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~QSTの実績が認められ、初期組立へ追加の貢献~

プレスリリース

国際核融合プロジェクトITERの重要工程における日本の役割を拡大
~QSTの実績が認められ、初期組立へ追加の貢献~

掲載日:2026年6月11日更新
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QST横ロゴ2026年6月11日
​国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構


発表のポイント

  • QSTはこれまでに、ITER機構との調達取決めに基づいてITERの重要工程であるブランケット初期組立に用いられるツールの製作を進めてきた。
  • ​これまでの初期組立及び遠隔保守に関して培った技術的な実績に鑑み、追加で必要となった仮設プラグ用溶接・切断ツールについて、ITER機構からの要請を受け、開発及び調達に関する有償のタスク取決め(一般的な企業間における契約に相当)を令和8年4月23日に締結した。
  • 本タスクの実施により、ITER主要機器の組立における貢献を更に拡大し、日本における核融合炉建設に応用できる知見の獲得に努める。

概要

 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(以下、QST)は、南フランスにおいて建設中である核融合*1実験炉ITER(イーター)の運転に向けた重要工程である初期組立時に用いられる仮設プラグ用溶接・切断ツールの開発及び調達に関する新規タスク取決め*2を締結しました。

 ITER建設時に作業員によって行われるブランケット*3の組立作業に用いられる初期組立用ツール*4について、QSTの遠隔保守・交換技術がITER機構に高く評価されています。現在、同機構との調達取決めに基づいて製作を進めています。令和7年10月に検討した結果、ITERのプラズマ*5運転中に内部の気密性を保つため、ブランケット配管を仮設プラグで閉塞することが必須となり、そのためのツール類が新規に必要となりました。仮設プラグの設置と除去時に必要となる溶接ツール及び切断ツールについて、これまで同種のツールに関してQSTが培った技術的な実績に鑑み、仮設プラグの溶接及び切断を短期間に低コストで実現することが可能と見込まれたことから、その開発と調達を担当するよう、ITER機構から要請がありました。これに基づき、ITER機構とQSTとの間で仮設プラグ溶接ツール及び切断ツールの開発・調達に関する有償のタスク取決めを締結しました。

 このタスク取決めの締結により、ITERの重要工程である初期組立における日本の貢献は拡大しました。これを足掛かりに、ITER主要機器の組立における貢献を今後更に拡大していくと共に、日本における核融合炉建設に応用できる知見の獲得に努めてまいります。

仮設プラグ溶接ツール
図1.仮設プラグ溶接ツール​

1.ITERおよびブランケットの概要

 日本・欧州・米国・ロシア・韓国・中国・インドの7極は、フュージョンエネルギーの実現に向け、科学的・技術的な実証を行うことを目的とした大型国際プロジェクト「ITER計画」を推進しており、核融合燃焼による本格運転を目標に、実験炉であるITERの建設をフランスのサン・ポール・レ・デュランス市で進めています。日本は遠隔保守システムやダイバータ、トロイダル磁場コイル(TFコイル)をはじめ、ITERにおける主要機器の開発・製作などの重要な役割を担っており、QSTがITER計画の日本国内機関として機器などの調達活動を推進しています。

 ブランケットは、核融合反応で発生するエネルギーを熱として取り出し発電に利用しつつ、燃料となるトリチウム(三重水素)を炉内で生産し、さらに中性子線を遮蔽するという3つの重要な役割を担う、核融合炉の内壁を構成する機器です。ITERでは、3つの役割の内、発電は行わず、燃料の生産はテストブランケットと呼ばれる機器が、また、中性子の遮蔽は遮蔽ブランケットが担っています。ITERでは、単に「ブランケット」と呼ぶ場合、後者の遮蔽ブランケットを指します。ITERでは、ブランケットはプラズマに直接向き合う「第一壁」(最大1トン)と、第一壁と真空容器の間に位置して遮蔽のための中心的な役割を担う「遮蔽ブロック」(最大4トン)とに分割されています。「第一壁」と「遮蔽ブロック」は、プラズマとの不意の接触などによる損傷を受けた場合、保守・交換を行う必要がありますが、ITERの内部は高放射線環境であるため、ブランケットの保守は遠隔操作によって行われます。

 ITERでブランケットの遠隔保守を担う「ブランケット遠隔保守システム」は、QSTがその調達を担当しています。同システムは、大重量物である第一壁・遮蔽ブロックを搬送する大型マニピュレータ及びその補器類と、ブランケット配管の溶接・切断、ブランケット固定用ボルトの締緩などを行うツール類などから構成されています。QSTでは、2011年に同システムに関する調達取決めを締結して以来、同システムに関する研究開発と設計に取り組んでいます。

