現在地
Home > 理事長室へようこそ

理事長室へようこそ

ごあいさつ

量子科学技術研究開発機構理事長の写真 量子科学技術研究開発機構(量研/QST)は、令和3年4月1日で発足5周年を迎えました。

 平成28年4月1日に放射線医学総合研究所と日本原子力研究開発機構の量子ビーム部門と核融合部門が再編統合されて発足しましたQSTでは、発足同年の10月に、中長期的な視野に立ち、QSTが目指すべき方向性を「QST未来戦略2016」にまとめました。そこでは、重粒子線等によるがんの治療や、放射線の人体への影響や医学利用、放射線防護や被ばく医療等の研究、量子ビームによる物質・材料科学、生命科学等の先端研究開発、高強度レーザー等を利用した光量子科学研究に加え、国際協定に基づくITER計画及び幅広いアプローチ(BA)活動を中心とした人類究極のエネルギー源である核融合の研究といったこれまでの研究活動をさらに発展させるとともに、QST内での分野間融合を促進し、国内外の研究者との連携を強化しながら新たな研究領域を開拓していくこととしました。

 発足して3年が経った平成31年4月にはQSTを取り巻く情勢の変化を踏まえ、「QST Ver.2」として大きな組織改編を行いました。その改編の1つの柱が、QST内の物理・工学研究と生物・医学研究の融合に端を発し、国内外の関連分野の研究者との連携を強化しつつ創出した新たな研究領域である、量子論や量子技術に基づく生命現象の解明と医学への展開を目指す「量子生命科学領域」です。量子生命は、統合イノベーション戦略推進会議が定めた量子技術イノベーション戦略(令和2年1月21日)における8つの量子技術イノベーション拠点のうちの1つに選ばれ、QSTの千葉地区がその拠点に指定されました。

 そして、発足5周年を迎えたことを機に、QSTでは千葉地区の組織改編を行います。これまでの量子医学・医療部門と量子生命科学領域を統合して、「量子生命・医学部門」として新たな体制で再出発します。その部門の下で、量子医科学研究所、放射線医学研究所、QST病院、量子生命科学研究所の4つの組織が、それぞれの分野で日本はもちろん世界をリードすべく活動を開始します。

 量子医科学研究所はがん死ゼロ健康長寿社会を目指して、部門融合で進める小型・高性能な次世代重粒子線がん治療装置である「量子メス」開発や標的アイソトープがん治療の研究開発、次世代PET研究開発などのイメージング技術の高度化による認知症などの診断・治療の研究開発でこの分野をリードしていきます。QST病院は量子医科学研究所の成果を社会実装していきます。放射線医学研究所は放射線被ばくなど放射線事故に対応する日本の中核拠点として社会的使命を果たしていくとともに、放射線の人体への影響や放射線防護などの研究を先導していきます。また、IAEAなどの国際機関と密接に連携して、世界の安全に貢献していきます。量子生命科学研究所は、国際的なハブとして関連分野の研究者との連携を強化して量子生命科学研究を発展させていきます。

 QST Ver.2の組織改編におけるもう一つの大きな柱である官民地域パートナーシップで進める軟X線領域に強みを持つ次世代放射光施設については、パートナー側の代表である一般財団法人光科学イノベーションセンターと連携して、東北大学青葉山新キャンパスでの建設を進めていきます。令和5年度に施設が完成すればSPring-8とは違った新規材料の開発や生命のダイナミズムの解明などが期待されます。

 量子ビーム科学部門では、Society 5.0に向けたデジタル革新に必要な省電力・高速・大容量の革新的なチップの開発に、量子ビーム技術に加え、スピントロニクスとフォトニクスを組み合わせたスピンフォトニクス技術を駆使して取り組んでいきます。また、レーザーの応用研究を進め、量子メス用のレーザー加速器の開発やレーザー打音によるトンネル検査、レーザーを用いた非侵襲な血糖値測定等の社会実装を目指します。

 環境に優しく、安定的なエネルギーを確保するためには核融合のような太陽に依存しないエネルギーを開発する必要があります。核融合エネルギー部門では、世界7極で進めるITER計画及び日欧で実施するBA活動を中心として核融合エネルギーの早期実現を目指していきます。BA活動における欧州と日本の共同作業により、13年の歳月をかけて令和2年3月に完成したJT-60SAは、ファーストプラズマに向けて調整を進めています。ITER計画では、令和2年にQSTが製作した超伝導トロイダル磁場コイルのITER機構への納入を開始し、それに伴いITER本体の組み立て作業が開始されました。ITER計画及びBA活動の成果を基盤として、2040年代後半での原型炉における発電実証を目指していきます。

 さらに、SIP事業「光・量子を活用したSociety 5.0実現化技術」の管理法人として、出口を見据えたレーザー加工技術、光・量子通信技術、光電子情報処理技術の連携を図っていきます。既存のQSTの強みをうまくマッチングさせて、Society 5.0実現への貢献を強めていきます。

 以上の研究領域を、7研究所、1センター及びQST病院で展開していきます。これらの英知と力を結集し、「世界トップクラスの量子科学技術研究開発プラットフォーム」を構築するとともに、量子科学技術分野の研究シーズを探索し萌芽的研究として育てることで、量子科学技術と医学・生命科学の融合領域等、新たな研究分野の地平を開き、「世界に冠たる“QST”」として先導的役割を果たしていきます。

 さらに、得られた成果を広く社会に還元するために、大学や産業界を含む研究機関や行政機関との人材交流や共同研究など、産学官連携活動を積極的に推進し共創を誘発する場を形成します。また量子科学技術による世界中の人々との協同を介して新たな知の創造や異文化理解・尊重を育み「調和ある多様性の創造」を推進します。このような活動により、平和で心豊かな人類社会の発展に貢献していきたいと考えています。

 皆様のご助言、ご支援、ご鞭撻のほどお願いいたします。

理事長 平野俊夫