用語集<た・タ行>

掲載日:2022年10月17日更新
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た・タ

​大強度陽子加速器実験施設(Japan proton accelerator research complex/J-PARC

高エネルギー加速器研究機構と日本原子力研究開発機構による共同プロジェクトで茨城県の原子力科学研究所内に位置する実験施設。

代謝イメージング(Metabolic imaging)

細胞、組織、生体内で生じる代謝反応の分布を画像として描出する技術。生命科学、医学研究や病態診断等に応用可能。超偏極技術による発展が期待される。

ダルトン(Dalton/Da)

原子や分子の質量を表現する統一原子質量単位。1 ダルトンは質量数 12 の炭素原子の質量の 12 分の 1 に等しい。ダルトンと Da は 2006年に国際度量衡局(BIPM) により承認された。

ち・チ

超高感度MRI(Hypersensitive-MRI/HyperSense-MRI)

MRI (用語「核磁気共鳴画像法(MRI)」参照)の最大の弱点である「感度の低さ」を克服するため、超偏極技術を組み合わせることによりその感度を数万倍に高めることで、生体内における分子の局在や代謝反応の描出を可能とする技術。

超偏極プローブ(Hyperpolarized probes)

超偏極技術によって、核スピン偏極率が高められた分子、もしくはそれが可能な分子。観測に十分な長さの T1 (用語「核スピン縦緩和(T1)」参照)時間を有する事が必要。

つ・ツ

て・テ

定型発達(Typical development)

発達障害の対義語。発達障害に当てはまらない状態。

デコーディング技術(Decoding technology)

脳から計測された信号を入力として、被験者の体験している知覚、記憶、運動意図など、その脳信号に含まれている情報を読み出す技術。

電子スピン共鳴(Electron spin resonance/ESR)

遷移金属イオンや有機化合物中の不対電子を検出するための分光法の一種。磁場環境に置かれた試料中の不対電子のスピンがマイクロ波を共鳴吸収することを利用して、電子スピンを検出する。核磁気共鳴(用語「核磁気共鳴(NMR)」参照)が、磁場環境に置かれた試料中の原子の核スピンを対象とするラジオ波の共鳴吸収を原理としていることに類似する。動的核偏極(用語「動的核偏極(DNP)」参照)装置における核スピンの偏極のプロセスにも応用されている。

電子スピン偏極率(Electron spin polarization)

磁場環境下に置かれた電子スピンが、ゼーマン効果により磁場に対して平行 (βスピン) と反平行 (αスピン) に整列した際のスピン数の差をさす。例えば、全て平行(反平行)だと完全に偏極しており、偏極率は 100%、両スピンが同数だと 0%(全く偏極していない)となる。また、磁気回転比や偏極場の磁場強度に比例し、温度に反比例する。

と・ト

動的核偏極(Dynamic nuclear polarization/DNP)

超偏極を実現する技術の一つであり、ゲスト分子の電子スピン偏極を、ホストとなる分子プローブ (代謝トレーサー) 側の原子核へと移動させることにより、電子スピンと同じ程度にまで核スピンを整列させる手法である。核スピンを揃える手段としてはさまざまな手段が存在するが、この整列の程度 (核スピン偏極率) の違いにより、NMR(用語「核磁気共鳴(NMR)参照) や MRI(用語「核磁気共鳴画像法」(MRI)参照) での計測における核磁気共鳴信号の強度が変化する。

動物用透明化試薬(Clear, unobstructed brain/body imaging cocktails)

動物組織を浸漬するだけで透明化できる試薬。組織を透明化することにより、蛍光染色された動物組織中の細胞形態を見やすくすることができる。

トランスフォーミング増殖因子β1(Transforming growth factor β1/TGF-β1

細胞増殖を抑制するサイトカイン(細胞から分泌される生理活性タンパク質)。TGF-βに関わるシグナル分子が欠損することで、細胞増殖が抑制されず、がん化することが知られている。特に、TGF-β1は、細胞の分化、遊走、接着や、細胞外マトリクス蛋白の産生・沈着を促すことも知られる。 肺線維症、肝線維症など線維化を伴う疾患において血中TGF-β1濃度が高い値を示す。

トリプレットDNP(Triplet DNP)

磁場環境下、レーザーを照射することで光励起三重項(トリプレット)を生じるペンタセン(用語「ペンタセン」参照)のようなゲスト分子の電子スピン偏極を、安息香酸(用語「安息香酸」参照)のようなホスト分子の原子核へと室温で移動させることを原理とした動的核偏極(用語「動的核偏極(DNP)」参照)。

トンネル効果(Tunnelling effect)

電子や陽子などの小さな粒子が、ポテンシャル障壁を貫通し、あたかもトンネルを抜けたかのように反対側に移動する現象。例えば生化学分野では、酵素反応のトンネル効果が、水素と重水素あるいは三重水素を用いた速度論的解析により示されている。

トンネル電流(Tunnel current)

走査型プローブ顕微鏡において、探針と物質の間に流れる電流。

 

初版:2022年10月17日公開