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水素エネルギー変換デバイスプロジェクト

研究課題 - 水素エネルギー変換デバイスプロジェクト

掲載日:2023年10月19日更新
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貴金属フリー酸素還元触媒の開発

CO2を排出しない発電システムとして注目されている燃料電池では、カソード電極側で酸素還元反応(Oxygen Reduction Reaction: ORR)を促進するために、カーボン上に担持した貴金属(白金など)触媒を大量に使用しています。貴金属は価格・供給量が産出国の内情を反映して大きく変動するため、その使用量をアノード電極側と同程度もしくはそれ以下まで削減した電極触媒を開発できれば、市場における燃料電池の安定供給につながります。また2020年時点での自動車搭載用の水素燃料電池は90℃での動作を前提に開発されていますが、2040年度までには作動最高温度を120℃まで高めることが要求されており(NEDOロードマップ2023年改訂版)、この温度では白金担持カーボン触媒の性能が落ちてしまうため、中温(120℃)耐性のある電極触媒の開発が求められています。以上の背景を踏まえ、本テーマでは低コストで安定供給可能なセラミックスや炭素材料を原料とした、(i)貴金属使用量を極限まで抑え、(ii)中温領域において白金系触媒と同等もしくはそれ以上の性能を示す、酸素還元触媒の創製を目指します。

近年、酸化物セラミックス(酸化チタンなど)や炭素材料(グラファイト・カーボンナノチューブなど)において、表面へのイオン担持や表面近傍への欠陥・イオン注入を行うことにより、表面改質前にはなかったORR活性が発現することが明らかになっています。しかし反応開始電位や電流値は白金系触媒に及ばず、さらに性能を高める必要があります。そこで、(1)酸化物セラミックスや炭素材料へのイオン/電子/レーザービーム照射により表面改質した材料を創製し、(2)創製した材料の電気特性を評価するともに、(2)’X線吸収微細構造(XAFS)分光により材料の電子構造に関する情報を取得し、それらの相関関係を第一原理計算により明らかにします。そして、(2)および(2)’で明らかにした情報に基づき、より性能を高めた表面改質法を考案することにより、より高性能な酸化還元触媒を開発します。

サブテーマ

アルミを主原料とした水素吸蔵材料の開発

アルミニウム・鉄(Al-Fe)合金は、 高温・高圧下でAl3FeH4を形成して水素吸蔵することが報告されています。 このAl-Fe合金は、 熱力学的に常温・常圧力下においても水素吸蔵が予測され、レアメタルを使用しない軽量・安価な水素吸蔵材料として期待されています。 本テーマでは、スパッタリング法を用いてアルミニウムを主原料とした薄膜試料を作製し、薄膜中の水素をイオンビーム分析法により評価し、水素吸蔵材料の開発を進めています。

レーザープロセシング技術を応用した貴金属分離・分析技術開発

燃料電池の電極触媒には貴金属が使用されており、その安定供給のためには貴金属リサイクルによる資源確保も視野にいれておく必要があります。そこで本テーマでは、レーザー誘起ブレークダウン(LIBS)分光を応用した貴金属濃度のその場分析技術や、レーザー還元法を応用した貴金属分離技術の開発を進めています。