QSTの強みは、放射線・量子ビームと物質や生命との相互作用における物理・化学・生物過程に関する理解や研究開発において世界のトップクラスに位置していることです。この強みを生かして最先端の研究開発を進めています。
4.科学で守るいのちとくらし
放射線科学でくらしの安全・安心を支える
QSTは被ばくの影響やリスクを科学的に評価するとともに、その基盤となる放射線影響・防護研究を推進し、人々の安全・安心な生活を支えています。
例えば、2011年の東京電力福島第一原発事故を機に高まった放射線に対するさまざまな不安や懸念に、科学的知見で応えるべく取り組んでいます。マウスを用いた実験では、放射線に起因する低線量被ばく、いわゆる「じわじわ」被ばくの発がんリスクを初めて直接的に評価しました。また、事故によって放出された放射性物質の環境中での動きを、国際原子力機関(IAEA)と協力して明らかにしました。原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)の事故の線量評価を記したレポートにも貢献しています。
万が一の放射線事故により被ばくした場合の治療法についても、研究を進展させています。幹細胞の治療応用に向けて、ヒト臍帯血由来赤芽球を用いたiPS細胞樹立法を発見し、従来と比べてゲノム変異を劇的に減らすことに世界で初めて成功しました。
さらに、放射線の革新的な医学利用や宇宙への進出が現実とな る近未来に向けて、線量評価や防護研究に取り組んでいます。放射線防護のための安全基準の策定は、国際的な機関や組織による世界的なネットワークで進められ、QSTは日本におけるハブとして、国内の放射線医科学分野の研究成果や被ばくに関するデータを収集し、国際機関などに提供しています。
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