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播磨地区開催

関西光科学研究所 | 第12回QST播磨セミナー 電子散乱理論のX線分光への応用

掲載日:2019年7月22日更新
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第12回QST播磨セミナー

 

電子散乱理論のX線分光への応用

 

講演者 小出 明広 博士研究員(関西光科学研究所 放射光科学研究センター 磁性科学研究グループ)
場所 放射光物性研究棟4階 応接室(QST播磨地区)
日時 2019年7月30日(火)15時00分~
使用言語 日本語

 

電子散乱理論のX線分光への応用

Application of electron scattering theory to X-ray spectroscopy

小出 明広 博士研究員

(関西光科学研究所 放射光科学研究センター 磁性科学研究グループ)

概要

 散乱理論は、散乱粒子の漸近的な挙動を記述するのに優れた手法であるため、原子物理の分野で重宝されてきた。しかし近年では、電子の固体中での散乱を積極的に利用した光電子回折のみならず、角度分解光電子分光等においても、電子散乱の効果が無視出来ないことが認識されてきた[1]。一方で、散乱理論は固体物性の分野では馴染みが薄く、また散乱理論の中核を成す微分断面積のデータベースは、原子状態に対するものしか知られていない。そこで、固体中の一原子における微分断面積を計算するGUIであるMASAD(MsSpec Atomic Scattering Amplitude Database)を開発した[2]。MASADは、微分断面積だけでなく、散乱振幅やそれに関する量を出力出来るため、散乱理論を理解するための一つのツールとして使うことが可能である。また、教育的な側面のみならず、原子系のデータベースと比較することで、非弾性散乱効果の重要性を明らかにすることが出来た。更に、複数の原子による多重回の散乱(多重散乱)を考慮する多重散乱理論を用いることで、実空間で固体の電子状態を考慮することが出来る。多重散乱理論をX線分光に応用した例として、スピン軌道相互作用をサイト毎に分解したX線磁気円二色性の計算を紹介する[3]。

 

[1] J. Nitta et al., Scientific Reports, 9 (2019) 9645.
[2] https://git.ipr.univ-rennes1.fr/sebillea/msspec_db
[3] A. Koide and T. Yokoyama, Phys. Rev. B, 96 (2017) 144419.