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超省エネスマホ 第4回リソグラフィ技術

掲載日:2021年11月25日更新
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量子科学技術でつくる未来 超省エネスマホ
第4回 リソグラフィ技術

電子回路を超微細化 

 進化するスマートフォンの機能に対応し、かつ、省エネを実現するには、電子回路の性能を上げることが不可避であり、より微細化・集積化した電子回路の設計・製作が必須となる。この電子回路を作るために不可欠な技術がリソグラフィ技術だ。

 この技術はレジストと呼ばれる材料(保護材)を半導体基板の表面に塗布し、レジストに形成したパターン越しに紫外光などを露光し、パターンの形状を半導体基板に転写した後、レジストを洗い流すなどの工程を行い、パターンに合わせて半導体表面をさまざまに加工することで半導体基板にさまざまな電子回路を集積できる。

 リソグラフィ技術では、光の波長が回路の微細化・集積化のカギを握る。量子科学技術研究開発機構(QST)では、2030年までに到来すると言われる10ナノメートル(ナノは10億分の1)未満のパターンを1ナノメートル(ほぼ原子10個分)のゆらぎ精度で加工するといった極限の超微細化に対応すべく、光源とレジスト材料の両面からEUVリソグラフィ技術に関する研究を推進している。

 光の波長が短いほど、より微細なパターンを正確に描けることから、光源の短波長化が進んでいる。最先端リソグラフィでは、従来用いられている紫外光の193ナノメートルより1ケタ短い、波長13・5ナノメートルの極端紫外(Extreme Ultraviolet=EUV)が光源として使われ始めている。QSTはEUV光源として、波長13・5ナノメートルのX線自由電子レーザーで発生させる波長13・5ナノメートルの光と、短波長EUVレーザーで発生させる波長13・9ナノメートルの光を活用するための研究と技術開発を進めている。

 光源開発が進む一方、EUVリソグラフィに最適なレジスト材料の開発は遅れており、世界的な開発競争が繰り広げられている。従来のレジスト材料は紫外線との化学反応だった。しかし、EUVでは材料と放射線との反応、つまり放射線物理・化学の領域だ。QSTが最も得意とする領域で、長年の知識と経験の積み上げがある。現在、メタルレジストと呼ばれるEUVに高感度な金属元素を含んだ物質をEUV用のレジストとして利用するための研究に取り組んでいる。

 EUVリソグラフィが進歩し、超微細化・集積化された高性能な電子回路を実現できれば、スマホのバッテリーの長寿命化は勿論、サーバーのエネルギー消費の大幅な削減など、電子・通信分野全てでの省エネへとつながるのだ。(木曜日に掲載)

最先端リソグラフィ技術

執筆者略歴

第25回著者

量子科学技術研究開発機構(QST)
量子ビーム科学部門 高崎量子応用研究所 
先端機能材料研究部 主幹研究員

山本 洋揮(やまもと・ひろき)

EUVリソグラフィ用材料に関する研究に従事。QSTのプロジェクト「EUV超微細加工研究」のチーフとして次世代EUVリソグラフィレジスト材料の研究を推進する。QSTでのEUVレジスト研究成果が認められ、阪大のネットワーク型物質・デバイス共同研究拠点の滞在型COREラボに採択され、研究力の強化を図っている。博士(工学)。

本記事は、日刊工業新聞 2021年11月25日号に掲載されました。

■日刊工業新聞 量子科学技術でつくる未来(24)超省エネスマホ リソグラフィ技術(2021/11/25 科学技術・大学)