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関西光科学研究所 | プレス発表:初めて見た 生きた細胞の超微細構造の観察に成功 ―夢の顕微鏡:レーザープラズマ軟X線顕微鏡の開発で実現―

掲載日:2011年8月17日更新
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関西光科学研究所 >> プレス発表 >> 初めて見た 生きた細胞の超微細構造の観察に成功 ―夢の顕微鏡:レーザープラズマ軟X線顕微鏡の開発で実現―

 

プレス発表

平成23年8月17日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
国立大学法人奈良女子大学

発表のポイント

  • 生きた細胞内の構造を90ナノメートル以下の高解像度で観察できるレーザープラズマ軟X線顕微鏡を開発
  • 生きている細胞内のミトコンドリアや細胞骨格を、世界で初めて撮像することに成功

 

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 鈴木 篤之 以下「原子力機構」)及び国立大学法人奈良女子大学(学長 野口 誠之 以下「奈良女子大学」)は、生きた細胞の内部構造を高解像度で撮像できるレーザープラズマ軟X線顕微鏡1)2)の開発に世界で初めて成功しました。これは原子力機構量子ビーム応用研究部門照射細胞解析研究グループの加道雅孝サブリーダー、岸本 牧研究副主幹、篠原 邦夫研究嘱託及び奈良女子大学の保智 己准教授、安田 恵子講師らによる成果です。

全ての生物を構成する基本単位となる細胞は、外界からの刺激に対してその内部の構造を変化させながら対応していると考えられています。従って、細胞内のどの器官が放射線を受けて応答するのかなど、細胞内の構造とその変化は、様々な生命現象を解明するための極めて重要な情報となります。生物の生きた姿での観察に広く用いられている光学顕微鏡3)は、可視光を光源とするため、原理的に解像度は数百nm(ナノメートル)が限界で、細胞の詳細な内部構造までは観察できません。そこで、可視光より遙かに波長が短く、細胞の内外に多量に存在する水に吸収されにくい軟X線4)を光源とすれば、原理的には光学顕微鏡では不可能だった、細胞内部の微細な構造の観察が可能になります。しかし、そのためには、生きた細胞の動きが静止して見える短い時間で、瞬時に撮像する技術の開発も必要となることから、軟X線顕微鏡は夢の顕微鏡と言われ、その開発には誰も成功していませんでした。

原子力機構と奈良女子大学のグループは、軟X線を光源とした瞬時撮像5)を実現するために、高強度レーザー6)を金属薄膜に集光して高輝度の軟X線を発生させる技術と、細胞をX線感光材7)上に直接培養する手法を開発し、これらを組み合わせることにより、生きた細胞の内部構造を瞬時に撮像できるレーザープラズマ軟X線顕微鏡の開発に成功しました。さらに、蛍光顕微鏡を使って細胞内器官の位置を特定する方法と組み合わせることで、細胞核やミトコンドリア、細胞骨格8)など、生きた細胞の内部構造を90ナノメートルという誰も体験したことがない高解像度で観察することに世界で初めて成功しました。今回開発したレーザープラズマ軟X線顕微鏡は、今後、細胞への放射線影響の解明などをはじめ、広く生命現象を細胞レベルで理解する研究に役立つことが期待されます。

なお、本研究成果は、8月21日から米国サンディエゴで開催される光学・フォトニクスの分野で最も権威のある国際光工学会の国際会議(Optics+Photonics 2011)において発表する予定です。

本研究の一部は、文部科学省・地域科学技術振興事業委託事業「健康~動的生体機能計測診断」及び文部科学省・科学研究費補助金基盤研究(C)(課題番号21540517)の助成を受けて実施されました。

詳細は下記をご参照ください。(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構のサイトへリンク)

 

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