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イオン注入装置の概要

掲載日:2023年4月1日更新
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400kVイオン注入装置

 本装置は、コッククロフト型の高電圧発生回路(最大370kV)を使用したイオン注入装置(日新電機製NH-40SR型)で、イオン源の引き出し電圧30kVを加えて最大400kVでイオンビームを加速することができます。 本装置は、イオン源、質量分析器、高電圧発生装置、加速管、絶縁変圧器及びスイッチングマグネット等から構成されています。 イオン源はフリーマン型のPIGイオン源を使用し、ガス供給系と固体物質用のオーブン及びスパッター電極を備えることにより、軽イオンから重イオンまで広い範囲のイオンが発生可能で、DCビームが得られます。 質量分析器はダブルフォーカス型の90°偏向マグネットで、水素からビスマスまでのイオンを分析できます。 本装置の主要な性能と諸元を表3.8に示します。

     表1 400kVイオン注入装置の主要な性能と諸元

項 目 明 細
型名   NH40SR(日新電機)
加速電圧  0~370kV 連続可変
昇電圧方式  対称型コッククロフト回路(19段)
イオン引出電圧  10~30kV
加速管  一体型(24段)
電圧分割方式  抵抗分割
加速イオン質量  1~200amu
電圧安定度  3×10-3
絶縁ガス  なし(大気開放型)
90度分析電磁石  質量分解能 M/ΔM≧100
イオン源  フリーマン型PIGイオン源、ECRイオン源
加速器本体の寸法  1.6m×1.6m×1.96m(高さ)

エネルギーとビーム強度

 本装置で加速できるイオンのエネルギーは前述のとおりですが、電極などの汚れにより高電圧が不安定となることがあるため、現在は電圧を下げることで安定な運転を確保しています。そのため、利用可能なエネルギーの範囲は20~380keVです。 また、IXビームラインの利用ではビーム偏向電磁石の能力から最大エネルギーは300keVです。 利用可能なイオン種は水素からビスマス(Bi)程度まで(重水素を除く)ですが、イオン種によっては実験に必要なビーム強度と安定度が得られない場合もあります。 表2に現在利用可能なイオン種とターゲットで得られる凡そのビーム強度を示します。

     表2 利用可能なイオン種とビーム強度  (2017.11現在)

イオン種 加速電圧
(kV)
ビーム強度
(eμA)
備考
H 20~380 2.0  H2(分子)イオンも利用可
He 20~380 4.0  
Li 20~380 4.0  
B 20~380 1.0  
C 20~380 3.0  
N 20~380 20.0  N2(分子)イオンも利用可
15N 20~380 10.0  15N2(分子)イオンも利用可
O 20~380 4.0  
F 20~380 2.0  
Ne 20~380 20.0  
Mg 20~380 15.0  
Al 20~380 1.0  
Si 20~380 2.0  
P 20~380 10.0  
S 20~380 2.0  
Cl 20~380 3.0  
Ar 20~380 30.0  Ar2+なども(最大1MeVまで)利用可
K 20~380 3.0  
Ti 20~380 0.3  ビーム強度が不安定な場合有
V 20~380 0.3  ビーム強度が不安定な場合有
Cr 20~380 3.0  
Mn 20~380 6.0  
Fe 20~380 5.0  
Co 20~380 3.0  
Ni 20~380 5.0  ビーム強度が不安定な場合有
Ge 20~380 (5.0)  ※ご希望の場合、ご相談ください
Kr 20~380 10.0  
Nb 20~380 0.6  
Mo 20~375 1.0  
Ag 20~375 4.0  
Sb 20~375 3.0  
Xe 20~375 10.0  
Cs 20~375 1.0  ※ご希望の場合、ご相談ください
La 20~375 1.5  ※ご希望の場合、ご相談ください
Ce 20~375 0.5  ※ご希望の場合、ご相談ください
Pr 20~370 0.5  
Eu 20~370 5.0  
Gd 20~370 (0.4)  ※ご希望の場合、ご相談ください
Tb 20~370 0.1  
Er 20~370 0.3  
Yb 20~370 10.0  
W 20~370 0.3  ※同位元素の選別に難有
Bi 20~370 5.0  
C60 20~363 0.2  質量が大きいため偏向角に制約有
C70 20~363 0.1  質量が大きいため偏向角に制約有

    注) 単位(eμA)エレクトリックμAは、 ファラデーカップで計測される電流値(μA)です。

  1) ビーム強度、安定度について
表2に示すビーム強度は、エネルギーをおよそ300KeVとした場合に得られた照射チェンバー直前のファラデーカップで測定した値で、保障された値ではありません。イオン源 の状態などによって増減したり、不安定になったりする他、 実験装置にスリットなどを設置した場合やエネルギーが低い場合は減少します。
  2) 同位体分離については可能な範囲で実施します。お問合せください。
  3) 多価イオンについて
基本的には1価の正イオンを発生し加速します。 2価以上のイオンの加速(最大エネルギー 1.0MeV)についてはご相談ください。
  4) 複合ビーム利用について
複合ビーム利用(デュアルまたはトリプル照射)を希望される場合は、使用するポート名(MD1、MD2またはMT1)、各加速器に対応したビーム条件、照射方法(同時照射または交互照射)を明記してください。
  5) 利用イオン種の変更について
イオン試料をイオン源に取付けるなどの準備に時間を要する場合がありますので、申込み後に利用イオン種を変更する場合は、ご利用の1週間以上前にご連絡・ご相談ください。 それでも対応できない場合があります。
  6) 申請時のビーム条件入力について
利用するエネルギーに範囲がある場合には、「0.02~0.38」(単位はMeV)などと入力してください。 また、研究計画記入用紙の実験計画に、加速器側で運転条件を確認できるように、利用を希望するイオン種・エネルギー毎に、希望するビーム電流値を具体的に明記してください。 表3.9の値を超える電流値での利用の希望は、過去に利用実績があったとしても、実験時におけるイオン源の状態により出せる最大値とさせていただきます。
  7) 申請時の質量数の記載について(イオン注入装置の場合)
特別に同位体を分離して利用したい場合には質量数を明記してください。 利用実績がある場合を除き、分離が可能であるかをお問い合せください。 希望の質量数を中心に分離可能な範囲で実施します。 (自然界で存在比の高い一般的な質量数の場合は、質量数の記入は必要ありません。 )

ビームコース

 イオン注入装置には、第2ターゲット室に4本のビームコース(IA、IB、IC及びID)及び第4ターゲット室に1本のビームコース(IX)があります。施設共用で利用可能なビームポート(チェンバー)につきましては、こちらをご覧ください。

IA 汎用照射チェンバー(IA1)が設置されており、最大20mm×20mmの拡大照射が可能です。
IB MD1チェンバーは、タンデム加速器とのデュアル照射が可能です。
IC チェンバー(MT1)は、タンデム加速器とシングルエンド加速器とのトリプル照射が可能です。
ID MD2チェンバーは、シングルエンド加速器とのデュアル照射が可能です。
IX イオン導入型多機能分析顕微鏡(IX_1)専用です。
     

静電加速器に関する問い合わせ先

  イオン加速器管理課
  静電加速器係
  担当 千葉
  (Tel:027-335-8285)

静電加速器実験ポート図
図1 静電加速器系のビーム輸送系