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プレスリリース

国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構の平野俊夫理事長が、これまでの大阪大学等でのインターロイキン6の発見とその一連の研究成果に対して、「Lifetime Achievement Award」を受賞いたしました。

掲載日:2020年10月1日更新
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お知らせ

 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構理事長の平野俊夫が、これまでの大阪大学等でのインターロイキン6の発見とその一連の研究成果に対して、「Lifetime Achievement Award」を受賞いたしましたので、お知らせいたします。

 

(以下受賞内容の概要)

第7回癌免疫療法会議において、平野俊夫理事長が「Lifetime Achievement Award」を受賞

 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構理事長の平野俊夫は、10月2-3日にオンライン開催される第7回癌免疫療法会議(The 7th Immunotherapy of Cancer Conference;ITOC7)において、「インターロイキン6の発見とその一連の研究成果」に対して「Lifetime Achievement Award」を受賞することとなり、10月3日に授賞式が開催されます。また、「The 34th anniversary of interleukin 6; a major player in inflammation, autoimmunity and cancer」と題する受賞講演を行ないます。

 ITOCは、免疫腫瘍学の分野におけるトランスレーショナルリサーチのグローバルプラットフォームを提供するヨーロッパの国際学会で、2014年に第一回会議が開催されました。会議の主な目的は、癌の免疫療法に専念するすべての人々が知識と最新の発見を交換し、議論の場を提供することにより、がん治療薬の開発と普及促進に貢献することです。

 学会ホームページ https://www.itoc-conference.eu

受賞に至った研究業績概要

1)インターロイキン6(IL-6)の発見

 IL-6などのサイトカインは細胞の増殖、分化、生存を制御することにより、免疫応答、造血反応、炎症反応を調節している重要な生理活性因子である。しかしながら、1970年代においては、サイトカインの本態は全く不明であった。平野は1970年代末にBリンパ球に作用し、抗体産生細胞への分化を誘導するサイトカインの精製を試みることを開始した。大阪府立羽曳野病院勤務時に結核性胸膜炎患者胸水中のリンパ球は、Bリンパ球を抗体産生細胞に分化させる因子を多量に産生する事を見いだした(Hirano et al., 1981)。熊本大学医学部にて、結核性胸膜炎胸水リンパ球や扁桃腺リンパ球培養上清より、等電点5.1で分子量2.2万のB細胞分化因子(TRF様因子/BCDF)、すなわちIL-6の存在を発見し、その精製を試みるとともに、作用機作の研究を続けた(Teranishi et al., 1982)。1984年に大阪大学細胞工学センターに移動後も、B細胞分化因子の精製を続け(Hirano et al., 1985)、1986年にそのcDNAのクローニングに成功した(Hirano et al., 1986)。本因子は、1988年のニューヨーク・アカデミーの主催する国際会議においてIL-6という名称に統一された。さらにIL-6の受容体をコードする遺伝子をクローニングし、その全構造を明らかにした(Yamasaki et al., 1988)。

 

