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量子科学技術研究開発機構 設立5周年誌 「QST5年間の成果」

掲載日:2021年9月27日更新
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03融合と産学官連携を促進する仕組み

QST発足のキーワードである「融合」や「連携」を促進するため、さまざまな仕組みの構築で共創を誘発する場を形成しています。

 「QST未来戦略2016」では、拠点や分野を横断した融合領域を切り拓き、新たな研究分野で「世界に冠たるQST」として先導的な役割を果たしていくと宣言しています。その具体的な仕組みが融合研究であり、QST未来ラボです。また、得られた成果を広く社会に還元するために、産学官連携活動を積極的に推進し、連携の枠組み(イノベーション・ハブ)において中心的な役割を担い、共創を誘発する場を形成することも掲げました。

 さらに、社会への貢献と、基礎研究から社会実装、そして基礎研究への再投資という好循環を確立するための人材の育成や確保、財源確保という観点から、QST発のベンチャーへの支援を戦略的に推進することにしました。

融合研究

 物理学や化学、工学から、生物学、農学、医学、薬学に至る多様な研究分野をリードする研究者による分野横断型の融合研究を推進しています。その一つが、体内のがん細胞に集まって効果を発揮する放射性薬剤を使った標的アイソトープ治療の研究です。放射線医学総合研究所(放医研、当時)の持つα線を放出する放射性同位体(核種)を製造する技術と、高崎量子応用研究所のハロゲン元素核種を化合物に導入する技術を融合して、高い治療効果が期待されるα線による次世代のがん治療薬剤「アスタチン-211(211At)MABG」を開発しました。

 また、量子イメージング技術により脳の仕組みを可視化する脳機能イメージング研究では、PET(陽電子放出断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像診断)を用いた研究の進展に加え、放医研の生体脳イメージング技術と関西光科学研究所のレーザー開発技術を融合することで、多光子レーザー顕微鏡によるモデル動物の生体脳内のより広く深い観察を可能にしました。これにより、脳萎縮のメカニズムの発見や、膨大な数の神経細胞間のネットワークをAIで同時解析する技術開発を実現しました。脳疾患の治療薬開発への応用も進行中です。

QST未来ラボ

 QST未来ラボは、新しい学術領域を開拓し、イノベーションを創出するために、組織や拠点を横断した研究開発を推進するバーチャルな研究組織です。QST発足を象徴する仕組みとして開始し、量子メスプロジェクトや量子生命科学研究を生み出しました。2020年からは拠点横断的研究に加え、産学官連携による大規模プロジェクト化を目指した研究開発に取り組んでいます。

 2021年4月時点で、「脳量子バイオマーカー」「イオントラップ量子ビット探索「」次世代放射光利用「」量子医療AI「」量子核医学イメージング」の5研究を進めています。

アライアンスの事業(イノベーション・ハブ)

 産業界の技術的課題を解決し、ブレークスルーによってイノベーションを創出するため、QSTが培ってきた研究の成果を核に、特定分野の複数企業と共同で研究開発を行うアライアンス事業を実施しています。アライアンスは三つの段階からなります。QSTと全会員企業間で当該分野における課題抽出を進める「第1段階(協調領域)」、第1段階で定めた開発目標に興味をもつ会員とQSTで研究開発を実施する「第2段階(協調領域)」、第2段階で得られた成果を基に個別に製品や技術の開発を行い、イノベーション創出を目指す「第3段階(競争領域)」です。現在、「先端高分子機能性材料」「量子イメージング創薬『脳とこころ』「」超高純度リチウム資源循環」の3分野でアライアンス事業を進めています。複数企業と特許出願に至るなど、企業単独では開発が困難だった技術の早期創出が見込まれています。

QSTベンチャー支援

 開発した研究成果を最大活用するため、QSTに代わって普及や実用化による社会還元を担うベンチャー企業を認定し、支援しています。創出した知的財産などを迅速な製品化やサービス提供につなげて、社会への還元を目指します。現在認定しているのは、非侵襲血糖値測定器の商品化を実施する「ライトタッチテクノロジー社」、粒子線がん治療に関わる技術サポートを実施する「ビードットメディカル社」、インフラコンクリート構造物の内部欠陥検査を社会実装する「フォトンラボ社」、放射線診断や放射線治療における医療画像処理と解析を行う「Perfect Imaging Laboratory社」の4社です。

 

 

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