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東京工業大学と量子科学技術研究開発機構が包括連携協定を締結~東工大にQSTの量子科学技術 産学協創ラボ開設~Society5.0を先導し、SDGsの達成を支援する次世代量子センサにフォーカス

掲載日:2018年7月12日更新
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 東京工業大学(学長:益 一哉、以下「東工大」という。)と量子科学技術研究開発機構(QST)(理事長:平野 俊夫、以下「量研」という。)は、平成30年7月12日付で量子科学技術に関する研究と社会実装を加速することを目指して包括的な連携協定を締結しました。
 量子コンピュータ、量子暗号通信、複雑な一分子の分子構造を直接見ることができる固体量子センサといった量子科学技術(注1)は、世界的に注目を浴び、非常に活発に研究開発が進みつつある技術です。量子科学技術は新たな価値創出・産業創生の重要な基盤技術へと発展し、さらには持続可能な開発目標(SDGs)2030アジェンダ達成を支援すると期待されています。
 東工大は、西森秀稔教授の量子コンピュータの理論的基礎研究をはじめ、量子慣性センサや固体量子センサなどの量子センサ(注2)研究で世界的な成果を数多く上げています。量研は、量子科学技術研究のフロンティアとして、放射線医学、量子ビーム科学、核融合理工学などの分野で先端的研究と産業応用を推進しています。本連携協定に基づき、両機関が持つ研究開発力や最先端研究施設・設備などの研究環境、優れた人材を活かして、新たな連携・協力の枠組みを構築することが可能となり、急速に立ち上がりつつある量子科学技術分野において、世界をリードする先端的な研究と応用を推進します。
 とりわけ、東工大の有する材料・デバイス科学・量子センサ計測研究と、量研が有する量子ビームを活用した物質・材料科学研究を融合させることで、材料創製から量子デバイス応用までの一貫した総合的研究開発を行います。具体的には、世界的に競争が激しい固体量子センサ分野において、東工大の波多野睦子教授と量研の大島武プロジェクトリーダーが協力し、ダイヤモンド中の窒素-空孔(NV)センタを用いて、ナノからマクロまでのスケーラブルな超高感度・室温動作センサを世界に先駆けて開発します。
 このため、量研は、固体量子センサ研究拠点として、東工大大岡山キャンパスに「QST量子機能材料産学協創目黒ラボ」を平成30年8月1日付で開設し、双方から約30名の研究者が集結して研究を加速させる環境を構築します。そして量子生命科学等の新しい学術領域の進展や、産業界とも密接に連携することで、固体量子センサの医療、ヘルスケア、車載、社会インフラ応用などの実現、社会実装を目指す計画です。

協力協定締結の画像
協力協定締結

記者からの質問に応じる平野理事長(右)、東工大 益学長(左)の画像
記者からの質問に応じる平野理事長(右)、東工大 益学長(左)

用語説明

(注1)量子科学技術:量子のふるまいや影響に関する科学とそれを応用する技術。量子とは、ナノあるいはナノより小さい、原子を構成する微細な粒子や光子等。
(注2)量子センサ:古典力学ではなく、量子力学的な効果を利用することで、従来技術を凌駕する感度や空間分解能等を得るセンサ。固体量子センサは、特に、ダイヤモンドなどの固体中の原子レベルの空孔に閉じ込められたスピンの量子状態を利用して磁場等を計測するものを固体量子センサと呼ぶ。室温・大気で動作する点が特徴であり、実社会環境での応用、生体の観察に適している。磁場・電場・温度等を飛躍的に高い感度で、また高い空間分解能で検出することができる。量子慣性センサは、原子のド・ブロイ波による干渉計を利用することで、従来に比べ飛躍的に高い感度を実現した加速度計・ジャイロスコープの総称。