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量子ビーム科学部門

全自動インフラ検査 第3回 レーザー打音検査進化

掲載日:2022年6月9日更新
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量子科学技術でつくる未来 全自動インフラ検査
第3回 レーザー打音検査進化

点検支援ツール社会実装

 量子科学技術研究開発機構(QST)が開発を進める「レーザー打音検査装置」の将来のユーザーは、トンネルの管理者や検査を実施する検査会社である。昨今のインフラの高経年化などの問題を受けて「インフラの安全性点検業務への新技術導入」に対するユーザーの関心は高い。

 レーザー打音検査の原理は検査員によるハンマーを用いた打音検査と同じで、高強度のパルスレーザーでコンクリートに振動を与え、別のレーザーでその振動を計測し、内部欠陥を検知する。レーザー打音検査は、定量的なデータに基づく判定が可能なことがメリットだが、インフラ点検を担う検査装置として認められ、社会実装するためには、検査員のハンマーによる検査と同等以上の欠陥検知が可能であることを実際の現場で示す必要があった。

 そこで、「欠陥を見つける能力」の検証を、道路トンネルの重要な点検箇所であるトンネル建設時の継ぎ目(目地)、ひび割れが生じている場所、過去に補修を行った場所などを対象に行った。その結果、レーザー打音検査の欠陥検知能力はハンマーを用いた検査員による検査と遜色がないという良好な評価が得られた。

 この評価を踏まえ、さまざまな劣化状態でのレーザー打音検査のデータを学習することで、現在の「欠陥を見つける能力」に加えて、欠陥の状態を把握し、必要な処置を決める指針とするために熟練の検査員が行う「健全度の診断」を再現する人工知能(AI)の開発も、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)で実施している。

 また、レーザー打音検査では、デジタルデータの利点を活かし、検査結果をトンネル表面の展開写真とで重ね合わせることで、挿入図のようなトンネルコンクリート表層の欠陥マップを作製できる。今後、経年的な検査結果データを蓄積することでデジタル変革(DX)化を進め、将来的な劣化予測診断につながるインフラ構造物の管理方法としての展開を目指している。

 今も進化を続けるレーザー打音検査装置は、屋外の道路トンネルというレーザー研究者にとっての未踏の地への第1歩からスタートし、実証試験段階からのステップアップを経て、現役の検査員の負担を軽減する「点検支援ツールとしての活用」という社会実装の扉に到達している。(木曜日に掲載)

トンネル内におけるレーザー打音検査

執筆者略歴

第48回著者

量子科学技術研究開発機構(QST)
量子ビーム科学部門 関西光科学研究所
X線レーザー研究グループ 主幹研究員

長谷川 登(はせがわ・のぼる)

プラズマを生成する高強度レーザーの開発や分光計測などに従事後、レーザー打音方式を社会実装するための屋外用レーザーの開発・運用に参加。博士(工学)。

本記事は、日刊工業新聞 2022年6月2日号に掲載されました。

■日刊工業新聞 量子科学技術でつくる未来(47)全自動インフラ検査 高強度レーザーを屋外稼働(2022/6/2 科学技術・大学)