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プレスリリース

狭い空間に適用可能な管内レーザ溶接技術を開発~狙い位置精密制御により核融合実験装置内における配管接続技術を高度化~

掲載日:2020年2月28日更新
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発表のポイント

  • 核融合炉内で想定される狭隘且つ外側からのアクセスが困難な環境下において、配管の接続部をその配管の内側から溶接レーザで狙い撃ちし、繋ぎ目の位置調整が不完全でも確実に溶接できる管内溶接技術を開発。
  • 建設中の超伝導トカマク装置JT-60SA及び将来の核融合炉で必要となる冷却水配管の設置及び交換に係る技術の高度化に貢献するとともに、配管が密集して修理、交換が難しいプラント機器への適用などの産業利用も期待。

 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(理事長 平野俊夫。以下「量研」という。)核融合エネルギー部門那珂核融合研究所JT-60システム統合グループは、核融合炉内機器用の冷却水配管を配管の内側からレーザを用いて溶接する技術を拡張し、配管を確実に溶接できる技術を開発しました。本技術は、日欧共同で茨城県那珂市に建設中の超伝導トカマク装置JT-60SAにおける装置内冷却水配管の接続技術の高度化に大きく貢献するものです。
 JT-60SAの装置内機器は高温となり、損耗するため、高圧冷却水を供給して除熱するとともに定期的に交換する必要があります。高圧冷却水を流す配管は、溶接により強固に接続する必要があるため、治具を用いて配管の繋ぎ目を高精度に固定し配管の外側から溶接します。しかしながらJT-60SAでは冷却水配管が狭隘な空間に配置されることから、繋ぎ目の固定や外側からの溶接が困難であるため、繋ぎ目の位置調整が不完全であっても確実に溶接できる技術の開発にこれまで取り組んできました。

 高出力レーザを光ファイバで伝送し、配管の内側から溶接する「管内溶接」技術を開発してきました。さらに、繋ぎ目の位置調整が不完全であっても繋ぎ目の詳細を事前に計測し、レーザ照射位置を0.1mm以下という高精度で追従制御しながら狙い撃ちする技術の開発に成功しました。これにより、一般的な自動溶接機による配管溶接ではまったく許容されない溶接前の配管の隙間について、1mm近い隙間を許容すると同時に、軸ずれや傾きが存在する複雑な状況下においても確実な溶接を可能としました。
 本成果により、JT-60SA装置内での冷却水配管接続の高度化に見通しを得るとともに、核融合実験炉ITER向けに開発された管内溶接技術を大幅に前進するものです。また、世界で初めて中小径配管(配管径50mm程度)を管内から位置調整裕度をもたせて追従溶接することに成功したもので、今後、プラント機器への適用など、産業利用も期待されます。

開発した溶接ツール

研究開発の背景と目的

 核融合装置の真空容器内はプラズマから高い熱負荷を受けるため、耐熱材料を対向壁として配置し冷却水で除熱する構造になっています。特に、真空容器内においてプラズマと唯一接触するダイバータと呼ばれる機器は、プラズマからの熱負荷により表面が1,000℃を超えるため、JT-60SAでは直径が約60mmの配管に20気圧を超える高圧かつ大流量の冷却水を循環させて除熱し、定期保守時には損耗部分を交換できる構造としています。JT-60SAのダイバータ装置を図1に示します。JT-60SAでは損耗箇所の交換を容易にするため、受熱部をまとめて取り出せるようカセット方式を採用しています。ダイバータカセットの取出及び据付時には、真空容器側の冷却水配管とダイバータカセット側の冷却水配管を切り離し再接続する必要があります。通常、このような取外し部はフランジ構造としますが、核融合装置の真空容器内は超高真空状態となるために冷却水配管は溶接接続により、強度と気密性を確保します。従来、このような配管溶接は、治具を用いて配管の突き合せ部を高精度且つ十分に拘束した上、配管の外側から確実に溶接してきましたが、真空容器内には様々な機器が存在し冷却水配管が複雑かつ狭隘な空間に配置されるために従来の外側からの溶接が困難であることから、これまで狭隘な空間で確実に配管溶接できる技術の開発を目指してきました。既にITER向けに開発した管内レーザ溶接技術では溶接前の隙間(ギャップ)0.7mmにおいて無欠陥溶接を達成していますが、狭隘な空間では突合せ溶接部において配管ギャップだけでなく、軸ずれ及び傾きの同時発生が不可避であることから、不十分な位置合わせにおける管内溶接技術の確立が急務でした。

JT-60SA及びダイバータカセットの鳥瞰図

図1 JT-60SA及びダイバータカセットの鳥瞰図

研究の手法

 前述した課題に対し、配管接続部の外側の状況に左右されない配管の内側から溶接する「管内溶接」技術に着目して溶接ツールの開発を行い、中でもレーザは光ファイバによって狭隘な空間に伝送可能であることから、レーザ溶接を採用しました。図2に示すように冷却水配管内へ溶接ツールを挿入し、配管接続部において高出力レーザによって溶接します。光ファイバを通じて伝送されたレーザをツール先端部において金メッキされた銅製ミラーに反射させることにより、ツールの外周方向に向かって放出します。なお、溶接時に発生する霧状のヒュームやスパッタ粒子がミラーに付着するとレーザの反射率低下により溶接の品質低下に繋がります。これを防止するため、レーザ放出口から窒素ガスを放出することに加えてエアカーテンを生成することにより、溶接回数20回以上のミラーの耐久性を実現しました。

