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核融合エネルギー研究開発部門_アウトリーチ活動報告/20091009/エネルギー回収型大電力ジャイロトロン「国立科学博物館重要科学技術史資料」への登録

掲載日:2018年12月26日更新
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平成21年10月9日
(独)日本原子力研究開発機構
核融合研究開発部門

「国立科学博物館重要科学技術史資料」への登録

 このたび、日本原子力研究開発機構が1994年に開発したエネルギー回収型大電力ジャイロトロンが、我が国の科学技術の発展を示す上で貴重な資料となる、「国立科学博物館重要科学技術資料(愛称:未来技術遺産)」に登録されることになりました。
(プレス記事各種手続き・報道関係資料プレスリリース国立科学博物館National Museum of Nature and Science,Tokyo
 10月6日(火曜日)には、独立行政法人国立科学博物館において、登録証の授与式が行われました。

 本「エネルギー回収型大電力ジャイロトロン」は、開発が困難であったミリ波と呼ばれる波長の短いマイクロ波において、出力600キロワット、投入した直流電力からマイクロ波への変換効率50パーセントという驚異的なデータを世界に示した記念すべき電子管です。
 この開発成功を契機に、大電力ミリ波利用に道が開かれると共に、ミリ波を用いたプラズマ加熱工学が急速に発展しました。その後の1000キロワットの発振成功、連続出力化を可能にした人工ダイヤモンド窓の開発等を経て、2006年に原子力機構が世界で初めて国際熱核融合実験炉(ITER)で求められるジャイロトロンの性能を達成しました。現在、ITERのみならず原型炉のプラズマ加熱装置の主要機器として大きく期待されています。

近藤国立科学博物館館長から登録証と記念盾を授与される岡田理事(右)の画像
近藤国立科学博物館館長から登録証と記念盾を授与される岡田理事(右)

左から岡田理事、坂本加熱工学研究GL、東芝電子管デバイス(株)の平山社長、林部長の画像
左から岡田理事、坂本加熱工学研究GL、東芝電子管デバイス(株)の平山社長、林部長(国立科学博物館・地球館2階展示室)

ジャイロトロンのしくみ

ジャイロトロンとは

  • 磁場に巻き付いた電子の回転運動をエネルギー源として、数ミリメートルの波長を持つ大電力のマイクロ波を発振させる大型の電子管です。ジャイロトロンの名は磁場中の回転運動(ジャイロ運動)に由来します。
  • 図1は1994年に開発したエネルギー回収型大電力ジャイロトロンの外観写真です。運転時には、下側の黒い部分を超伝導コイルの強い磁場の中に挿入します。

その動作原理は?

  • 電子銃に高い電圧をかけると強いパワーを持った電子ビームが生じます。この電子ビームは、磁場に沿ってらせん運動をしながらマイクロ波発振部(空胴共振器)に入ります。すると、強い磁場中で電子ビームの回転エネルギーがマイクロ波に変換され、電子レンジのパワーの約2000倍のマイクロ波が発生します。電子ビームのエネルギーを静電的に回収することで、50パーセント以上の高効率動作が可能となりました。
  • 効率が上がったことで、コレクタへの負荷が大きく軽減され、大電力化できます。
  • このマイクロ波を内部でビーム状に変形した後に、真空窓から取り出します。

核融合の実現に向けて

現在は、開発したエネルギー回収型大電力ジャイロトロンに、人工ダイヤモンド窓を搭載するなど高性能化に成功し、国際協力で進めるITER計画に不可欠な技術となっています。

核融合の実現に向けての画像
図1:未来技術遺産に登録されたエネルギー回収型
大電力ジャイロトロンの外観
図2:ジャイロトロンの断面図(概念図)