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QST NEWS LETTER - No. 18 ▶Special feature.02

掲載日:2021年10月1日更新
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▶▶Special feature.02
がん死ゼロ健康長寿社会への道を切り拓く
量子メス開発の今と未来

QSTは、その前身となる旧放射線医学総合研究所において、世界初の重粒子線がん治療装置(HIMAC)を建設し、1994年の治療開始以来、27年以上にわたり重粒子線がん治療の研究と13,400人を超える患者の治療に取り組んできました。その成果を元に、治療法のさらなる高度化と普及を目指した次世代の重粒子線がん治療装置「量子メス」の研究開発に取り組んでいます。今回は、QSTが目指す「がん死ゼロ健康長寿社会」実現の中核を担う量子メスをテーマに、7月15日にオンライン主体で開催された量子メスシンポジウムの模様を、量子メス実現のカギを握る先端技術の開発に携わる研究者、医師の取り組みと合わせてご紹介します。

量子メスシンポジウム

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第5世代重粒子線がん治療装置
「量子メス」シンポジウム//ダイジェストレポート

量子メスで重粒子線治療をもっと身近に

  重粒子線治療は、他の治療法では困難な難治がんの治療にも効果を発揮し、がん以外の正常組織への障害が少ない特徴があり、一部の疾患では保険が適用されています。重粒子線治療施設は、現在国内に 7 施設あり、年間約 3,700 人の患者に治療が行われています。しかし、この数は、1年間に日本で 新たにがんを患う人のわずか0.4%、世界に目を向ければ 0.02% に過ぎず、重粒子線治療はまだ、誰もがどこででも受けることができる治療法になっていません。

 「どうすれば、重粒子線治療をより多くのがん患者に届けることができるのか?」この課題に立ち向かうため、QST の研究者、技術者、医師たちが一丸となって取り組んでいるのが次世代の重粒子線がん治療装置、「量子メス」の開発です。

 重粒子線治療の普及において最大のネックとなっているのは、その巨大で高額な治療装置です。1993 年に完成した HIMACはサッカーコートほど、2010 年に改良された普及型装置でも設置にその 1/3 の面積が必要でした。これに対し、量子メスは、専用の建屋を新たに建てることなく、既存の病院建物内に設置可能なサイズ(10m× 20m)まで装置を小型化することで、コストを抑え、より多くの病院で重粒子線によるがん治療ができるようになることを目指しています。

いよいよ社会実装に向けた開発フェーズに突入

  QST は、2016 年 12 月、住友重機械工業、東芝、日立製作所、三菱電機の 4 社との間で「第 5 世代重粒子線がん治療装置(量子メス)の開発協力に関する包括協定」を締結し、これまで 4 年半にわたって量子メス実現に必要な装置の小型化や、治療効果をさらに高める照射に必要な要素技術の開発を進めてきました。そして、社会実装に向けて研究開発を進める段階へ移行していこうとしています。

 その新たなフェーズを迎える節目として、7月15 日に、『量子科学技術による「がん死ゼロ健康長寿社会」の実現を目指して』と題したシンポジウムを開催しました。平野理事長は挨拶の中で、「手探りで始めた量子メスの研究開発が社会実装に向けた次の段階に移行するまでに発展したことに大きな喜びを感じる。」と述べ、今後も企業との強力な連携が不可欠であることを強調しました。シンポジウムでは、QST の医師や研究者が、これまでQST 病院で積み重ねてきた重粒子線がん治療の成果から見える課題や、量子メスを支える主要技術の開発の見通しについて紹介するとともに、重粒子線がん治療と量子メス開発の展望を示しました。また、外部の有識者によるパネル討論では、重粒子線がん治療を普及させるためになにをすべきかについて、経験も踏まえた具体的で突っ込んだ議論が交わされ、その普及に向けた重要なピースとなる量子メスの早期の開発への期待がさらに高まりました。

重粒子線がん治療のさらなる普及に向けて、外部有識者によるパネル討論会で活発な議論が交わされました。

重粒子線がん治療のさらなる普及に向けて、外部有識者によるパネル討論会で活発な議論が交わされました。

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