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トータルステージ脳疾患創薬アライアンス

掲載日:2024年2月21日更新
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トータルステージ脳疾患創薬アライアンス

認知症、うつ病などの精神神経疾患の治療薬開発は、多大な費用と時間を要し成功率も高くありません。
この状況を打破するには、病態や薬の効果を正確に捉える「ものさし」が必要となります。画像検査や血
液検査はこの「ものさし」をもたらしてくれますが、診断や治療の目的に応じた検査法を、単独の研究機
関や企業が開発するのは容易ではありません。

QSTは複数企業との同時連携で画像検査法を開発する体制を築く目的で、第1期アライアンス事業の一つ
として「量子イメージング創薬アライアンス『脳とこころ』」を2017年9月に発足させ、2023年3月ま
で活動を展開しました。このアライアンスには、10社近い製薬企業が参画し、パーキンソン病などで病態
の中心となるαシヌクレイン病変を、ポジトロン断層撮影(PET)で画像化する技術を開発して、世界で
初めて学術誌に報告するといった成果を上げました。その一方で、このアライアンスでできることは、画
像検査技術の開発における中間段階のみであり、最初の段階である画像化すべき標的物質の探索や、最終
段階である大規模な臨床試験を実現するには、アライアンスの枠組みを拡張する必要が生じました。また、
安価で手軽に「ものさし」が得られる血液検査の開発も推進し、画像検査と補い合う形で活用できる体制
も求められました。

そこでアライアンス第2期事業において、世界でも有数のブレインバンクや脳疾患遺伝子・体液バンクを
運用する新潟大学脳研究所が拠点として参画しました。これによりヒト試料を用いて、画像検査や血液検
査の標的となる物質を探索することが可能になりました。また、2020年にQSTが中心となり構築した、認
知症と関連疾患の画像検査と血液検査を相互促進的に開発する多施設連携研究体制(MABB:Multicenter
Alliance for Brain Biomarkers)を組み込みました。MABBには国内の20近い臨床施設が加わっており、
これを活用することで臨床試験を強化するとともに、企業の目的にも適う画像と血液の「ものさし」が得
られるようになりました。
トータルステージ脳疾患創薬アライアンス概要図
こうした新体制は、画像検査や血液検査の開発のみならず、治療薬開発の最初から最後までの段階を促進
しうることから、「トータルステージ脳疾患創薬アライアンス」と名付けられ、2023年に4月に正式な発
足に至りました。「トータルステージ脳疾患創薬アライアンス」はその名の通り、創薬の基礎から臨床まで
の全ステージをカバーし、認知症をはじめとする神経疾患、高齢発症うつ病などの精神疾患を標的とした
画像・血液バイオマーカーの開発と治療薬開発を一体化して推進します。開発で得られた成果をいち早く
医療に活用する取り組みとして、血液検査によるスクリーニングと画像による精密検査をつなぎ合わせた
「次世代診療ワークフロー」と、治療薬候補物質の動物での試験や臨床試験を企業と連携して実施する「創
薬プラットフォーム」の実現を目指します。