精神・神経疾患治療薬の開発はここ数年間停滞していますが、その原因は主に、疾患の病態解明が不十分で、客観的診断法がなく、治療効果を反映するバイオマーカーが特定されていないため、薬剤開発の成功率が低く、投資した開発費が回収できないことにあります。平成29年7月に日本学術会議から出された「精神・神経疾患の治療法開発のための産学官連携のあり方に関する提言※」において企業単独では解決困難なバイオマーカー開発、患者層別化技術開発等については、研究者間-企業間の壁を越えて競争前フェーズから連携する、Public Private Partnerships (PPPs)が必要であるとの認識が示されています。脳の機能を非侵襲的に測定可能な画像バイオマーカーはモデル動物からヒトまで同じ指標での評価が可能で、特に薬の作用部位をヒトで直接画像化できるPETは、薬の評価における重要性が認識されています。本アライアンスでは、量研量子医科学研究所で現在までに培ってきた脳機能イメージングに関する小動物からヒトまでの一気通貫の双方向トランスレーショナルリサーチ技術を基盤に、複数の製薬企業と連携して薬の効果の評価や予測に有用で、各社が共通に使用できるPETトレーサーをはじめとする画像バイオマーカーの創製、およびそれを活用した薬効指標や疾患の病態解析を通じてヒトの病気に近いモデル動物の開発を目指します。企業共通のニーズに合わせた競争前連携フェーズをPPPsが担うことで、治療法開発のための共通のツールを重複せずに連携して開発することにより、競争フェーズの資金が有効に活用され、効率的、効果的に治療法が開発されます。競争前連携フェーズで得られた成果は、かかわる企業および量研が活用し、次の競争フェーズへと発展させることができます。また本アライアンスは国際神経精神薬理学会(CINP)および日本神経精神薬理学会(JSNP)合同・向精神薬開発Public Private Partnerships (PPPs)タスクフォースにおける製薬企業との約2年にわたる議論を基盤としており、学会との強い連携のもとに運営されます。
※ 精神・神経疾患の治療法開発のための 産学官連携のあり方に関する提言[PDFファイル/857KB]
主な研究開発拠点:量子医科学研究所(千葉県千葉市)
研究代表者:樋口真人(脳機能イメージング研究部 部長)
2022年度参加企業(50音順):エーザイ(株)、大塚製薬(株)、小野薬品工業(株)、第一三共(株)、住友ファーマ(株)、武田薬品工業(株)、田辺三菱製薬(株)、日本たばこ産業(株)