レーザ溶接装置の設置位置と溶接ヘッド先端部

図2 レーザ溶接装置の設置位置と溶接ヘッド先端部

 レーザ溶接装置全体の概念図

図3 レーザ溶接装置全体の概念図

 実機のダイバータカセットを用いた溶接に先立ち、図3に示すように溶接試験用架台に溶接装置及び上下配管(軸方向の長さ:各125mm)の設置を行い、溶接試験を実施しました。配管の突き合わせ部分では軸ずれや傾きが不可避です。そこで、軸ずれや傾きがある状態で配管を固定し溶接試験を実施しました。配管が傾くと配管同士に隙間ができますが、その場合、一般的には溶加材を外部から供給し隙間を埋めます。他方、管内溶接では外部からの溶加材の供給が困難なため、配管接続部の内壁に冷却水の流れに影響のない程度の凸構造のノッチを溶加材として設けます。このノッチをレーザで照射して溶融させ、配管同士を接続します。また、図4に示すように上管が傾いている場合、溶接ツールの回転のみで水平に溶接を行うと円周溶接の途中でレーザの狙い位置がずれてしまい溶け込み不良の原因となります。その対策として、溶接前に溶接ツール内のカメラを用いて突き合わせ部を配管内部から撮影することにより、開先の状態を詳細に計測し、その状況に応じて「ツールの回転」と「上下位置」を連動させながら溶接することにより、レーザ照射位置を0.1mm以下という高精度で追従制御する技術を開発しました。

 レーザ溶接の狙い精度の向上

図4 レーザ溶接の狙い精度の向上

得られた成果

 レーザ溶接を配管の外側、並びに溶接後の配管の内側及び外側から撮影した写真を図5に示します。溶接時にはスパッタやヒュームが発生しますが、溶接部がきれいに接合していることが分かります。これまでに得られた溶接可能領域を図6に示します。本成果では、ギャップだけでなく、大きな傾き(ギャップ)や軸ずれが加わった複合状態においても接続可能であり、実機カセットで要求されるよりも大きな領域(傾き0.9度及び軸ずれ:0.3mm、この時の配管端部の距離は、約0.9mm)を網羅しています。なお、溶接後検査においては、外観検査、浸透探傷検査(PT)、耐水圧検査(実機2MPa×1.5倍=3MPa,30分)、Heリーク検査(<1x10-8 Pa m3/sec)及び放射線透過検査を行い、溶接内部も含めて無傷及び無欠陥であることを確認しています。

溶接時及び溶接後の配管の写真

図5 溶接時及び溶接後の配管の写真

 

合格した溶接後検査及び溶接可能領域

図6 合格した溶接後検査及び溶接可能領域

今後の予定

 本成果を活かし、現在、建設が進んでいる超伝導トカマク装置JT-60SAのダイバータカセットの実機の溶接を進めるとともに、真空容器内機器のロボットを用いた遠隔保守による定期交換技術の確立を目指します。さらには、ITERの炉内機器や核融合原型炉への応用をも視野に入れて核融合工学を一層進展させていきます。

 

用語説明

1. JT-60SA (JT-60 Super Advanced)

幅広いアプローチ活動として日欧共同で実施するサテライト・トカマク計画と、我が国で検討を進めてきたトカマク国内重点化装置計画の合同計画として、茨城県那珂市の量研那珂核融合研究所に建設中の超伝導トカマク装置です。

URL:https://www.qst.go.jp/site/jt60/5150.html(日本語)

JT60SA

JT-60SA鳥瞰図

 

2. ITER (核融合実験炉:イーター)

 制御された核融合プラズマの維持と長時間燃焼によって核融合の科学的及び技術的実現性を実証することを目指したトカマク型(超高温プラズマの磁場閉じ込め方式の一つ)の核融合実験炉です。1988年に日本・欧州・ロシア・米国が共同設計を開始し、2005年にフランスのサン・ポール・レ・デュランスに建設することが決定しました。2007年には、日本、欧州連合、中国、インド、韓国、ロシア、米国の7極が参加し、国際機関「イーター国際核融合エネルギー機構(イーター機構)」が発足しました。現在、イーターが格納される建屋の建設が進められており、また、各極において、それぞれが調達を担当する様々なイーター構成機器の製作が進められています。2025年頃からのプラズマ実験の開始を目指しています。イーターでは、重水素と三重水素を燃料とする本格的な核融合による燃焼が行われ、核融合出力500MW、エネルギー増倍率10を目標としています。
 イーター計画に関するURL  http://www.fusion.qst.go.jp/ITER/index.html(日本語)
 イーター機構のURL http://www.iter.org/(英語)

ITER鳥瞰図

ITER鳥瞰図

 

3. 核融合原型炉

 核融合反応は、太陽が光輝きエネルギーを放射している原理であり、現在の核融合研究では、燃料として水素の同位体である重水素と三重水素(トリチウム)を用います。核融合炉では、この重水素と三重水素の原子核を融合させる際に生じるエネルギーを利用して発電を行います。核融合原型炉は、この核融合を用いた発電炉の技術的な実証と経済的な実現性を明らかにするためのものです。

 

 

 

 

 

 

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