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プレスリリース

核融合実現へ一歩前進-世界初、イータープラズマ加熱装置用に超高電圧導入器を開発-

掲載日:2017年9月22日更新
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発表のポイント

  • 最大100万ボルトの複数電圧を同時に高気圧絶縁ガス中から真空中に導入する画期的な超高電圧導入器(ブッシング)を世界で初めて開発。
  • 100万ボルト真空絶縁を確保するため、これまで開発した世界最大口径セラミックリングなどの要素技術を統合する設計技術を確立し、ブッシングとして集大成した成果。
  • イータープラズマを数億度に加熱する中性粒子入射装置において、真空中で稼働する大電流静電加速器への100万ボルトの電圧の供給を初めて可能とし、核融合プラズマ実験に向け一歩前進。

概要

国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(理事長 平野俊夫。以下「量研」という。)は、現在南フランスに建設中の国際熱核融合実験炉イーター1)のプラズマを数億度に加熱する装置に必要な、世界でも前例のない特殊な超高電圧導入器(以下、「ブッシング」という。)を開発しました。この開発により、イーターの中性粒子入射装置2)(以下、「NBI」という。)において、高気圧絶縁ガス中に伝送される最大100万ボルトの電圧を、真空中で稼働する大電流静電加速器に導入することが可能となり、イーターの核融合プラズマ実験に向け大きな前進となる成果を得ました。本成果は、将来の核融合原型炉用NBIの実現に貢献するとともに、医療・物理・材料分野の加速器への適用も期待されます。
イーターNBIの大電流静電加速器は、1段あたり20万ボルトの5段加速方式であり、最大100万ボルトの電圧が印加されます。従来の加速器は、高気圧の絶縁ガス内に設置することで加速器と周辺の放電を防止して絶縁を確保しますが、イーターでは、放射線により絶縁ガスが電離して電流が流れてしまい絶縁できないため、加速器を真空中に置く必要があります。そのため、従来通りの絶縁ガスで満たされた伝送管から真空中の加速器へ、20万ボルトずつ、最大100万ボルトとなる電圧を供給する5つの導体を有する全く新しいブッシングの開発が不可欠となりました。
このブッシングの実現に向け、まず、平成22年に、絶縁管となる世界最大口径のセラミックリング3)(外径1.56m、高さ0.3m)を開発しました。この絶縁管には真空容器としての役割があり、管内を真空に維持するため大口径セラミックに厚肉コバール4)をロウ付けする技術を確立しました。
従来のブッシングでは変電所などの高電圧線の引き込みで使用され、1本のブッシングの中心部に1本の導体が通っており、5本の導体に対し5本のブッシングが必要となりますが、イーターではスペースの制約から、1本のブッシングに5本の導体を挿入する必要がありました。そこで導体を円筒型として5層同軸状に配置する構造とし、従来の数分の1程度のコンパクトなブッシングを新たに考案しましたが、問題は真空絶縁との両立でした。
今回、この5層同軸円筒導体構造において、真空中で100万ボルトの絶縁を確保するための技術開発を行いました。イーター用ブッシングは、従来の真空絶縁研究の対象と比べ、導体間に印加される電圧は10倍以上、電極面積は100倍以上という高電圧で、桁外れの大面積導体を用いた絶縁が必要なため、絶縁性能が劣化することが懸念されていました。そこで、同軸円筒導体の面積や間隔を変えて絶縁性能を詳細に調べ、その実験結果を基に、電極間の距離が短くなる部分の面積が最小となるように電極形状設計と絶縁計算を繰返し実施することで、100万ボルトの絶縁を確保できる導体配置を決定しました。
このように絶縁管と5層同軸円筒導体を統合して完成したブッシングにより、イーターの要求値である100万ボルト絶縁の実証に成功しました。今回開発したブッシングは、長期間にわたる要素技術開発の積み重ねと、これらを結実させる新しい統合技術により、イーターNBIを構成する機器の開発で最も高いハードルと考えられていた100万ボルト真空絶縁を初めて実証したものです。開発したブッシングをNBI実機試験装置(NBTF5))で使用するため、本年5月にヨーロッパに輸送し、イーター機構による受入試験に合格、これをもってイーター機構への引渡しを完了しました。