2)IL-6が自己免疫疾患、慢性炎症疾患やがんの発症に関与している事と、その発症機構の解明

 IL-6が関節リウマチ患者関節液中に高濃度存在することを発見し、IL-6が関節リウマチなどの自己免疫疾患に関与している可能性を初めて見出した(Hirano et al., 1988)。しかしIL-6の異常により関節リウマチが発症することを証明することは困難だった。平野らは1990年から、IL-6の作用機序解明のための地道な努力を重ね、IL-6受容体を介するシグナルを特異的に欠失した変異IL-6受容体gp130を発現しているノックインマウス(F759マウスなど)を作製することによって、IL-6シグナルの異常により関節リウマチに類似した自己免疫疾患が自然に発症しうることを証明した(Ohtani et al., 2000) (Atsumi et al., 2002)。さらに、F759マウスを使用して、IL-6シグナル異常で自己免疫疾患が発症する機構を解明した(Sawa et al., 2006) (Murakami et al., 2011; Ogura et al., 2008)。その結果、1)非免疫組織と、免疫システムの相互作用が重要である事、2)転写因子であるNF-kBとSTAT3が相乗的に作用してIL-6遺伝子発現を増強する「IL-6増幅回路:IL-6アンプ」が存在する事、3)「IL-6アンプ」が線維芽細胞等の非免疫細胞で活性化される事がF759関節炎(関節リウマチのモデル)や、抗原特異的T細胞によって誘導される実験的自己免疫性脳脊髄炎(多発生硬化症のモデル)の発症に重要である事を示した。また、IL-6アンプはIL-6のみならずNF-kBの標的である様々な炎症生サイトカイン産生を増強することを示した。そして、自己免疫疾患や炎症性疾患の発症機構として、「4ステップモデル」を提唱した(Murakami and Hirano, 2011)。すなわち、1)T細胞の抗原特異性が何であれ、何らかの原因でT細胞が活性化されること、2)活性化T細胞を標的組織に引き寄せる標的組織における事象(局所引き金)、3)「IL-6アンプ」の一過性の活性化、4)標的組織におけるサイトカインに対する感受性亢進、これらの4つの事象が相互作用する事により、最終的に「IL-6アンプ」の慢性的活性化が引き起こされて関節リウマチなどの自己免疫疾患や、慢性炎症性疾患が引き起こされる。この実験では、関節に微小血管出血という局所引き金を人工的に誘導する事により、関節局所で「IL-6アンプ」活性化によりT細胞が引き寄せられて、局所引き金を誘導された関節のみに関節炎が発症することを明らかにした(Murakami et al., 2011)。さらに、神経刺激も「IL-6アンプ」活性化を引き起こす局所引き金の1つである事を見いだした。中枢神経系の難病である多発性硬化症の動物モデルを用いて、ヒラメ筋を介する重力刺激による第5腰椎付近の神経活性化が 「IL-6アンプ」を活性化することにより、第5腰椎の背側の血管からT細胞が血液脳関門を破り脳神経系に浸入する事を示した(Arima et al., 2012)。さらに、「IL-6アンプ」が、ヒトの様々な自己免疫疾患、慢性炎症性疾患やがんの発症に関与している事を、全ゲノムを対象にした機能的スクリーニングの結果とヒト疾患関連遺伝子データベースとの情報とを照合する方法によって明らかにした(Murakami et al., 2013) (Atsumi et al., 2014)。以上の研究成果を総合して、「局所引き金モデル:Local Initiation Model」を提唱している。すなわち、感染、外傷、肥満、加齢、神経刺激などの局所引き金が、脂肪細胞、線維芽細胞、上皮細胞や内皮細胞などの非免疫系組織に生じることによりSTAT3やNF-kBなどの転写因子活性化を介して「IL-6アンプ」が活性化し、非免疫組織と免疫系が相互作用することにより制御を逸脱した慢性炎症が生じる。これら一連の反応が関節リウマチなどの自己免疫疾患や慢性炎症性疾患、さらにはがんの発症に至るというモデルである。

 これら一連の研究成果は、慢性炎症と疾患の関連を明らかにしたのみならず、関節リウマチなどの慢性炎症性疾患の治療や、白血病に対するCAR-T治療の重篤な副作用であるサイトカイン遊離症候群の治療への道を開いた。また、重症COVID-19はサイトカインストームにより引き起こされると考えられており、その治療にIL-6阻害剤が有効である可能性が示唆されている(Hirano, 1998, 2010) (Murakami et al., 2019) (Hirano and Murakami, 2020)。

 

【主な受賞歴】(◎は国際賞)

・エルウィン・フォン・ベルツ賞(昭和61年)

・日本チバガイギー・リウマチ賞(平成2年)

・The Sandoz Prize for Immunology (現Novartis Prize for Immunology)◎(平成4年)

・大阪科学賞(平成9年)

・持田記念学術賞(平成10年)

・ISIトムソン・サイエンティフィック社(アメリカ)引用最高栄誉賞

(ISI Citation Laureate Award, 1981-1998)(平成12年)

・藤原賞(平成16年)

・日本医師会医学賞(平成17年)

・紫綬褒章(平成18年)

・The Crafoord Prize(クラフォード賞)◎(平成21年)

・吹田市長賞(平成21年)

・大阪市長特別表彰(平成22年)

・日本国際賞◎(平成23年)

・ITOC7 Lifetime Achievement Award◎(令和2年)

 

【関連する論文】

Arima, Y., Harada, M., Kamimura, D., Park, J.H., Kawano, F., Yull, F.E., Kawamoto, T., Iwakura, Y., Betz, U.A., Marquez, G., et al. (2012). Regional neural activation defines a gateway for autoreactive T cells to cross the blood-brain barrier. Cell 148, 447-457.

Atsumi, T., Ishihara, K., Kamimura, D., Ikushima, H., Ohtani, T., Hirota, S., Kobayashi, H., Park, S.J., Saeki, Y., Kitamura, Y., and Hirano, T. (2002). A point mutation of Tyr-759 in interleukin 6 family cytokine receptor subunit gp130 causes autoimmune arthritis. J Exp Med 196, 979-990.

Atsumi, T., Singh, R., Sabharwal, L., Bando, H., Meng, J., Arima, Y., Yamada, M., Harada, M., Jiang, J.J., Kamimura, D., et al. (2014). Inflammation amplifier, a new paradigm in cancer biology. Cancer Res 74, 8-14.

