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プレスリリース

JT-60SA統合試験運転中断の調査結果と今後の改修について

掲載日:2021年7月9日更新
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 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(理事長 平野俊夫。以下「量研」という。)は、Fusion for Energy(欧州連合が設立した事業体。代表 ヨハネス・シュヴェンマー。以下「F4E」という。)と共同で、日欧共同で実施している幅広いアプローチ(BA)活動等を通じて、完成したJT-60SA※1の真空試験、超伝導コイル冷却試験及び通電試験等の統合試験運転※2を進めていましたが、令和3年4月30日に報告したとおり、令和3年3月に発生した超伝導コイル1基の接続部※3の損傷のため、現在、統合試験運転を中断しています。量研とF4Eとで構成された統合チームはこの事象を調査して、損傷の根本原因や対策をまとめるとともに、並行して、量研は、その結果を外部専門家にも諮ってきました。今般、これら全ての審議が終わりましたので、調査結果と今後の改修について報告します。

 損傷の原因は、超伝導コイル導体※4と電路※5の接続部において、接続部を覆う絶縁層※6から引き出されている計測ケーブルが絶縁層の間を十分な距離を取って引き出されておらず、この計測ケーブルの表面に沿って電流が流れたことで短絡が発生し、接続部が損傷したものと判明しました。十分な絶縁性能を確保するため、今後、接続部の絶縁層の改修を行います。また、絶縁性能の確認のためにパッシェン試験※7と呼ばれる新たな試験を導入することとし、現場が狭隘であるため、試験に先立ち入念に検討した試験要領を作業員に徹底させて試験に臨みます。さらに、F4Eや外部専門家の意見を反映し、再発防止の徹底化の観点から、損傷は受けていないものの、同等の構造を有する箇所や構造の異なる同種の箇所も改修するとともに、パッシェン試験を全ての改修箇所に実施して絶縁性能の確認を厳格に実施します。なお、作業にあたっては、量研からの指示や施工業者からの報告を厳密化する等、徹底した品質管理の下で実施します。

 来年2月頃以降、JT-60SAの真空排気・コイル冷却を開始し、トカマクプラズマ生成を含む統合試験運転を再開しますが、この予定にこだわることなく、徹底した再発防止を図りながら慎重に作業を進めます。

 JT-60SAの統合試験運転は今回の事案により遅延することとなりましたが、今後組立て工事が本格化するイーターや将来の原型炉において、本件によって得られた知見を設計製作に反映してまいります。

 

損傷個所
損傷個所

 

【詳細説明】

 損傷した接続部は、コイルとそれに電流を流すための電路を繋ぐものであり(図1)、正極側、負極側の計2個あります。今回は、いずれの接続部においても損傷が見られました。短絡による過電流により生じたものと考えています。接続部からは、コイルの超伝導状態を観測するための計測ケーブルが2本ずつ引き出されています(図1)。今回の調査では、この計測ケーブルが絶縁層の間を十分な距離を取って引き出されていなかったことがわかりました(図2)。再発防止のためには、計測ケーブルが絶縁層の間を十分な距離を取って引き出されるよう、施工管理を厳格化する必要があります。そこで、絶縁層の改修にあたっては、徹底した施工管理の下で作業を実施します。

図1:EF1の接続部分付近の拡大図
図1:EF1の接続部分付近の拡大図​


図2:施工不十分箇所の概念図
​図2:施工不十分箇所の概念図.png

 

また、絶縁性能の確認のために新たな試験を導入することとし、現場が狭隘であるため、試験に先立ち入念に検討した試験要領を作業員に徹底させて試験に臨みます。この試験は、対象箇所に囲いを付け、その中の圧力を下げた状態で高電圧を印加するパッシェン試験と呼ばれ、絶縁性能が低い箇所を見逃さない効果的な試験手法です(図3)。

図3:高電圧試験を行うために、対象箇所を囲って圧力を下げる。
​図3:高電圧試験を行うために、対象箇所を囲って圧力を下げる。

 

【用語解説】

*1…JT-60SA(JT-60 Super Advanced)

幅広いアプローチ(BA)活動として日欧共同で実施するサテライト・トカマク計画と我が国で検討を進めてきたトカマク国内重点化装置計画の合同計画として、茨城県那珂市の量研施設に建設された先進超伝導トカマク装置であり、現時点では世界最大の装置となります。

URL:https://www.qst.go.jp/site/jt60/5150.html(日本語)

 

*2…統合試験運転

装置の動作を確認するために行う一連の運転。JT-60SA本体の真空排気・リーク試験から始まり、超伝導コイルの冷却と通電試験、その後実際にトカマクプラズマを発生させプラズマの制御性も含めてJT-60SA全体の動作を確認します。

 

*3…コイル接続部

あらかじめ製作された超伝導コイル本体と、電路をつなぐ部分です。超伝導素材で作られた電線同士を繋ぐとともに、超伝導素材を極低温に保つために循環させているヘリウムを閉じ込めるための役割も持ちます。

 

*4…超伝導コイル導体

強力な磁場を発生するためのコイルに用いられているのは、極低温で抵抗がほぼゼロになる超伝導素材で作られた導体(電線)です。

 

*5…電路

超伝導コイルに電流を流すための電線、外部の電源につながっています。超伝導素材で作られており、表面は絶縁層で覆われています。

 

*6…絶縁層

超伝導コイルには電流を流しますが、一定値ではなくプラズマの状況に応じて時間的に変化させます。電流を変化させるためにはコイルの両端に高電圧を印加する必要があります。短絡が起こらないように、超伝導コイル導体や、電路、コイル接続部は、電気を通さない材料で周りを覆っています。これが絶縁層です。

 

*7…パッシェン試験

高電圧部の周りの圧力(真空度)が変化すると放電の起きる電圧も変化し、その法則はPaschenの法則と呼ばれています。この法則を利用して、試験体を1-1000Pa程度の真空環境において、圧力を変えながら耐電圧試験を行うのが、パッシェン試験です。パッシェン試験において放電が起こらなければ、高電圧部が真空中にさらされていないことが分かり、超伝導コイル(高電圧部)を覆っている絶縁層が健全であることを確認できます。