研究開発の背景と目的

国際熱核融合実験炉イーターでは、核融合プラズマを高温にして定常状態を維持するために中性粒子入射装置(以下、「NBI」という。)が必要とされています。図1にNBIの模式図を示します。まず、負イオン源では、負イオンを生成し、加速器で負イオンを加速し、高エネルギーの負イオンビームを生成します。次に、イーターの燃料と同じ重水素ガスを充填した箱(中性化セル)の中に負イオンビームを通して負イオンから原子に変換し、高エネルギーの原子ビームにします。電気的に中性な原子ビームにすることで核融合プラズマを閉じ込める強力な磁場の影響を受けずに、プラズマの内部まで入射でき、これを加熱します。NBIは、既に、様々な核融合装置で使用されてきましたが、イーターでは、現在世界最大出力のJT-60用NBIに比べ、エネルギー、電流ともに約2倍となる100万電子ボルト、40アンペアの負イオンビームが必要とされています。
そこで、イーターNBIの負イオン加速器は、加速電極を5段に積み上げた静電加速方式とし、各段当たり20万ボルト、最大100万ボルトの電圧を印加し、エネルギー 100万電子ボルトの負イオンビームを生成します。高電圧を絶縁し、かつ、できるだけコンパクトにするために、従来は加速器を絶縁ガス中に設置する方式が用いられてきました。しかし、イーターではプラズマから発生する放射線により絶縁ガスが電離され電流が流れてしまうため、絶縁ガスを利用できないことから、図1に示すように加速器を真空中に設置することとしました。その反面、高気圧の絶縁ガスで絶縁された高電圧伝送管から、真空中に設置された加速器の間を電気的に接続し高電圧を供給する全く新しいブッシングが必要となりました。結果として、このブッシングには、

  1. 高気圧の絶縁ガスに対して内部を真空とする真空容器の役割を果たすとともに、
  2. 加速器に電圧、冷却水、ガス、信号線等を供給する、

という従来のブッシングでは到底考えられないような複雑でかつ高度な要求が課せられました。そのため、高電圧ブッシングの要素技術まで立ち返り、一から開発に取り組むこととなりました。
具体的には、まず、1)を構成する絶縁管として、平成22年、世界最大口径のセラミックリング、及びそのセラミックの真空シールを形成するようセラミックに厚肉コバールをロウ付けして金属に接合する技術の開発に成功しました。しかし、この技術開発のみでは真空中に複数の導体を導入することができず、イーター用NBIとしては不十分です。そこで、今回、真空中で最大100万ボルトを絶縁しつつ、電位の異なる5つの導体、及び20本以上に及ぶ多数の重要な配管・信号線等を同時に導入する構造を実現するため、100万ボルト真空絶縁技術の確立による電極構造の実現、及び1)と組み合わせたブッシングの完成を目指しました。

