ガソリン自動車から電気自動車へのシフトの加速や、スマートフォン等IT機器の普及によって、今後、高性能リチウムイオン電池の原料として必須な高純度リチウムの大幅な需要拡大が世界規模で見込まれています。
リチウムは輸入に100%頼っており、日本のものづくり産業の競争力を高めるためには、独自でリチウム資源を確保する技術開発が必須です。そこで、2020年代に急増が予測されている廃車となる電気自動車に着目し、現時点では技術が確立されていない、電気自動車用の大型リチウムイオン電池リサイクルに関する技術開発をスタートしました。
これまでQSTは、イオン伝導体をリチウム分離膜とし、海水からリチウムを回収する革新的な基盤技術を確立しました。この技術はリチウムイオン電池リサイクルにも適応可能な技術で、商業ベースでリチウムイオン電池リサイクルを行うため、民間企業とアライアンスを形成し、高品位なリチウムイオン電池用原材料を使用済電池から再資源化する、リチウム資源循環技術の社会実装を加速させます。
特に技術的にユニークな点としては、
・工業排ガスなど、今まで使用されていないものもリチウムイオン電池リサイクル時に有効活用する。
・次世代エネルギーとして注目される燃料電池に必要な水素を副産物として生成する。
などが挙げられ、安価なリサイクル技術としてだけでなく、他の産業への波及効果も期待されます。
リチウムの自給自足の実現で、廃車となった電気自動車に搭載されたリチウムイオン電池が、新たな電気自動車用のリチウムイオン電池原料として生まれ変わり、資源に乏しい日本が資源大国となる、革新的な資源循環社会の創造が目標です。その結果として、リチウム資源確保を基盤とする国際競争力の高い新産業が創出され、大きな雇用を生む製造拠点の誕生だけでなく、輸入に伴う地政学的リスクに左右されない、力強く安定した日本経済の更なる発展に寄与してまいります。
主な研究開発拠点:六ヶ所研究所(青森県上北郡六ヶ所村)
研究代表者:星野毅(量子エネルギー部門 上席研究員)
2022年度参加企業(50音順):出光興産株式会社、DOWAエコシステム株式会社