ブランケット(第一壁と遮蔽ブロック)と遠隔保守用マニピュレータ
​図2.ブランケット(第一壁と遮蔽ブロック)と遠隔保守用マニピュレータ

2.ブランケット初期組立について

 建設時に、トロイダル磁場コイルや真空容器を組み立ててドーナツ状に成型することや、真空容器内にブランケットやダイバータなどの機器を取り付けていく作業のことを「初期組立(しょきくみたて)」と呼んでいます。運転中に行われる機器の交換とは異なり、放射線レベルが低いので、作業員が介在して作業することが可能です。ITERにおいて、ブランケットの初期組立は2032年から数ヶ月かけて行われる予定であり、2034年のプラズマ運転開始に向けた、重要工程の一つです。

 ブランケットの初期組立においては、大重量物の搬送はタワークレーンなどの搬送装置によって実施されますが、配管の溶接・切断やボルトの締緩などは遠隔保守と共通の技術によって行われます。QSTはこれまでに遠隔保守システムの開発を通じて以下の技術を確立しており、QSTがITER機構に納入する初期組立ツールにもこれらの技術が用いられます。

  • 強大な電磁力に耐えるため、ブランケットは大型ボルト(直径64mm)によって固定されるが、ブランケットの製作誤差や設置誤差によるツールとボルトとの間の位置ずれを許容しつつ締結に必要な高トルク(8.4kN・m、橋梁用の高力ボルトは通常数百N・m)を実現する技術
  • 大重量の構造物(第一壁:1トン、遮蔽ブロック:4トン)の把持・据付を、接触による荷重を精密に測定して過負荷を自動的に回避する制御ロジックを開発したことにより、対象物との間のクリアランスが非常に厳しい(0.5 mm)状況でも円滑な設置を実現する技術
  • 配管溶接は通常は配管外部から行われるが、核融合炉では一般に配管外部にアクセスできるスペースを設けるのが困難であるため、狭隘な配管内部(内径43.7mm)にツールを挿入し、内部から配管を溶接・切断する技術
  • 核融合炉では真空容器内を高度に清浄に保つ必要があり、清浄度に影響を与えないため、切粉を真空容器内に落下させないように配管を切断する技術
  • 配管溶接・切断ツールやボルト締結ツール等、多種多様な各種ツール類を統合して運用する技術

 ブランケット初期組立作業   

図3.ブランケット初期組立作業

3.今回締結したタスク取決めの対象ツール

 今回締結したタスク取決めは、遮蔽ブロック内の冷却水配管に設置する仮設プラグ用の溶接・切断ツールの開発及び調達に関するものです。

 仮設プラグは、冷却配管の端部に取り付けて気密性を保つための部品です。ITERでは、ブランケットを構成する第一壁と遮蔽ブロックは水で冷却され、冷却のための配管は第一壁と遮蔽ブロックの間で溶接されています。しかし、ITERの初期の運転である研究運転では、水による冷却を行わず配管を持たない仮第一壁を使用することになっています。そのため、遮蔽ブロック側の配管は溶接されないまま開放されることになり、気密性が保たれません。気密性を保つためには、この遮蔽ブロック側の配管を仮設プラグで封止するか、あるいは配管が真空容器に入ってくる入り口である真空容器上部ポートで配管を封止することになります。ITER機構は当初、真空容器上部ポート近辺の冷却水配管回路開口部を仮設プラグで封止し、真空容器内の気密性を確保した上で研究運転を開始する計画としていました。その際に必要となるツールはITER機構で調達する計画としていました。その後、ITER機構内で仮設プラグによる封止位置に関する見直しが行われ、真空容器上部ポート近辺には仮設プラグを設置せず、代わりに遮蔽ブロック内の冷却水配管内に仮設プラグを設置する、という方針転換が令和7年10月になされました。QSTではこれまでに、遮蔽ブロック配管の溶接・切断を遠隔で実施する技術の開発を進めてきました。本技術は、狭隘な配管内部から溶接・切断を行う技術と、真空容器内を清浄な環境に保つよう切粉を出さずに切断する技術です。これらの技術は、遮蔽ブロック配管に類似した構造を有する仮設プラグの溶接及び切断に適用することが可能であり、遮蔽ブロックに対する技術を応用することによって、仮設プラグの溶接及び切断を短期間に低コストで実現することが可能となります。この点を考慮し、QSTが調達を担当することが合理的かつプロジェクト貢献の観点から有意義であるとITER機構が判断し、その開発と調達を担当するよう、ITER機構からQSTに協力の要請がありました。協議した結果、ITER機構とQSTとの間で仮設プラグ溶接ツール及び切断ツールの開発・調達に関する有償のタスク取決めを令和8年4月23日に締結しました。このタスク取決めに基づき、QSTはツールの設計、製作及び検証試験を実施し、令和10年(2028年)中にツール類をITERサイトに搬入する予定です。ここで得られる技術は、核融合炉の炉内機器を交換する際の配管溶接・切断にも適用できます。