Hirano, T. (1998). Interleukin 6 and its receptor: ten years later. Int Rev Immunol 16, 249-284.

Hirano, T. (2010). Interleukin 6 in autoimmune and inflammatory diseases: a personal memoir. Proc Jpn Acad Ser B Phys Biol Sci 86, 717-730.

Hirano, T., Matsuda, T., Turner, M., Miyasaka, N., Buchan, G., Tang, B., Sato, K., Shimizu, M., Maini, R., Feldmann, M., and et al. (1988). Excessive production of interleukin 6/B cell stimulatory factor-2 in rheumatoid arthritis. Eur J Immunol 18, 1797-1801.

Hirano, T., and Murakami, M. (2020). COVID-19: A New Virus, but a Familiar Receptor and Cytokine Release Syndrome. Immunity 52, 731-733.

Hirano, T., Taga, T., Nakano, N., Yasukawa, K., Kashiwamura, S., Shimizu, K., Nakajima, K., Pyun, K.H., and Kishimoto, T. (1985). Purification to homogeneity and characterization of human B-cell differentiation factor (BCDF or BSFp-2). Proceedings of the National Academy of Sciences 82, 5490-5494.

Hirano, T., Teranishi, T., Toba, H., Sakaguchi, N., Fukukawa, T., and Tsuyuguchi, I. (1981). Human helper T cell factor(s) (ThF). I. Partial purification and characterization. J Immunol 126, 517-522.

Hirano, T., Yasukawa, K., Harada, H., Taga, T., Watanabe, Y., Matsuda, T., Kashiwamura, S., Nakajima, K., Koyama, K., Iwamatsu, A., and et al. (1986). Complementary DNA for a novel human interleukin (BSF-2) that induces B lymphocytes to produce immunoglobulin. Nature 324, 73-76.

Murakami, M., Harada, M., Kamimura, D., Ogura, H., Okuyama, Y., Kumai, N., Okuyama, A., Singh, R., Jiang, J.J., Atsumi, T., et al. (2013). Disease-association analysis of an inflammation-related feedback loop. Cell Rep 3, 946-959.

Murakami, M., and Hirano, T. (2011). A four-step model for the IL-6 amplifier, a regulator of chronic inflammations in tissue-specific MHC class II-associated autoimmune diseases. Front Immunol 2, 22.

Murakami, M., Kamimura, D., and Hirano, T. (2019). Pleiotropy and Specificity: Insights from the Interleukin 6 Family of Cytokines. Immunity 50, 812-831.

Murakami, M., Okuyama, Y., Ogura, H., Asano, S., Arima, Y., Tsuruoka, M., Harada, M., Kanamoto, M., Sawa, Y., Iwakura, Y., et al. (2011). Local microbleeding facilitates IL-6- and IL-17-dependent arthritis in the absence of tissue antigen recognition by activated T cells. J Exp Med 208, 103-114.

Ogura, H., Murakami, M., Okuyama, Y., Tsuruoka, M., Kitabayashi, C., Kanamoto, M., Nishihara, M., Iwakura, Y., and Hirano, T. (2008). Interleukin-17 promotes autoimmunity by triggering a positive-feedback loop via interleukin-6 induction. Immunity 29, 628-636.

Ohtani, T., Ishihara, K., Atsumi, T., Nishida, K., Kaneko, Y., Miyata, T., Itoh, S., Narimatsu, M., Maeda, H., Fukada, T., et al. (2000). Dissection of signaling cascades through gp130 in vivo: reciprocal roles for STAT3- and SHP2-mediated signals in immune responses. Immunity 12, 95-105.

Sawa, S., Kamimura, D., Jin, G.H., Morikawa, H., Kamon, H., Nishihara, M., Ishihara, K., Murakami, M., and Hirano, T. (2006). Autoimmune arthritis associated with mutated interleukin (IL)-6 receptor gp130 is driven by STAT3/IL-7-dependent homeostatic proliferation of CD4+ T cells. J Exp Med 203, 1459-1470.

Teranishi, T., Hirano, T., Arima, N., and Onoue, K. (1982). Human helper T cell factor(s) (ThF). II. Induction of IgG production in B lymphoblastoid cell lines and identification of T cell-replacing factor- (TRF) like factor(s). J Immunol 128, 1903-1908.

Yamasaki, K., Taga, T., Hirata, Y., Yawata, H., Kawanishi, Y., Seed, B., Taniguchi, T., Hirano, T., and Kishimoto, T. (1988). Cloning and expression of the human interleukin-6 (BSF-2/IFN beta 2) receptor. Science 241, 825-828.

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