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プレスリリース

QST認定ベンチャー企業「リンクメッド株式会社」が誕生 ―国産の次世代型放射性医薬品による『革新的な「見える」がん治療』の実用化に挑戦―

掲載日:2022年8月9日更新
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発表ポイント

  • がんの診断と治療を同時に行える次世代型放射性医薬品をコア技術とするQST認定ベンチャー「リンクメッド株式会社」を設立し、QSTの研究成果の社会還元を促進する。
  • 同社は国産の次世代型放射性医薬品による『革新的な「見える」がん治療』で最先端科学と医療をリンクし、個々の患者さんに応じた最適な医療の実現を目指す。​ 

概要

 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(理事長:平野俊夫、以下、「量研/QST」)は、量子生命・医学部門 量子医科学研究所 分子イメージング診断治療研究部の吉井幸恵上席研究員らが開発したがんの診断と治療を同時に行える次世代型放射性医薬品の実用化を目指す「リンクメッド株式会社」1)(代表取締役社長兼任:吉井幸恵)を、令和4年7月1日にQST認定ベンチャーとして認定しました。同社は、科学技術研究開発機構(JST)の研究成果展開事業 大学発新産業創出プログラム(START)2)の支援で起業準備されたもので、今回QST認定ベンチャーとして認定を受け、令和4年7月4日に正式に設立されました。

放射線(X線)治療や化学療法などの従来のがん治療では、悪性脳腫瘍等に対して治療が効きづらい、正常組織に対する副作用が大きい場合があるといった問題がありました。これに対し、吉井幸恵上席研究員らは、銅の放射性同位体である64Cuを用い、悪性脳腫瘍等に対して治療効果が高く、さらにがんの診断と治療を同時に行える次世代型放射性医薬品を開発してきました。

64Cuは、これまでの放射性治療薬で使用されてきたベータ線3)に加え、オージェ電子3)という特殊な放射線を出し、高いエネルギーでがん細胞を効果的に治療ができるという優れた特徴を有しています。また、64Cuは同時に陽電子も放出するため、陽電子放射断層撮影(positron emission tomography; PET)診断を用いることができます。そのため、がん細胞に集積する薬剤に64Cuを結合させることによって、非侵襲的にがんへの薬剤集積を確認しながら治療(見ながら治療)することができます。

同社は、国産の64Cuを用いた次世代型放射性医薬品により、最先端科学と医療をリンクし、『革新的な「見える」がん治療』4) の一日も早い実用化を目指します。これにより、個々の患者さんのがんへの薬剤集積や副作用を評価しながら最適な医療を提供できると期待されます。 

なお、同社はQST内に拠点を置き、QSTと産学連携を行い、放射性医薬品の実用化を進めてまいります。

補足説明資料

​【会社設立の経緯とコア技術】

 これまでのがんに対する放射線(X線)治療や化学療法では、治療が効きづらい、正常細胞に対する副作用が大きい場合があるといった問題がありました。一方、吉井幸恵上席研究員らは、こうした問題を克服しうる『銅の放射性同位体64Cu(カッパー64と読みます)を用いた次世代型放射性医薬品』を開発してきました。

64Cuは、従来の放射性治療薬で使用されてきたベータ線のほかに、オージェ電子という特殊な放射線を出し、がん細胞を高いエネルギーで効果的に治療できます。また、64Cuは陽電子も放出するため、陽電子放射断層撮影(positron emission tomography; PET)診断で非侵襲的にがんへの薬剤集積を確認しながら治療(見ながら治療)することができます(図1)。

図1 独自技術:革新的「見える」がん治療薬

 図1.64Cuを用いた次世代放射性医薬品による「見える」がん治療

さらに、64Cuはがんと高い親和性を示す、抗体などの様々な分子に結合させることが可能なため、がん特異的に効果を発揮する多様な医薬品を創出することができます。

リンクメッド株式会社は、QSTと連携し、こうしたユニークな特徴を持つ64Cuを用いた『革新的な「見える」がん治療』で、他に効果的な治療法がない難治がんの克服や、患者さん一人ひとりのがんの状態に合わせた治療の社会実装を目指して設立されました。

【開発1号品:64Cu-ATSM】

国産放射性治療薬として初の国内臨床試験を実施中

悪性脳腫瘍は、既存の治療法では十分な効果が得られず、新規治療法の開発が強く望まれています。これまでの治療が効きづらかった原因として、腫瘍内部が酸素の乏しい低酸素環境になり治療抵抗性になることが知られています。

これに対し吉井幸恵上席研究員らは、低酸素環境にある腫瘍細胞に集積し高い治療効果を発揮する64Cu-ATSMを研究開発し、がん細胞株移植モデル等を用いた非臨床試験で64Cu-ATSMが低酸素状態にある悪性脳腫瘍の増殖を抑制し、生存率を改善することを示してきました。

こうした背景から、64Cu-ATSMが悪性脳腫瘍に対する新たな治療薬となることが期待され、現在64Cu-ATSM治療の第1相医師主導臨床試験が実施されています(図2)。本試験は、国産放射性治療薬として初の国内臨床試験となり、本薬の早期の実用化が期待されています。リンクメッド株式会社では、64Cu-ATSMの一日も早い社会実装を目指し、事業化製造の準備をしています。

図2. リンクメッド株式会社の開発1号品64Cu-ATSM

   図2. リンクメッド株式会社の開発1号品64Cu-ATSM

リンクメッド株式会社の概要】

社名: リンクメッド株式会社

代表取締役社長: 吉井幸恵(量研 上席研究員)

設立日: 令和4年7月4日

所在地:千葉市稲毛区

事業内容:放射性医薬品の開発

 

【用語解説】

1)リンクメッド株式会社

最先端科学と患者・医師をつなぐ(リンク)し、新しい医療(メッド)を創成することから「リンクメッド株式会社」と命名しました。

 

2)科学技術研究開発機構(JST)の研究成果展開事業 大学発新産業創出プログラム(START)

日本の大学などの研究成果に対し、アカデミア発ベンチャーなどを通じた社会実装を促す目的のJSTによる支援プログラム。本制度では、事業化に精通した事業プロモーターのメンタリングを受け、事業戦略を構築し、アカデミア人材が事業化へ挑戦することが支援されています。

 

3)ベータ線、オージェ電子

 ベータ線は、一般に最大飛程がミリメートルオーダーで従来の放射性治療薬に使用されます。オージェ電子は、一般に最大飛程がナノメートルオーダーと短いため薬剤の近傍に高いエネルギーを付与することができ、治療効果が高いと言われています。

 

4)『革新的な「見える」がん治療』

リンクメッド株式会社のコア技術。がんの診断と治療を同時に行える銅の放射性同位体64Cuを結合させた次世代型放射性医薬品を用いた診断一体型治療のこと。64Cuは治療目的で使用できるベータ線・オージェ電子を出し、がん細胞を効果的に治療できます。また、64Cuは陽電子も放出するため、同時に陽電子放射断層撮影(positron emission tomography; PET)診断も可能になります。このため、64Cuを使用した次世代型放射性医薬品は、非侵襲的にがんへの薬剤集積を確認しながら治療(見ながら治療)することができます。