図1 中性粒子入射装置(NBI)の模式図の画像
図1 中性粒子入射装置(NBI)の模式図

ブッシング開発、本成果以前の開発経緯

従来、変電所等で使われるブッシングは、1台のブッシングに1本の導体という単純な構造であるため、本件のように複数導体を導入する場合は導体の本数に応じて多数のブッシングを並べることとなり、全体サイズが数メートルにも及ぶ大きなブッシングとなってしまいます(図2(a))。しかし、イーターではスペースの制約があり、1台のブッシング内に全ての導体を収める必要がありました。そこで、導体を円筒形状とし、それを5層・同軸上に配置することで、コンパクト化を図る構造を新たに考案しました(図2(b))。また、前項1)の真空容器に求められる機械強度と真空気密性能の両方を確保するため、絶縁管は二重構造とし、外側の絶縁管は繊維強化プラスチック(FRP)リングの圧力隔壁として機械的な強度を担い、内側の絶縁管は金属をロウ付けしたセラミックリングで真空境界とする二重構造の絶縁管を開発しました。仮にFRPリングのシールが壊れ絶縁ガスであるSF6ガスが二重構造内部に入ってきた場合でも、この層で押し留めて真空中に漏れない構造としました。またこの層には、耐電圧の観点から乾燥空気を充てんし、さらにこの空気を循環させて、仮にSF6ガスが漏洩した場合は検出器で検出できる構造としました。本ブッシング開発初期は、本ブッシングで必要な世界最大口径のセラミックリング(図4)、及びこのセラミックの気密を保つための厚肉コバールロウ付け技術を開発するなど要素技術の確立を進めました。前項2)については、計20本以上となる冷却水・ガス配管、信号線等は中心導体内の中空部分に収める構造とし、その他に、元々直径100ミリの冷却配管については、細配管に小分けにし、外側の導体の表面に沿わせて溶接で固定し、さらにその上に薄い金属カバーをすることで、電極間ギャップ長に大きな影響を与えず、かつ耐電圧上問題となる突起がでない構造にしました(図3)。

図2 ブッシング概念図 (a)従来構造の画像
(a)

図2 ブッシング概念図 (b)今回考案したブッシングの画像
(b)
図2 ブッシング概念図 (a)従来構造、(b)今回考案したブッシング


図3 多数の導体を一括に導入可能なブッシング構造の考案の画像
図3 多数の導体を一括に導入可能なブッシング構造の考案

図4 大口径セラミックリングの開発(平成22年)の画像
図4 大口径セラミックリングの開発
(平成22年)

研究の手法

真空放電の研究は、約200年前から始まっているものの、イーターの加速器や本ブッシングの設計に当たり、当初、これらに必要な大面積電極(>1m2)の真空耐電圧の実験データはほとんどありませんでした。
従来の真空絶縁の研究では、電圧はせいぜい数万ボルト、10ミリ程度の金属球や平板を電極として超高真空中で10ミリ前後の間隔で向き合わせ、電極間隔や電圧を変えて放電が始まる条件を研究していました。また、電圧を増加させるために電極間距離を増やした場合でも、電圧は電極間距離に比例して増加せず、上げ止まる傾向があるため、一般的には、電圧を増やす際に短いギャップの電極を直列に積み上げる方式をとります。しかし、その場合、装置が複雑で大型化するという問題がありました。本ブッシングでは、空間的制約もあり、5層で各段の電圧は20万ボルト、導体間隔は50ミリ程度、また、各円筒導体の面積は5m2以上にもなり、従来の研究からみて一桁長いギャップで桁外れの大面積電極を用いた高電圧の絶縁になります。まずこの導体間距離において20万ボルトが絶縁できるのかという点が懸念されました。次に電極面積が2倍になれば放電する確率は2倍となり、電極が大きくなるほど絶縁できる電圧が急激に低下することが懸念されました。そこで本ブッシングと同様の5層同軸円筒導体の試験体を製作し、導体対向面積、層間ギャップ、更に層数を変えた場合の耐電圧を調べたところ、耐電圧を示す係数(耐電圧Vと電界強度Eの積の0.5乗)がマイナス極(陰極)総面積に対して依存性を有していることがわかりました(図5)。この結果、面積増大による絶縁性能の劣化は予想よりはるかに小さいことを明らかにしました。これは、本ブッシング内の真空が超高真空ではなく、微量の残留ガスが電極間の放電を妨げる効果があるためと考えています。また、導体間ギャップ50ミリの場合、導体面積をあるサイズに抑えることで20万ボルト、全体でも100万ボルトが得られる範囲が見えてきました。
次に、セラミックリング内部の限られた空間で5層の導体を配置するため、多層同軸構造の設計手法を検討しました。この場合、陰極面積、層間ギャップ長に数多くの組合せがあるため、単純に形状を決めることができません。そこで、最大外形を境界値とし、今回得られた試験結果を用いて、導体の面積や層間ギャップ長を変えて、電界計算を繰り返し行い、最適形状を算出する設計モデルを考案し、これを使って本ブッシングの構造を決定して、製作しました(図6)。イーターNBIは数100秒~1時間のパルス運転を行います。そこで、電圧を100万ボルトにしばらく保持した後、電源を落として再立上げを試みるという試験を1日8時間、3日にわたり実施した結果、電圧は劣化することなく、直ちに100万ボルトまで再度立ち上がることを確認しました(図7)。

