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放射線医学総合研究所の研究員が平成29年度文部科学大臣表彰科学技術賞を受賞しました

掲載日:2018年12月26日更新
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量子科学技術研究開発機構 放射線医学総合研究所の職員5名と株式会社東芝エネルギーシステムソルーション社の1名が平成29年度文部科学大臣表彰科学技術賞の開発部門、研究部門のそれぞれで受賞しました。
この科学技術分野の文部科学大臣表彰は、文部科学省が日本の科学技術水準の向上への寄与を目的として定めているもので、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者に贈られるものです。受賞した内容は以下のとおりです。

開発部門 「重粒子線がん治療用超伝導回転ガントリー照射装置の開発」
放射線医学総合研究所 加速器工学部
 重粒子運転室長 岩田佳之
 照射システム開発チーム 技術員 武井由佳
株式会社東芝エネルギーシステムソルーション社
 京浜事業部 機器装置部 参事 折笠朝文

重粒子線がん治療は、炭素イオンなどの重粒子線を腫瘍に照射するもので、放射線抵抗性のがんに対しても有効な放射線治療法です。従来の重粒子線がん治療装置は、照射方向が限られ治療に制約がありました。また、世界で唯一稼働中のドイツ・ハイデルベルグ大学の重粒子線回転ガントリーは巨大で、一般医療施設への導入は困難でした。
本研究開発では、世界で初めて回転ガントリーに搭載できる超伝導電磁石の設計・製作に成功し、小型軽量な重粒子線超伝導回転ガントリー照射装置を実現しました。これにより重粒子線の照射方向の制限がなくなるとともに、一般医療施設への導入が可能となりました。更に、3Dスキャニング照射の高速化により回転ガントリーの治療効率も向上しました。
本成果は、一般医療施設への重粒子線がん治療装置の普及を促進し、副作用のさらなる低減、治療の短期化による患者の肉体的・社会的負担の軽減、そして従来は治療困難であったがんの克服に寄与することが期待されます。また、世界で初めて小型回転ガントリーの開発に成功したことは、国産の重粒子線がん治療装置の国際競争力向上に寄与すると考えられます。

研究部門 「開放型PET装置の発明と粒子線がん治療可視化法の研究」
放射線医学総合研究所 計測・線量評価部 イメージング物理研究チーム
 チームリーダー 山谷泰賀
 主幹研究員 吉田英治
 研究員 田島英朗

PET(陽電子断層撮影法)や重粒子線がん治療など、がんの診断法と治療法はそれぞれ進歩してきましたが、両者の組み合わせは十分に研究されてきませんでした。これは、従来のPET装置はCT装置のようなトンネル形状であるため、治療とPET診断を同時に行えなかったためです。
そこで本研究では、世界初となる開放型PETの方法を考案し、「OpenPET®」と名づけました。そして、試作機を開発して、目には見えない重粒子線治療ビームを可視化する原理実証に成功しました。治療ビームの体内分布を画像化できると、より細かく重粒子線がん治療を制御できるようになります。
本成果は、回転ガントリーなど最先端の照射技術と相まって、重粒子線がん治療のさらなる高度化に寄与すると期待されます。また、外科治療に応用すると、がんの位置をその場で確認できるPET手術ナビシステムが実現できると期待されます。

平成29年度文部科学大臣表彰科学技術賞記念写真
平成29年度文部科学大臣表彰科学技術賞の記念写真
(写真左より、折笠氏(東芝)、武井氏、岩田氏、山谷氏、吉田氏、田島氏)