連携・協働の活動を介して、異文化理解、尊重を育み、QSTの理念である「平和で心豊かな人類社会の発展」に貢献していきます。
国際協力
QSTはイーター機構や原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)、国際原子力機関(IAEA)、世界保健機関(WHO)などの国際機関との連携を推進しています。イーター計画の国内機関をはじめ、IAEAの協働センター、WHOの協力センターに続いて、2017年9月にIAEAのアジア地区での被ばく医療対応と線量評価分野の緊急時対応能力研修センター(CBC)の活動を開始しました。
2019年5月、経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)のマグウッド事務局長が理事長を訪問し、放射線防護や低線量放射線影響研究に関する協力について話し合いました。同年9月に理事長らがIAEAやUNSCEARを訪れ、幹部と一層の協力強化に向けて会談。同年12月にはUNSCEARのバタンジェーバ事務局長が来訪し、理事長と福島報告書等に関して意見を交わしました。2020年2月の内閣府原子力委員会定例会議において、IAEAのグロッシー事務局長と委員の意見交換が行われた際に、理事長が重粒子線がん治療技術の世界展開について説明しました。
理事長とIAEA事務次長(原子力科学・応用局担当)の会談
QSTは外国の大学や研究機関などと2021年3月末時点で60件の協定を締結しています。国際交流を促進するため、内部公募で主題を決めるQST国際シンポジウムを2017年から毎年開催しており、3件のQST国際リサーチイニシアティブも実施しています。2020年9月には、IAEA総会のサイドイベントとして、ウェブセミナー「放射線がん治療の加速的な進歩」を内閣府と共催し、海外の152人を含む285人が参加しました。
IAEA総会での展示
SIP事業管理法人業務
内閣府が科学技術イノベーション実現のために創設した国家プロジェクトである戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の第2期課題において、QSTは2018年度から「光・量子を活用したSociety 5.0実現化技術」の管理法人を務めています。光・量子技術は世界的にも極めて注目度が高い技術で、本課題は、日本が強みを持つ光・量子技術のうち「レーザー加工」、「光・量子通信」、「光電子情報処理」の3領域で世界的にトップクラスの研究成果を社会実装し、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合したサイバーフィジカルシステム(CPS)型のスマート製造の実現に貢献することで、Society 5.0の実現を加速します。本課題は2019、2020年度と2年連続で内閣府から全課題中最も高い評価を受けました。QSTは管理業務に加え、インターネットやビジネス誌およびシンポジウム開催による情報発信や国際ベンチマークの実施などでも本課題の周知と進展に寄与しています。
人材の多様性を推進
ダイバーシティ推進
QSTのダイバーシティへの取り組みは、前身の放射線医学総合研究所時代の2015年、JSTのダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(連携型)事業に、千葉大学、東邦大学と共に参画したことに端を発します。2016年のQST発足後も、ダイバーシティ推進室を中心に大学や研究機関と情報交換を続け、人事部をはじめとする各部との連携、協力により、以下に代表される活動を展開してきました。
- 他機関と連携したダイバーシティ推進
- 研究支援要員配置等のライフイベント支援
- 連携研究助成や英文校閲支援等の研究力向上支援
- 次世代育成支援や女活法行動計画の策定・周知
- 理事長のイクボス宣言
- 企業主導型保育施設との協定締結
こうした取り組みが認められ、2020年度の千葉県男女共同参画推進事業所表彰で千葉県知事賞を受賞。子育てサポート企業に対する厚生労働省の「くるみん認定」にも至りました。これからも職員に寄り添い、「働きやすい環境」作りのためにニーズに沿った支援制度を構築していきます。
きっづ光科学館ふぉとん
広報・アウトリーチ
QSTは情報公開の義務を果たすとともに、積極的な公開に努めています。研究開発の成果をプレスリリースとして適時に公表しているのをはじめ、年4回発行の広報誌『QST NEWS LETTER』では、最新の成果や取り組みについて解説しています。研究開発の実際を広く市民の方々に現地で知っていただく機会として、各地区で施設の一般公開を開催。常設の広報・アウトリーチ施設として「きっづ光科学館ふぉとん」を関西光科学研究所(京都府木津川市)に併設しています。公式サイトではこれらの情報を含めて幅広く発信し、日々アップデートしています。
情報を幅広く届けるため、ソーシャルメディアでの発信にも力を入れています。FacebookとTwitterでは研究開発の成果や事業活動、Instagramは拠点の季節のうつろい、YouTubeでは研究内容の解説と、各チャンネルの特性を生かして異なる角度からQSTの情報を伝えています。コロナ禍に対応してオンライン企画も実施し、地理的制約を超えた交流と対話に取り組んでいます。
ユニークな取り組みとして、QSTの研究開発の成果が社会実装された未来像を描いたイラスト「量子科学技術でつくる私たちの未来」を制作、QSTが目指す社会を示しています。
展示会や実験教室でのアウトリーチ活動
人材育成
放射線防護や放射線の安全な取り扱いなどに関係する人材を育成するための研修を実施するとともに、連携大学院制度の活用、実習生の受け入れ、リサーチアシスタント制度やサマースクールなどによる学生への支援を積極的に行っています。
量子生命・医学部門の人材育成センターは、放射線防護や放射線の安全取り扱い、放射線事故対応や放射線利用などに関係する国内外の人材、および、放射線の知識を幅広く国民に伝えるための人材を育成する研修事業に取り組んでいます。研修の中心は、医療関係者や消防士、警察官などプロフェッショナル向けですが、大学生を対象とした放射線防護とリスクコミュニケーションの研修を原子力規制庁の補助事業としてQST発足と同時に開始しました。医療分野をはじめ、ますます拡大する放射線利用の現状を踏まえ、今後も幅広く学生を対象とした放射線教育を実施し、将来的な放射線利用と規制に関わる人材育成に貢献します。
学生の支援では、研究開発の推進と人材育成を組み合わせて、大学院生を「リサーチアシスタント(RA)」として採用する制度をQST発足時に創設しました。RAの経験者からは「責任を伴い、研究への意識が向上した」「経済的な余裕をもって研究活動に集中できた」といった声が寄せられています。 研究拠点に実際に足を運んでもらい、体験型イベントを通じてQSTを学生目線で知ってもらう「QSTサマースクール」も、発足当初より実施しています。非日常である研究現場の体験は、毎年参加学生に高評価を得ています(2020、2021年は新型コロナウイルス感染症拡大のため中止)。
人材育成センターの研修
QST未来基金
QSTの基本理念に沿って人類の未来を拓く活動にご理解とご賛同をいただいた皆様からのご支援を、QSTのさまざまな事業に活用させていただいています。2017年度は、未来基金を活用して「福島と千葉の小学生親子サイエンスキャンプ」を開催しました。親子で一緒に放射線に関する基礎的な知識を学ぶとともに、福島県と千葉県の親子が地域を越えて交流を深める活動を行いました。2020年度には、量子メス研究プロジェクトにおいて、超伝導電磁石の開発に必要となる磁場測定装置の購入に未来基金を活用し、実用化に向けた研究を前進させることができました。また、2021年度にはレーザーで空気中のウイルスを検出するという革新的な研究を進めるため、初のクラウドファンディングに挑戦。目標金額を大きく超えるご賛同をいただきました。これまでの皆様からの温かいご支援にあらためて御礼申し上げます。引き続き、ご支援をよろしくお願いいたします。
小学生親子サイエンスキャンプ
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