図5 多層同軸電極の耐電圧試験結果の画像
図5 多層同軸電極の耐電圧試験結果
E:陰極表面電界強度、V:各層間の印加電圧、S:陰極面積

図6 本ブッシングの完成:構造の考案(左図)から実現へ(右図)の画像
図6 本ブッシングの完成:構造の考案(左図)から実現へ(右図)。

図7 日本での耐電圧試験結果の画像
図7 日本での耐電圧試験結果

得られた成果

従来より100倍もの大面積を有する導体の電圧特性を明らかにし、この実験結果に基づいて、最大100万ボルトで、かつ異なる電圧を一括して真空中へ供給可能な、5層同軸型ブッシング構造を考案しました。この耐電圧試験では、イーターの要求値である100万ボルトの電圧を安定に保持することに成功し、イーターで必要な高電圧ブッシングを完成させることが出来ました。本ブッシングは、イーターに先行して、現在イタリアで建設中のイーターNBI実機試験施設(NBTF)で使用する計画であるため、イタリア国内輸送制限サイズ(高さ5.4m)に分解し、NBTFサイトへ輸送し、再組立て後にイーター機構の受入試験に合格し(図8)、イーター機構に引き渡しました。
今回の真空絶縁技術の確立は、核融合原型炉用NBIの実現に貢献するとともに、医療・物理・材料の分野でのニーズが高まっている大電流加速器において、大面積電極の設計、及び施設内において絶縁ガスを使わずに高電圧を加速器に導入できるという安全性・設備の簡略化などの点から貢献できるものとして期待されます。

図8 NBTFサイトでの試験合格イーター機構担当者、QSTチーム、機器製作メーカー(日立製作所(株))、現地工事業者の画像
図8 NBTFサイトでの試験合格
イーター機構担当者、QSTチーム、
機器製作メーカー(日立製作所(株))、現地工事業者

今後の予定

もう一つの日本調達機器である高電圧電源については、NBTFへの据付作業が進行しており、平成30年度初旬に本ブッシングと接続されます。その後、欧州調達の1次側電源と組み合わせ、平成30年度内に電源設備としてしての統合試験を完了し、その後、NBTF装置全体のシステムコミッショニングを開始する計画です。

用語説明

1)イーター:ITER(国際熱核融合実験炉)

制御された核融合プラズマの維持と長時間燃焼によって核融合の科学的及び技術的実現性を実証することを目指したトカマク型(超高温プラズマの磁場閉じ込め方式の一つ)の核融合実験炉です。1988年に日本・欧州・ロシア・米国が共同設計を開始し、2005年に南フランスのサン・ポール・レ・デュランスに建設することが決定しました。2007年に国際協定が発効され、国際機関「イーター国際核融合エネルギー機構(イーター機構)」が発足し、日本、欧州連合、米国、ロシア、中国、韓国、インドの7極が参加しています。イーター計画は各極が機器を調達・製造して持ちより、イーター機構が全体を組み立てる仕組みです。現在、イーターが格納される建屋の建設が進められており、各極が調達する、イーターを構成する様々な機器の調達取決めが、順次締結されて、各極で機器の製作が進められています。各極の貢献(必要な機器の調達や人員派遣等)は、国内機関を指定して実施するものとされ、日本においては文部科学省に指定された量研が行っています。2025年からのプラズマ実験の開始を目指しています。イーターでは、重水素と三重水素を燃料とする本格的な核融合による燃焼が行われ、核融合出力500メガワット、エネルギー増倍率10を目標としています。
イーター計画に関するホームページ (日本語)
イーター機構のホームページ (英語)

2)中性粒子入射装置(Neutral beam injector : NBI)

