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プレスリリース

JT-60SAの統合試験運転の中断と調査状況について

掲載日:2021年4月30日更新
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 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(理事長 平野俊夫。以下「量研」という。)は、Fusion for Energy(欧州連合が設立した事業体。代表 ヨハネス・シュヴェンマー。以下「F4E」という。)と共同で、日欧共同で実施している幅広いアプローチ(BA)活動等を通じて、令和2年3月にJT-60SA※1の組立を完了し、真空試験、超伝導コイル冷却試験及び通電試験等の統合試験運転※2を進めてきました。

 令和3年3月、7キロボルト程度の高電圧を印加した超伝導コイルの通電試験中に、超伝導コイルへの電流が突然増加し、超伝導コイル用電源の過電流インターロックが作動して、超伝導コイルの電流が遮断されました。その数分後には、超伝導コイルを超伝導状態に保つための断熱真空容器内の圧力が通常の10-3パスカルから7,000パスカル(約0.07気圧)に上昇しましたが、JT-60SAは安全に停止し、その後に予定していた統合試験運転を中断しました。

 断熱真空容器内にある超伝導コイルへ電流を供給する電路を調査するため、液体ヘリウム温度(マイナス269℃)に冷却していた超伝導コイルを約20日間かけて慎重に昇温した後、断熱真空容器内を空気で満たし、4月8日から調査を開始しました。その結果、超伝導コイルに近い電路の接続部の外殻に放電痕を発見しました。目視検査と解析結果から、この放電の原因は、10キロボルトの電圧に耐え得る設計であった電路の接続部の耐電圧不良であると推測されています。また、断熱真空容器の圧力上昇は、放電により接続部のヘリウム流路に穴があき、ヘリウムが一部漏れ出たことによるものと判明しました。なお、超伝導コイル自体に損傷は見られませんでした。

 現在、日本と欧州の専門家により、今回の事象の根本原因を特定するための解析が進められています。JT-60SAの統合試験運転は今回の事案により遅延することとなりましたが、本解析結果を踏まえて損傷した接続部を効果的に修復するとともに、同様の事象の再発防止につなげていきます。

 さらに量研とF4Eは、今回の解析の結果を将来の超伝導トカマク装置に生かしてまいります。

JT-60SA

*1…JT-60SA(JT-60 Super Advanced)

 幅広いアプローチ(BA)活動として日欧共同で実施するサテライト・トカマク計画と我が国で検討を進めてきたトカマク国内重点化装置計画の合同計画として、茨城県那珂市の量研施設に建設された先進超伝導トカマク装置であり、現時点では世界最大の装置となります。

URL:https://www.qst.go.jp/site/jt60/5150.html(日本語)

 

*2…統合試験運転

 装置の動作を確認するために行う一連の運転。JT-60SA 本体の真空排気・リーク試験から始まり、超伝導コイルの冷却と通電試験、その後実際にトカマクプラズマを発生させプラズマの制御性も含めてJT-60SA全体の動作を確認します。