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量子技術基盤研究部門

全自動インフラ検査 第1回 レーザーでハンマー代替

掲載日:2022年5月26日更新
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量子科学技術でつくる未来 全自動インフラ検査
第1回 レーザーでハンマー代替

打音検査を効率化

 トンネルや橋などの現代社会を支えるインフラ内部の健全性の点検は、熟練点検技術者がハンマーで壁面を叩(たた)き、その音の違いを聞く打音検査によって行われている。しかし、戦後、急激に整備が進んだこれらのインフラは、50年が経過した今日、高経年化を一斉に迎え、構造体の劣化に点検と補修が追いつかなくなり、事故発生リスクの拡大が予測される。

 こうした社会背景を踏まえ、量子科学技術研究開発機構(QST)では、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の「インフラ維持管理・更新・マネジメント技術」で、先端レーザー技術を用いた点検・モニタリング・診断技術の研究開発を、理化学研究所、レーザー技術総合研究所などと産学官の枠組みで実施してきた。具体的には、ひびや剝離などの損傷を検査員が高所作業車上で打音検査により点検していた手法を、作業量の低減や安全性の向上を目的として、遠隔で計測した画像や振動などのデータを活用した計測・モニタリング技術に置き換えるための研究開発である。

 今回開発したレーザー打音検査は、覆工コンクリートの変状を外部から遠隔で非破壊検査する技術で、ハンマーの替わりに壁面に打撃を加えるレーザーと、その打撃による振動を検知し、壁面の状態を調べるレーザーの2種類のレーザーを利用している。QSTでは、ハンマーの打撃を代替する高平均出力レーザーの研究開発を行い、さらに当該レーザーと振動検出用レーザーを組み込んだ「レーザー打音検査装置」の開発に取り組んできた。

 こうした技術開発の結果、この検査法は、国土交通省の点検支援技術性能カタログに掲載され、国内の複数のトンネルなどで定期点検での点検支援実証が開始されている。

 現在、点検技術として確立するための装置の性能評価や効率的な点検手法の研究や実証と、モノづくり技術として「壊れない」装置の開発を産学連携で取り組んでいる。また、現状では総重量が1・5トンを超える装置をマルチコプターなどに搭載するための小型・軽量化にも取り組んでおり、今後、検査場所を選ばない打音点検に幅広く使用される技術となることを期待している。

 本シリーズでは、高出力レーザー研究の応用として、「現場」で使えるレーザー装置の開発や、それを使った屋外での実証試験に向けたレーザー打音試験について紹介する。(木曜日に掲載)

レーザーアブレーションによる振動発生

執筆者略歴

第46回著者

量子科学技術研究開発機構(QST)
量子ビーム科学部門
研究企画部 研究統括 

錦野 将元(にしきの・まさはる)

レーザー核融合やX線レーザーなどの高出力レーザー・プラズマ応用研究に従事後、レーザー加工、レーザー打音や量子メス用入射器などの社会実装に向けた研究開発に参加。博士(工学)。

本記事は、日刊工業新聞 2022年5月26日号に掲載されました。

■日刊工業新聞 量子科学技術でつくる未来(46)全自動インフラ検査 レーザーでハンマー代替(2022/5/26 科学技術・大学)