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展示プロローグ

ページID:0097067 更新日:2025年8月13日更新 印刷ページ表示

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Prologue
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プロローグ/展示に向かう前に

はじめに、本展示を象徴するメインビジュアルを目にしたあと、「錯視ブロック」でつくられた、この会場全体の「錯視地図」をご覧ください。光や角度によって見えかたがゆらぐ、不確定なわたしたちの視覚について考えながら、会場をまわってみましょう。そして、本展の最後にはふたたび「錯視ブロック」が登場します。つづいて、現在につながる「先駆者たちの試み」を紹介します。日本における量子力学の基礎を築いた4人の物理学者と、科学やテクノロジーがもたらす新たな世界観にいち早く反応して、革新的な表現を生んだアーティストたちの足跡を、書籍・資料を中心にたどります。さらに、サッカード・ディスプレイによる作品を体験し、見ることと見えること、それらがわたしたちの内面や身体にもたらす作用を考えてみましょう。 そして、これから体験する展示空間に散りばめられた無数のキーワードによる大型グラフィックと展示の「ヒント」パネルを見たら、展示の中へと進みましょう。

 

ART
メインビジュアル《Q-Ring》
永原康史
2025​

 

アート作品

 

メインビジュアル「Q-Ring」は、量子のひとつである光の最小単位「光子」をモチーフにしています。両端が閉じた5本の線で描かれており、人間が光を感知する赤・緑・青(RGB)と明・暗を表しています。閉じた光の線は、重なり、もつれながら輪になって、極小から極大へと円環する世界を形づくり、その周囲には光の色が漏れ現れます。また、量子の重要な原理である「不確定性」にならって、描き出だすごとにかたちが変化するように設計されています。

 

 

ART
《錯視地図|​もつれによる非骨格地物》​
錯視ブロックプロジェクト
大谷智子+丸谷和史+ヒガキユウコ+肥後沙結美+中村美惠子+磯谷悠子
2025

 

p2

 

心理学、美学、情報工学等の研究者とデザイナーのグループが、表面にさまざまな模様や鏡面加工をほどこした「錯視ブロック」をつかって、視覚のゆらぎを体験する展示をつくりました。モニタには、会場全体の地図や動画がうつされています。その上に置かれたブロックの立体群は、光のあたり方や見る角度、さらには見る人の状態によって、形を変え、ゆれ動いているかのように見えます。人の視覚世界は、ふだんは気づかないゆらぎを含んでいるのです。そんな視覚の特性を意識しながら会場をめぐってみましょう。
協力|株式会社中川ケミカル、東京藝術大学芸術情報センター、大阪芸術大学芸術学部アートサイエンス学科、NTT コミュニケーション科学基礎研究所、量子科学技術研究開発機構(QST)

 

 


 

 

先駆者たちの試み

資料・書籍展示|科学/芸術の先駆者たち 1

​日本の戦前から戦後、高度経済成長や大阪万博EXPO’70にかけて、科学と芸術の両域における先駆者たちの素晴ばらしい試みが展開され、現在の礎(いしずえ)となりました。科学の領域においては、「日本の現代物理学の父」である仁科芳雄に理化学研究所で学んだ科学者のうち、湯川秀樹は中間子論、朝永振一郎はくりこみ理論で知られています。一方で江崎玲於奈は半導体におけるトンネル効果を発見し、エサキダイオードを開発しました。後者3人は20世紀にノーベル賞を受賞し、世界の量子力学の発展に大きく貢献しました。

 

資料・書籍展示|科学/芸術の先駆者たち 2

​1960年代から1970年前後、古典コンピュータによる芸術が国内外で大きな隆盛を見せました。「コンピュータアートの黎明」の流れの中から「コンピュータと美学」で知られる川野洋や「電子ヒッピー」とよばれ「Cybernetic Serendipity」展(ICAロンドン、1968年)に招聘されたCTG(コンピュータ・テクニック・グループ)、そのメンバー幸村真佐男らの作品資料、そして1990年代/2000年代に入り、量子の世界に関心を寄せたアーティストらによる参考書籍を紹介します。

 

 


 

 

​ART
《​かさなる、もつれる、かんそく》
安藤英由樹
2025

 

p3

 

​高速な眼球運動のしくみ“サッカード”を利用して、1本のLED列から空中に映像を投影するディスプレイです。頭をふってみたり、キョロキョロ目を動かしたりして、空間に重なり合い、もつれ合うように見える現象を体験してみてください。
協力|田中成典(神戸大学)、量子科学技術研究開発機構(QST)

 

 

ART
《アート・オブ・エンタングルメント》
永原康史
2025

 

アート作品

 

プロローグを終えた正面の、幅6.6メートルにおよぶ壁面には、本展のキーワード群が層を成して描かれています。すべての言葉は異なる大きさ、異なる色をもち、偶然によってその配列が決まります。宙に散らばる気や塵が星雲を形づくるように、雲から地上に落ちた雨粒がまた空に戻って雲になるように、この展示の背景に潜むたくさんの言葉が、もつれ合うようにしてここにあります。