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核融合エネルギー部門

核融合発電 第07回 「ブランケット」熱エネ変換

掲載日:2021年7月16日更新
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量子科学技術でつくる未来 核融合発電
第07回 「ブランケット」熱エネ変換

 我々が目指す「地上の太陽」では、超高温プラズマの中で重水素と三重水素が核融合反応することで膨大なエネルギーを得る。発生するエネルギーの殆どは高速で運動する中性子として放出される。これを受け止め、発電機を回す熱エネルギーとして取り出す変換器が「ブランケット(Blanket)」だ。プラズマを隙間なく取り囲む様子が、熱源を包み込む毛布を想起させることからついた名前である。

核融合発電 第07回 画像

 ブランケットには、(1)中性子を止める、(2)その時出てきた熱を冷媒に伝える、という機能に加え、(3)燃料を作る、という核融合炉の性能を決定づける3機能が求められる。特に(3)は、燃料の三重水素が自然界に殆ど存在しないので必須の機能だ。三重水素は、リチウム同位体(6Li)に核融合反応で発生した中性子を当てて作るが、1個の中性子から1個の三重水素しかできない。
 そこで、1個の中性子から2個の中性子を作る中性子増倍材(ベリリウム)も必要だ。日本はブランケットの「冷媒」に火力発電や軽水炉発電で実績のある高温高圧水(300℃、150気圧)を選択している。ブランケット容器の材料には、中性子が当たっても劣化しにくく、長寿命の放射化物ができないよう成分調整した高クロム耐熱鋼(低放射化フェライト鋼)を採用する。

 このブランケットが使用されるのは、冷媒の高温高圧、プラズマ閉じ込め用の強磁場、プラズマからの熱の流入、および中性子の照射の影響を同時に受ける特殊で過酷な複合環境だ。この環境下で、3機能を使用期間(~5年)中正常に維持することは工学的な挑戦だ。

 核融合実験炉イーターの炉内に「テストブランケットモジュール(TBM: Test Blanket Module)」を設置して行う試験は、初の実環境試験として非常に重要だ。ここでは各国が独自のアイデアを詰込んだブランケットシステム一式を備えたミニチュアプラントをイーターに持込み、将来の発電実証を行う原型炉のブランケット方式の優劣を競い合う。
 日本は、今年6月に竣工したばかりのブランケット工学試験棟において、イーターを模擬した熱の流入や高温高圧水の環境下での安全性や信頼性を確認する試験を世界に先駆けて開始する。

執筆者略歴

核融合発電 第07回 著者近影

量子科学技術研究開発機構
核融合エネルギー部門 ブランケット研究開発部 次長
谷川博康(たにがわ・ひろやす)

核融合炉構造材料開発に従事。現在、イーターテストブランケットモジュール計画のプロジェクト取りまとめ、および日本代表を務める。

本記事は、日刊工業新聞 2021年7月8日号に掲載されました。

■日刊工業新聞 量子科学技術でつくる未来 核融合発電(8)「ブランケット」熱エネ変換 (2021/7/8 科学技術・大学)