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プレスリリース

完全バイオマス由来の有機ハイブリッド材料の合成に成功しACS Sustainable Chemistry & Engineeringにて発表した研究論文がSupplementary Journal Coverとして採択

掲載日:2019年5月22日更新
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概要 

 今回、群馬大学の重点支援プロジェクトである「Sメンブレン・プロジェクト」の材料科学研究において、群馬大学大学院理工学府の覚知亮平助教と、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(QST)高崎量子応用研究所の瀬古典明プロジェクトリーダー、大道正明主任研究員らの研究グループは、完全バイオマス由来の有機ハイブリッド材料の合成に成功しました。本成果はアメリカ化学会(ACS)が出版するACS Sustainable Chemistry & Engineeringに研究論文として公刊されるとともに、掲載当月の評価の高い研究内容として、Supplementary Journal Coverに採択されました。

 なお、Sメンブレン・プロジェクトでは、群馬大学理工学部が強みを持つ「材料科学」、「元素科学」、「デバイス科学」を総合し、「スーパー・メンブレン」の創製を目指しています。

 

研究論文画像

 

背景・経緯

1.現状

 近年、世界的な石油資源の枯渇およびそれに伴う価格の高騰により、石油化学を原料とする種々の化学製品の安定的供給に困難が生じ始めています。このような背景から、生物由来資源の有効活用に大きな期待が寄せられています。しかしながら、木質系バイオマスの活用において、セルロースなどの多糖類の有効活用に大きな進展が見られる一方、芳香族系ポリマーであるリグニンの活用が問題となっています。リグニンはその溶媒への難溶解性から、その化学的変換が困難とされてきています。そのため、現状においては、リグニンの有効な活用法が存在せず、焼却処理されています。

 

2.研究成果

 本研究では今後の活用が熱望されている木質系バイオマス資源に着目し、高分子基材及び高分子側鎖の全てがバイオマス由来の原料で構成される完全バイオマス型機能性材料の開発を進めてきました。具体的には、バイオマス残渣から抽出可能なリグニン誘導体に、グラフト重合に必須なビニル基を付与し、これをバイオマス資源である繊維状のセルロース製不織布基材に電子線グラフト重合により導入するという技術開発の成果です。本成果により、基材をセルロース、そして表面部分にリグニン誘導ポリマーを有する全バイオマス由来の有機ハイブリッド型で環境低負荷型の材料を創製できるようになります。現在、使用済水処理材料等の高分子材料の廃棄物が問題となっていますが、生分解が可能な組成で構成されている本材料は酵素などで容易に分解でき、大幅に体積減容が図れる有効な手法です。さらに、本手法により得られるグラフト重合物の表面親水性等の機能は目的に応じたテーラーメード加工ができることから様々な機能性材料としての応用に期待が寄せています。

 

掲載論文: ACS Sustainable Chemistry & Engineering 2019, 7 (8), 7795-7803

           ( https://doi.org/10.1021/acssuschemeng.8b06812

 

今後の方向性

 本成果は、木質系バイオマス資源の活用という点で環境保全に貢献するとともに、多様な表面修飾による幅広い潜在的な応用性を持ち、多くの機能性材料へと発展する可能性があると考えています。

 

用語解説

リグニン:木質系バイオマスに含まれる芳香族高分子

セルロース:木質系バイオマスに含まれるグルコースをモノマー単位とする多糖

 

報道問合せ先

群馬大学 大学院理工学府 分子科学部門

覚知 亮平 助教(kakuchi@gunma-u.ac.jp)

QST高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部 プロジェクト「環境資源材料研究」

瀬古 典明 プロジェクトリーダー(seko.noriaki@qst.go.jp)

大道 正明 主任研究員(omichi.masaaki@qst.go.jp)