施設の概要
電子線照射施設は、電子加速器および垂直・水平方向の2つの方向に電子線を照射できる各照射室で構成されており、電子線を走査(スキャン)することで帯状に大気中に発生することができます。垂直照射室にはコンベア装置が備えてあり、台車に試料をのせて大量の照射ができます。このコンベア装置は迷路を通って作業エリアと通じているので、加速器が運転中でも照射試料の取り出しや準備作業ができるようになっています。また、垂直照射室で照射中でも水平照射室で安全に実験準備ができるように工夫されています。排ガス中の有害物質の分解技術、機能性材料の開発、半導体の照射効果などの研究開発に使われています。
電子線照射施設
電子加速器本体
加速電圧昇圧方式 | 加速電圧(MV) | 電子電流(mA) | 走査幅 | 走査周波数(周期) | 竣工年 |
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コッククロフト・ワルトン型 | 0.5 MV~2.0 MV | 0.1 mA~30 mA | 垂直:120 cm 水平:60 cm |
200 Hz (5 ms) | 1981年 |
電子加速器の概要
電子加速器は建屋の2階に設置されていて、1階に垂直照射室、2階に水平照射室があります。2つの照射室は、2 mのコンクリートの壁で囲まれています。
垂直照射室内の様子
加速管内で加速された電子は電磁石によって走査され、チタン製の薄窓(厚さ0.05 mm)を透過して、幅120 cmにわたり均一な電子線となって真空中から大気中に取り出されます。コンベアの台車にセットされた試料はこの窓下を通過するときに照射されます。
深度線量率分布
電子が物質の中に透過する深さと与えるエネルギーの関係は上図のようになります。電子のエネルギーが1 MeVの場合、水の中を最大で0.5 cmまで、2 MeVでは約1.0 cmまで進むことができます。この値は、水分の多い物質や高分子材料を照射するときの目安となります。
電子の発生について
金属の固体内には自由電子があり、高温に熱すると外部に放出されます。これを熱電子といいます。熱電子の発生源として、電球などに使用されているフィラメントがあります。この電子加速器では、タングステン(W)製のフィラメントに電流を流して加熱し、電子を発生させています。
こちらのページのスライドから、電子加速器を利用した成果がご覧になれます。また、実用化された製品などはこちらで紹介しています。