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シングルエンド加速器の概要

掲載日:2023年4月1日更新
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3MVシングルエンド加速器

 本加速器は、高電圧ターミナル内にイオン源を内蔵した3MVのシングルエンド型静電加速器(日新ハイボルテージ社製NC-3000B型)です。 高電圧発生にはシェンケル型の倍電圧整流回路を使用し、加速電圧を0.4~3MVの範囲で連続的にかつ容易に変更できます。 サブミクロンサイズのマイクロビーム形成を実現するため、加速電圧の安定度ΔV/Vは、10-5 を達成するよう設計されています。 加速器タンク内にあるRF型イオン源は構造が比較的単純で信頼が高く、水素からヘリウムまでの軽イオンの引出しが可能で、 安定したDCビームが得られます。 また、高電圧発生回路の極性を反転することにより電子の加速も可能で、この場合、RFイオン源から電子を引き出せるようにしてあります。 本加速器は、高電圧発生部、イオン源、加速管部、電子偏向マグネット、分析マグネット及びスイッチングマグネットなどから構成されています。 イオン源から引き出されたイオンビームは高電圧により加速され、分析マグネットでエネルギー分析された後、スイッチングマグネットによって各ビームラインに振り分けられます。一方、電子ビームは加速器本体を出た直後に、電子偏向マグネットにより地階の第5ターゲット室に至る電子専用ラインに導かれます。 本加速器の主要な性能と諸元と性能を表1に示します。

   表1 3MVシングルエンド加速器の主要な性能と諸元

項 目 明 細
型名   NC3000B(日新ハイボルテージ)
加速電圧  0.4~3.0MV 連続可変
昇電圧方式  バランス型シェンケル回路(57段×2)
充電電流  1.5mA
加速管  イオン・電子共用型
電圧分割方式  抵抗分割
加速イオン質量  1~4amu、電子
電圧安定度  1×10-5
電圧安定化方式  (1) 精密電圧測定抵抗、またはエネルギースリットによるフィードバック
 (2) 可変インダクタンスによるリップル低減
絶縁ガス  SF6(6kg/cm2・G)
90度分析電磁石  最大偏向能力:48amu・MeV、NMRフィードバック磁場安定化
加速電圧極性切換方式  昇圧回路整流器の極性反転
イオン源  RF型イオン源
加速器本体の寸法  直径2.5m、長さ7m

エネルギーとビーム強度

 シングルエンド加速器で得られるイオン(または電子)のエネルギーは加速電圧に対応して、0.4~3MeVの範囲で任意に選択できます。 利用可能なビームは、水素(分子)、ヘリウム及び電子です。 イオンと電子の切り換えにはタンクを開放する作業等が必要なので、電子の利用期間をあらかじめ限定(例年1月後半のみ)し設定しています。 表2に利用可能なイオン等の種類とターゲットで得られる凡そのビーム強度を示します。

  

   表2 利用可能なイオン種とビーム強度 (2017.11現在)

 
イオン種 エネルギー
(MeV)
ビーム強度
(eμA)
H 0.4~3 ~50
H2 0.4~3 ~5
H3 0.4~3 ~0.2
He 0.4~3 ~50
電子 0.4~3 ~30

注1) 申請時のビーム条件の入力について
利用するエネルギーに範囲がある場合には、「0.4~3.0」
「~3.0」(単位はMeV)などと入力ください。
 ビーム強度の単位(eμA)エレクトリックμAは、ファラデーカップで計測される電流値です。
 表3.7の利用可能なイオン種とビーム強度は実績値であり、加速器やイオン源の状態に影響されるため保障値ではありません。また、照射チェンバーにより輸送できるビーム強度は異なります。

注2)電子利用について
年間応募日数が5日未満の場合は、利用できません。

     

ビームコース

 シングルエンド加速器には、第3ターゲット室に2本(SB、SC)及び第2、第5ターゲット室に各1本(SA、SX)のビームコースがあります。 施設共用で利用可能なビームポート(チェンバー)につきましては、こちらをご覧ください。

SA MD2、MT1の2つのチェンバーが設置されています。MD2はイオン注入装置からのビームとデュアル照射(MD2)が、MT1はタンデム加速器、イオン注入装置からのビームとトリプル照射(MT1)が可能です。
SB ビーム径0.25μmを目標としたマイクロビーム形成装置(SB)が設置され、PIXE等の分析利用が可能です。
SC 分析用チェンバー(SC1)が設置され、RBS等の分析利用が可能です。ご利用の場合はご相談下さい。
SX 電子専用で低温照射の行えるチェンバー(SX1)が設置され、スキャナにより最大10mm×10mmの拡大照射が可能です。
     

静電加速器に関する問い合わせ先

 イオン加速器管理課
 静電加速器係
 担当 千葉
 (Tel:027-335-8285)

静電加速器実験ポート図
図1 静電加速器系のビーム輸送系