仮設プラグによる閉塞位置
​図4.仮設プラグによる閉塞位置

4.ブランケット初期組立に関するこれまでのQSTの取り組み

 QSTは2030年までにブランケット初期組立用ツールをITER機構に納入する予定であり、これまでに以下の機器について製作に着手しています。

  • 遮蔽ブロック・第一壁用固定ボルト締結ツール:遮蔽ブロックを真空容器に対して固定するためのボルトを締結・取り外しするツールと、第一壁を遮蔽ブロックに固定するためのボルトを締緩するツールです。強大な電磁力に耐えるため、大型ボルト(直径64mm)を高トルク(8.4kN・m、橋梁用の高力ボルトは通常数百N・m)で締結する必要があり、既存の機器では対応できない一方、真空容器内の狭隘な空間でも運用可能な、専用のコンパクトな駆動機構が必要となります。また、ブランケットの製作誤差や設置誤差によって生じるツールとボルトとの間の位置ずれを許容するために、駆動部とレンチ間の結合を緩めてレンチがツールに対してわずかに角度を保つことができる構造としています。結合を緩めることは高トルクの伝達を妨げるというデメリットがありますが、必要最小限の適切な緩みであれば高トルクが問題なく印加できることを試験で確認し、緩みを最適化しています。
  • 遮蔽ブロック用配管同軸コネクタ溶接ツール:遮蔽ブロックの冷却配管を真空容器側の冷却配管と接続している同軸コネクタを溶接するためのツールです。配管溶接は通常配管外部から行うことで、溶接ツール用の十分なスペースを確保できていますが、核融合炉内部では、一般に配管外部にツール用のスペースを設けるのが困難であるため、狭隘な配管内部(最小内径70mm)にツールを挿入し、内部から配管を溶接する技術の開発が必要でした。接続される両配管の端面を精度よく位置合わせするため、2トンの力で他方の管を引き込むことができる機構も組み込んでいます。

遮蔽ブロック用固定ボルト締結ツール
​図5.遮蔽ブロック用固定ボルト締結ツール

第一壁用固定ボルト締結ツール
図6.第一壁用固定ボルト締結ツール​

遮蔽ブロック用配管同軸コネクタ溶接ツール
図7.遮蔽ブロック用配管同軸コネクタ溶接ツール​

【用語解説】

*1 核融合
フュージョン(核融合)エネルギーは太陽が輝き続けるエネルギー源であり、地上でのフュージョンエネルギーの実現には、重水素や三重水素などの軽い原子核がプラズマ状態で融合し、ヘリウムなどのより重い原子核になる核融合反応を利用する。燃料となる重水素、および三重水素の原料であるリチウムは海水中に豊富にあり、さらに、フュージョンエネルギーはCO2を発生しない。そのため、エネルギーおよび環境問題を根本的に解決すると期待されている。プラズマについては*5参照。
*2 タスク取決め
タスク取決めは、ITER機構がQSTなどの各国国内機関に有償で設計・機器調達を依頼する際に締結する取決めであり、一般企業における契約に相当する。「調達取決め」については各国の担当機器がITER協定の締結段階である程度決まっており、成果物はあらかじめ評価が定量的に定まった各国の貢献としてカウントされるのみ(具体的な対価はない)なのに対し、「タスク取決め」は各国の技術的な実績等に応じて新規に締結され、成果物に対して対価が支払われる。
*3 ブランケット
ブランケットは、核融合反応で発生するエネルギーを熱として取り出し発電に利用しつつ、燃料となるトリチウム(三重水素)を炉内で生産し、さらに中性子線を遮蔽するという3つの重要な役割を担う、核融合炉の内壁を構成する機器。
*4 初期組立用ツール
初期組立用ツールは、核融合炉の建設時に真空容器内機器を取り付けるために用いられる、冷却配管溶接・切断ツール、固定用ボルト締結ツール、把持用ツールなどの総称。真空容器内機器は遠隔保守時に取外し・再組立が行われるが、それに対して建設時に行われる最初の組立を「初期組立」と称する。
*5 プラズマ
プラズマとは、物質の四つの基本的な状態の一つであり、固体、液体、気体に次ぐ第四の状態。物質が非常に高い温度や強力な電磁場にさらされたときに、原子が分解し、プラスの電荷を持つイオンとマイナスの電荷を持つ電子が分離することによって形成される。核融合反応を起こすためには、1億度以上の超高温プラズマが必要とされている。
ITER日本国内機関:遠隔保守機器関連情報
https://www.fusion.qst.go.jp/ITER/jada/page2_6_4.html