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核融合発電 第09回 ベリリウム精製

掲載日:2021年8月5日更新
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量子科学技術でつくる未来 核融合発電
第09回 ベリリウム精製

 核融合炉の燃料である三重水素は、反応で発生した中性子をリチウムに当てて自己増殖させる。この増殖のカギが、中性子を倍に増やす中性子増倍材「ベリリウム」原子番号4だ。

 このレアメタル(希少金属)であるベリリウム、今では身近な金属である。銅に2%程度添加するだけで、導電性を維持したまま、強度がステンレス並みになり、スマホや電気自動車の電子部品や第5世代通信(5G)通信アンテナに使用されるなど、大変有用である。

 核融合炉1基で500トンもの量が必要となるベリリウムだが、現在の世界総生産量は年間300トンと少ない。
 埋蔵量は十分であるものの、原料となるベリル鉱石(エメラルドなどの宝石の原石としても知られ、緑柱石ともいう)は、非常に安定であるため、精製には多量のエネルギーが必要で、二酸化炭素(CO2)の排出量も多く、非常にコストがかかる。

 そこで量子科学技術研究開発機構(QST)は、環境性に優れる新しいベリリウム精製技術を開発した。
 従来技術は鉱石を粉砕し、2000℃に加熱・溶融・急冷後に酸で溶解するが、開発したアルカリ・マイクロ波溶融技術は、粉末状の鉱石と溶融を助ける塩基試薬(融剤)を混合し、マイクロ波で加熱することで220℃・常圧下で溶融させ、続けて室温・常圧下で酸溶解物として精製する。

核融合発電 第09回 画像

 つまり、高温で溶融・熱処理する外部熱源による加熱工程を、化学的な溶解処理による精製へ変更した点、及び最適な鉱石溶解条件を探索しつつ、その熱源に加熱効率の良いマイクロ波で対象内部から加熱する方式を考案した点が、この一連の開発における技術的飛躍のポイントである。

 この結果、消費エネルギーは千分の一と画期的に削減され、主要な処理工程を閉構造の設備で行うためCO2排出も抑制できたのだ。加えて、ベリリウム以外のリチウム、レアアースなど難溶性鉱石や多金属団塊の精製にも適用可能である。

 この新精製技術は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)達成に貢献できる社会実装が可能な技術として、核融合炉に必要なベリリウムの生産にとどまらず、金属製造産業での幅広い応用が見込め、国の革新的環境イノベーション戦略に示された製造プロセス省エネ化への貢献も期待される、核融合研究のスピンオフなのである。

執筆者略歴

核融合発電 第09回 著者近影

量子科学技術研究開発機構
核融合エネルギー部門 ブランケット研究開発部
増殖機能材料開発グループリーダー
中道 勝(なかみち・まさる)

博士(工学)。
核融合炉工学、材料工学、照射・計装技術が専門で、特にベリリウムという稀(レア)な材料開発を通じて、核融合炉早期実現に向け邁進中。

本記事は、日刊工業新聞 2021年7月29日号に掲載されました。

■日刊工業新聞 量子科学技術でつくる未来 核融合発電(10)ベリリウム精製 (2021/7/29 科学技術・大学)