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量子科学技術研究開発機構 設立5周年誌 「QST5年間の成果」

掲載日:2021年9月27日更新
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01新たな研究分野の開拓

コンセプトは「量子技術と生命科学の融合」。多様な専門分野を持つ研究者が集結するQSTにおいて、ごく自然な発想から生まれました。

量子生命科学領域の誕生

 100年ほど前に量子論と量子力学が誕生し、人類は電子や光を操ることができるようになりました。21世紀に入り、量子コンピューターなど理工系の分野を中心に量子現象を積極的に利用することで、人類社会に変革をもたらす技術の創出に期待が集まっています。

 一方、生命科学の分野では、1980年代から90年代にかけて分子生物学が生命現象の解明方法として隆盛を極めました。2000年代にポストゲノム時代が到来し、主要な生物種のゲノムが次々に解読されるようになりましたが、いまだ、生命の根本的理解には至っていません。

 「生命科学」に「量子技術」を融合することで、これまで解明できなかった生命現象の根本原理を明らかにできるのではないか 。こう考えたQSTは「QST未来戦略2016」において、「国内外の研究者コミュニティを樹立し、日本や世界における『量子生命科学』の先導役を果たしていく」ことを掲げました。その第一歩として、2016年8月に拠点横断的なバーチャル組織であるQST未来ラボに「量子細胞システム研究グループ」を設置。2017年7月には、国際的な研究者コミュニ ティの樹立を目指して第1回QST国際シンポジウム 「量子生命科学-Quantum Life Science-」を開催しました。

 機構外においても、2017年4月に全国の研究者に呼びかけて 「量子生命科学研究会」を立ち上げました。2017、2018年に研究集会を開催し、2019年3月には提言 「量子でヒトを理解する、しあわせにする。~生命科学を場とした第二次量子革命~」をまとめ公開しています。同年4月、研究会を発展的に法人化し、「一般社団法人量子生命科学会」を立ち上げました。

 このような活動が結実し、2019年4月に 「量子の目と手で生命の謎に挑む」を掲げて量子生命科学領域が誕生しました。

量子生命科学領域発足式

第1回(左)、第3回(右)QST国際シンポジウムの様子。国内外から幅広い分野の研究者を招待し、講演や活発なディスガソションなどを実施した。

量子生命科学研究の発展に向けて

 13研究グループでスタートした量子生命科学領域は、「ナノ量子センサによる生命科学の革新」 「量子技術を用いた超高感度MR|/NMRの実現」 「量子論的生命現象の解明・模倣」 「量子から個体に至る放射線生物応答の解明」の四つの主要テーマで研究開発を進めています。

 学術領域としての量子生命科学の確立と量子生命科学研究のさらなる発展のため、学会も活用して、オールジャパン体制の構築および国内外の研究者との連携にも積極的に取り組んできました。2019年12月には、第3回QST国際シンポジウム「Quantum Life Science」を再び開催。専門分野の垣根を越えた活発な議論の場を提供し、量子生命科学研究への注目度と高い期待に応えました。

各グループの日々の研究活動の様子。右上はラットの乳腺にナノ量子センサ(赤い点)を導入した画像

量子生命科学研究拠点の形成と
国際的なハブを目指して

 2020年には国の研究開発プログラム 「光・量子飛躍フラッグシッ ププログラム(Q-LEAP)」にQSTが提案した 「量子生命技術の創製と医学・生命科学の革新」が採択され、さらに、国が掲げる「量子技術イノベーション戦略」を担う8拠点の一つ、 「量子生命」拠点に指定されました。掲点形成推進のために2021年2月に設匿した量子生命科学研究拠点センターは、量子技術と生命科学の融合によるイノベーションの生まれる場を目指して、国内外から研究者・技術者を結集。成果の産業化・事業化を推進し、次世代の診断・治療技術の開発、新規薬剤の効率的開発、再生医療の向上、生物機能を模倣した高機能材料の創出など、医療や環境分野での技術革新につなげ、さまざまな課顆の解決と健康長寿社会の実現に貢献していきます。

 2021年4月、量子生命科学領域はさらなる発展を遂げるために、量子医学・医療部門と統合・再編し、量子生命・医学部門が発足。同部門に量子生命科学研究所を設置しました。2022年6月には、研究開発の中心となる「呈子生命科学研究センター棟(仮称)」が完成予定です。QSTは量子技術と生命科学の融合により新たな価値を創造する「量子生命科学研究」の発展と国際的なハブ形成に向け、これからも取り組んでいきます。

量子生命科学研究センター棟(仮称)の完成予想図 (©2020, Takenaka Corporation) 

 

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