心とした研究に取り組んでいます。

研究テーマ

がんの分子標的イメージング・標的アイソトープ治療の開発研究(核医学基礎研究グループ)

私たちは、イメージングと治療の両方に利用できる薬剤の開発研究を行っています。がんには、正常臓器とは異なる特徴的な分子が発現しており、それらを目印にしてがんに放射性核種を効率よく運ぶことができれば、がんに特異的なイメージングや治療が可能となります。私たちは、標的となる分子を認識する抗体やペプチド等をイメージングに適した放射性核種(ガンマ線放出核種やポジトロン放出核種)で標識し、がんモデル動物でがんや正常臓器への集積を評価して新しいがん標的イメージング法を開発しています。また、治療に適した放射性核種(α線放出核種やβ線放出核種)で標識し、標的アイソトープ治療薬剤としての基礎的評価も行っています。

がんの分子標的イメージング・標的アイソトープ治療の開発研究の画像

PETイメージング臨床応用研究(核医学診断・治療研究グループ​)

PET画像診断に代表される分子イメージングは、病気を分子レベルの異常としてとらえ、全身を短時間かつ非侵襲的に撮影できる特徴があります。私たちは臨床研究病院で重粒子線治療前後の病状把握に欠かせないPET検査を担当すると同時に、がんの特異的な分子標的マーカーとなるアミノ酸やペプチド、抗体などに着目し開発された薬剤を用いて新しいPET分子イメージング画像診断の臨床展開を行っています。​

開発した膵臓癌PETプローブの体内集積画像

PET分子イメージングは、がん分子標的薬剤治療法とも密接な関わりを持つ画像診断です。近年注目の医療概念である「治療と診断の融合(セラノスティックス)」に沿って、PET分子イメージング画像診断と標的アイソトープ治療と融合し、治療適格性診断や副作用発現の予測などを通じて、個々に合わせたがんの予防・治療を可能とする効果的・効率的な個別化医療(オーダーメイド医療)の実現に寄与する新しい画像診断を国内外に広く発信していきます。

標的アイソトープ治療の臨床普及のための研究(核医学診断・治療研究グループ​)​

ラジオアイソトープを用いた標的アイソトープ治療は、根治が難しい転移を持つがんの治療に用いられ、全身療法の役割を持っています。近年、アルファ線核種を標識した薬剤などの、新世代の標的アイソトープ治療用薬剤の開発が行われるようになってきました。従来から使用されているベータ線核種薬剤ではRi管理区域や治療病室が国内では不足し、新規の標的アイソトープ治療薬剤の臨床普及を妨げてきました。さらに続々と導入される標的アイソトープ治療の国内普及のために、私たちはアルファ線核種の短い体内飛程を利用した新しい「アルファ線標的アイソトープ治療の場」の提供を目指して、「トレーラーハウス」を考案し、2022年Ri法での利用許可を得ました​。

トレーラ―ハウス外観

トレーラーハウス型Ri施設外観

私たちは臨床応用に繋がる標的アイソトープ治療の周辺環境の整備などの研究開発に取り組み、国内各治療拠点と連携して取り組んでいます。

医工連携画像診断研究(医工連携画像研究グループ)

最新画像計測技術の導入および新規技術の開発を、医工連携を軸として部を超えて横断的に行い、その臨床応用を通して、画像診断・治療研究を進めていきます。これと平行して上記で取得されるデータの生理学的背景の探索を行い、医療画像で得られる情報の源を解き明かすエビデンスを確立・発信します。また、それぞれの手法の高い安全性を維持するため、日本国内外の基準に準拠した安全性評価と品質管理を行っていきます。

医工連携画像診断研究の画像1
医工連携画像診断研究の画像2

Amr​Amr and Diagnostic Imaging website

機能・分子イメージングの前臨床研究開発(機能分子計測グループ)

がんなど治療が困難な病に挑むには、病態を正確に診断し、それをもとに的確な治療方針を策定、最善の技術で当たる戦略的治療が必要です。私たちは、量子操作によって体の中を安全かつ細胞集団に迫る空間分解能で診ることを可能とする高磁場MRIを手に多様な情報を獲得する撮像技術を開発するとともに、高分子化学技術を手に病巣の情報を体内から発信するナノプローブや細胞機能を修復するナノ治療システムの前臨床開発に取り組んでいます。量子技術と高分子化学技術を使ってこれまで見えなかったものを診て、治せなかったものを治す新たな診断・治療技術を創造します。​

MRi装置

研究グループ

  • 核医学診断・治療研究グループ
  • 医工連携画像研究グループ
  • 核医学基礎研究グループ
  • 機能分子計測グループ

関連リンク