関西光科学研究所 >> プレス発表 >> レーザーによる卓上高性能X線源を開発 ―高解像度イメージング技術に適した光源として医療診断応用に期待―
プレス発表
平成19年5月21日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
日本原子力研究開発機構(以下「原子力機構」と言う)(理事長 岡崎 俊雄)は、小型で強いレーザー1)を用い、高輝度で位相の揃った単色のX線を卓上の大きさで発生できる装置を開発しました。さらに、このX線の単色性と位相の揃った特性を利用し、高解像度の生体イメージを容易に撮ることができることを示しました。
今後、さらなる照射条件の最適化、レーザーの小型化、高繰返し化などを行なうことにより、卓上サイズの「位相コントラスト法」2)によるCT装置3)として、医療診断や基礎研究へ応用されると期待されます。
最近、X線イメージを高解像度で撮れる「位相コントラスト法」と呼ばれる手法が注目されています。これにはX線に位相が揃っているという性能が要求されます。従来の方法では、位相を揃えるとX線の強度が弱くなるか、そうでなければ装置が大きくなってしまうという難点がありました。後者の例はシンクロトロン放射光4)です。
量子ビーム応用研究部門レーザー電子加速研究グループの陳 黎明特定課題推進員、神門正城研究員らは、レーザー光の照射条件を工夫することによりX線発生の最適化を行いました。その結果、従来の装置よりも、位相が揃い、高輝度で、撮像に不要なバックグラウンドX線が極めて低い、単色で位相の揃ったX線を小型の装置で発生させることに成功しました。さらに、このX線源を用いた「位相コントラスト法」により極めて鮮明な生体(蜘蛛)の像が取得できることを示しました。
今回得られた小型高性能X線源は、不要なX線のバックグラウンドが低い高コントラストのX線を発生できるため、生体などへの放射線の影響を小さくでき、鮮明な画像を取得できます。加えて、X線のパルス持続時間が100フェムト秒(1フェムトは1千兆分の1)程度と極めて短く、従来計測できなかった超高速な現象の観測にも応用できます。
なお、本研究成果は、2007年5月21日(現地時間)に発行される米国物理学会学会誌Applied Physics Letters(Vol. 90, Issue 21, L. Chen, M. Kando et al., “Phase contrast X-ray imaging with intense Ar Kα radiation from fs-laser driven gas target”, 電子版)に掲載される予定です。
詳細は下記をご参照ください。(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構のサイトへリンク)
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