プラズマにビームを入射し、プラズマを数億度まで加熱するとともに定常状態を維持する装置です。最初に、イオンを生成し、静電的に加速して大出力のイオンビームを生成します。そのイオンビームを一定圧力のガスで満たしたセルを通すことによりイオンの電荷を中和して電気的に中性な原子ビームに変換し、プラズマに入射します。中性化する理由は、核融合プラズマの閉じ込めには強い磁場が用いられているため電気を帯びたイオンビームは、磁場で曲げられてプラズマに入射できないためです。イーターではこの中性粒子入射装置を2基製作することとなっており、エネルギー100万ボルト、電流40アンペアのイオンビームが必要とされています。これは従来の中性粒子入射装置に比べてエネルギーが2倍、電流が2倍となる世界最大出力のビームとなります。

3)世界最大口径のセラミックリング

平成22年、本ブッシングに必要不可欠であった大口径セラミックリングの開発に成功しました(プレス発表済)。100万ボルトを絶縁するためには直径1.5メートル程度のセラミックリングが必要でしたが、当時は、メートル級のセラミックリングは存在していませんでした。世界最大のセラミック焼結炉を使っても当時の技術では1.5メートルのセラミックリング製作は不可能と思われていました。そこで、セラミックリングの成型法として、既存の設備を利用するものの、従来の外から内側に圧縮する方法ではなく、内から外側へ圧縮して大口径化に取り組み、スケールモデルの試作から開始し、最終的に直径1.56メートルのセラミックリングを実現しました。

4)コバール®

上記の大口径セラミックリングの開発と併せて、このセラミックに厚肉コバールをロウ付けする技術を確立しました。コバールは、鉄を主成分にニッケル、コバルトを配合した合金です。従来は、鉛筆程度のサイズの電流導入端子に使用されるセラミック絶縁管において、その気密を保つために、厚み約1ミリ程度のセラミックにロウ付けして使用されます。しかし、本ブッシングでは中間層の高気圧ガスによる圧力が加わるため、応力解析の結果、3ミリ厚の厚肉コバールが必要であることがわかりました。ロウ付け時には、セラミック及びコバール材を炉の中で1000度近くまで昇温し、その後室温に戻します。この温度変化に伴いセラミック及びコバール材は膨張及び収縮します。温度降下時には、“接着剤”の役割を果たすロウ材が固化し、セラミックとコバール材が接合されます。コバールの熱膨張係数はセラミックスのそれに近い値ですが、わずかな差があります。今回のように1メートルを超える大口径セラミックにロウ付けする場合、このわずかな差も無視できなくなり、セラミック及びコバール材の変形量に差が生じます。その結果、接合部には応力が発生し、製作時に割れが生じる可能性が高くなります。特に、コバールが厚いほど、また、接合面積が広いほどこの応力は大きくなります。今回は、世界最大口径のセラミックリングに対し、高気圧ガスと真空の気密を保つためにコバールをロウ付けする技術であり、大面積、厚肉ロウ付けという両方の困難を有していたため、接着方法の工夫が必要でした。この厚肉コバールを大口径セラミックリングに均一にロウ付けするため、ロウ付け時に発生する応力や変形などを抑える特殊な冶具等を開発し、大口径セラミックリングに厚肉コバールを密着させることに成功しました。この結果、平成22年に外径1.56メートルの世界最大口径で厚肉コバールをロウ付けしたセラミックリングを実現し、耐電圧及び耐圧力試験を通じて、必要な絶縁管を実現しました。

5)イーター中性粒子入射装置実機試験施設(NBTF)

フランスに建設するイーターNBIの建設に先駆けて、イタリア・パドバのRFXコンソーシアム内に建設中である、イーターNBIと同等の仕様を有する試験施設です。世界最大出力のイーターNBIを円滑、かつ安定に運転するため、NBTFでイーターNB装置に求められる性能を十分に確認し、その成果をイーターの設計・製作に反映させることを目的としています。日本と欧州の共同でイーター実機2基とNBTFを担当することとなっており、日本は、本ブッシングのうち、今回NBTF用の1基を完成しました。今後イーター実機用の2基を製作する予定です。