は・ハ
バイオマーカー(Biomarker)
古くは血圧や心拍数などの生理学的な指標を指したが、近年では、疾患やがんにおいて発現が変動するタンパク質やサイトカイン(細胞から分泌される生理活性タンパク質)等を指す。血液、尿、唾液、細胞・組織に含まれるタンパク質や遺伝子の変化などを調べることで得られる、個人の疾患状態を客観的・定量的に表す指標。診断だけでなく治療法の選択・効果予測等にも利用される。
ひ・ヒ
表面増強ラマン散乱(Surface-enhanced raman scattering)
金属のナノ粒子、電極、結晶、蒸着膜さらには半導体などの表面上に吸着したある種の分子のラマン散乱強度(用語「ラマン効果」参照)が、その分子が溶液中にあるときよりも著しく増強される現象。
ピルビン酸(Pyruvic acid)
生物の物質代謝における重要な中間化合物。分子内にある炭素原子(カルボニル炭素)を13C で標識した [1-13C]ピルビン酸は、長い T1 (用語「核スピン縦緩和(T1)」参照)を有するため、動的核偏極(用語「動的核偏極(DNP)」参照)ー核磁気共鳴(用語「核磁気共鳴(NMR)」参照)代謝イメージング用の分子プローブとして最も応用開発が進んでいる物質である。
ふ・フ
ファンデルワールス力(Van der Waals force)
原子、イオン、分子の間に働く力を説明するときの一つの因子。原子同士が接触するくらいに近接したときに考慮される。
ファントム(Phantom experiment)
ファントムとは、人体等の生体組織に類似した特性を有する実験用の人工的モデルの総称。シミュレーション、計測機器の性能評価や較正等に使用される。
副腎皮質刺激ホルモン(Adrenocorticotropic hormone)
脳下垂体前葉から分泌されるホルモンの一つ。副腎皮質に働いて副腎皮質ホルモンの分泌を促す。
フラグメント分子軌道法(Fragment molecular orbital method)
タンパク質やDNA(デオキシリボ核酸)などの分子系をフラグメントに分割し、シュレディンガー方程式を解く近似計算法である。量子力学に基づいて、大きな分子系の電子状態計算を行うことができる。
分子力学法(Molecular mechanics)
生体分子の分子シミュレーションに用いられる古典的な方法の一つ。原子一つ一つの原子座標を定め、原子に働く力や分子の立体構造の安定性をエネルギーで考慮している。
へ・ヘ
ペプチド(Peptide)
複数のアミノ酸が鎖状に結合した分子であるが、比較的短いものを指す。長いものはタンパク質。
ヘム(Heam(英語)/Heme(米語))
鉄とポルフィリン環から成る錯体で、生体内の酸素の運搬や電子伝達等に関与する。ヘムをもったタンパク質として、ヘモグロビンなどがある。
ヘリオバクテリア(Heliobacteria)
光合成細菌を総称したもの。
偏極交換確率(Polarized exchange probability)
動的核偏極(用語「動的核偏極(DNP)」参照)後の原子核スピン偏極率を動的核偏極前の電子スピン偏極率で割ったもの。動的核偏極効率の高さを示す。マイクロ波パルスの形状を最適化したり、電子と核のスピン間相互作用を強くしたり、電子スピン緩和時間を長くしたりすることなどで向上できる。
ペンタセン(Pentacene)
5つのベンゼン環が直線状に縮合した多環芳香族炭化水素。室温超偏極技術におけるゲストとして応用されており、レーザーを照射することにより生じた光励起三重項(トリプレット)状態からマイクロ波によって電子スピン励起を起こし、その励起エネルギーを安息香酸(用語「安息香酸」参照)のようなホスト分子へ移すことでスピンを偏極させる。
ほ・ホ
初版:2022年10月17日公開