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核融合発電 第14回 JT-60SAプラズマ 効率生成

掲載日:2021年9月16日更新
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量子科学技術でつくる未来 核融合発電
第14回 JT-60SAプラズマ 効率生成

 核融合エネルギーを生み出す源である数億度の超高温・高圧力プラズマ。JT-60SAプラズマは、外周約25メートルのドーナツ型、体積約140立方メートルと巨大である。この超高温・高圧力で巨大なプラズマをいかに効率良く生成・制御するかが、我々の挑戦である。

 JT-60SAプラズマは、真空容器に注入した燃料ガスに放電を起こした後、真空容器壁に当たらないよう、その形状をわずか10ミリメートル程度の誤差で精度良く制御しながら、プラズマ中を流れる電流を増加させる(最大5.5メガアンペア、メガは100万)。そうしてできたプラズマに粒子ビームや電磁波を入射して加熱し(最大41メガワット)、温度・圧力の高いプラズマを作り出す。

核融合発電 第14回 画像

 圧力の高いプラズマは制御が難しい。プラズマの圧力が上がるとプラズマを乱す不安定性が発生するからだ。この不安定性の発生は、特にプラズマ内に生じる圧力分布に左右され、外部からの加熱、さらにはプラズマ中の電流分布の強さとも深く関係するのだ。そこで、ピンポイントで高周波を入射・加熱したり、プラズマ表面の近くに配置した導体壁や複数のコイルに電流を流したりする、プラズマの安定性を高める仕組みをJT-60SAに搭載した。

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核融合実験炉イーターや原型炉で取り組む燃焼プラズマでは、核融合反応で生じたヘリウムの原子核がプラズマ自体を加熱し、その加熱が約70%、外部からの加熱の寄与は約30%とさらに複雑になる。このため、高い圧力を持つ自律性の高いプラズマの生成と制御は、経済性の高い原型炉の実現に必要な条件であり、JT-60SAにしかできない重要な役割だ。

 この課題に立ち向かうため、前述の加熱システム、高精度の計測システム、プラズマ物理の理解に基づく高度な制御ロジックを統合したプラズマ制御システムを開発した。これらを駆使して複雑に絡み合うプラズマの因果をひもとき、高圧力プラズマを得るのが、プラズマ研究の醍醐味だ。

 JT-60SAは、超高温・高圧力プラズマの制御という核融合プラズマの最重要課題を、イーターに次ぐ大規模で、イーターより多彩な制御機能を用いて解決に導き、イーターのミッション達成、原型炉の早期実現に貢献する。

 

執筆者略歴

核融合発電 第14回 著者近影

量子科学技術研究開発機構
那珂核融合研究所  先進プラズマ研究部
先進プラズマ実験グループリーダー

吉田 麻衣子(よしだ・まいこ)

JT-60や日欧の装置にてプラズマ輸送と制御の実験研究に従事、JT-60SAでは研究計画策定の取纏を行う。2021年より国際トカマク物理活動輸送研究トピカルグループ議長。

本記事は、日刊工業新聞 2021年9月9日号に掲載されました。

■日刊工業新聞 量子科学技術でつくる未来 核融合発電(15)JT-60SAプラズマ効率生成(2021/9/9 科学技術・大学)