現在地
Home > 分類でさがす > お知らせ・ご案内 > その他 > その他 > > 理事長室へようこそ > 令和4年度 新入職員歓迎式 理事長訓示

理事長室へようこそ

令和4年度 新入職員歓迎式 理事長訓示

掲載日:2022年4月1日更新
印刷用ページを表示

 皆さん、こんにちは。理事長の平野です。

 本日、皆さんのような夢と希望に満ちた前途有望な方々を、量研/QSTの新しい仲間としてお迎えすることができたことは、私たちにとって大きな喜びであり、役職員一同、心より歓迎いたします。

 2019年末に始まった新型コロナウイルス感染症パンデミックは3年目に入り、まだまだ油断は禁物ですが、ようやくピークを超えつつあります。しかしウクライナでは、数千万人の人々が非人道的な戦争の渦中にあります。

 人類20万年の歴史を大局的に俯瞰すれば、世界は限りなく統一に向かっていると思います。アフリカの一角で誕生したホモ・サピエンスが世界に拡散したのが「第1の波」、1万年ぐらい前に狩猟から農耕時代にはいり定住化したのが「第2の波」、13世紀にモンゴル帝国により初めてアジアとヨーロッパの文化圏がつながったのが「第3の波」と捉えることができます。18世紀に産業革命とともに始まり、1990年まで約200年続いた「第4の波」がベルリンの壁崩壊で終わりを告げ、人類は今、多様性爆発の「第5の波」を航海中です。新型コロナウイルス感染症やウクライナ問題は、この大波の中で起こった事象と捉えることができます。今こそ、地球は1つ、我々は「地球市民」であることを強く意識する必要があります。

 このような大きな波の中で、みなさまご自身の人生においても大きな変革の日を迎えられました。皆さんは、それぞれに喜びと不安の入り混じった気持ちで私の話を聞いておられると思います。未来が不確定であるが故に人は不安を抱きます。しかし、不安の裏返しは希望であり、可能性であり、夢を実現できる好機でもあります。私たちQSTの職員は、大きな可能性を秘めた皆さんの若い力を大いに期待しているところです。

 QSTは、放射線医学総合研究所と日本原子力研究開発機構の一部が再編統合され、6年前の2016年4月1日に誕生した研究開発法人です。その後、発足3年目に当たる2019年4月1に大幅な組織改革を行い、「QST Ver.2」として再始動しました。今年度は、2016年度に始まった第一期中長期計画が終了するということで、7年間の集大成を形にするとともに、2023年度から始まる第二期中長期計画に繋いでいく、いわばQSTの未来を決めるとりわけ重要な年です。

 QSTは、がん死ゼロ健康長寿社会実現を目指して、重粒子線や標的アイソトープ治療等によるがんの治療や、次世代重粒子線がん治療装置である「量子メス」の研究開発を行っています。また、認知症の診断技術や治療方法の研究開発、放射線の人体への影響や医学利用、放射線防護や被ばく医療等の研究開発を行っています。さらに、量子ビームによる物質・材料科学、高強度レーザー等を利用した量子光学研究を推進しています。また、QSTが推進している国際協定に基づくITER計画及び幅広いアプローチ(BA)活動を中心とした人類究極のエネルギー源である重水素と三重水素の核融合、すなわち水素融合の研究開発を推進しています。水素融合は、エネルギー問題を根本的に解決する切り札であると期待されています。そして、「量子目線」で生命機能を追求し、「生命とはなにか?」という生命の根本的理解に迫ることを目的とした量子生命科学という新しい研究領域を開拓するとともに、日本の拠点として全国の研究者と連携して推進しています。今年の夏には量子生命科学研究所の新しい研究棟が完成する予定です。

 QST全職員は、これらの英知と力を結集し、「世界トップクラスの量子科学技術研究開発プラットフォーム」を構築するとともに、量子科学技術分野の研究シーズを探索し萌芽的研究として育てることで、量子科学技術と医学・生命科学の融合領域等、新たな研究分野の地平を開き、「世界に冠たる“QST”」として先導的役割を果たしていかなければなりません。

 さらに、得られた成果を広く社会に還元するため、大学や産業界等との人材交流や共同研究などを通じて産学官連携活動に積極的に取り組むことで、量子科学技術による世界中の人々との協働を介して新たな知の創造や異文化理解・尊重を育み、QSTの理念である「調和ある多様性の創造」を推進し、平和で心豊かな人類社会の発展に貢献していきたいと考えています。

 ここで、簡単に、QSTの理念を説明したいと思います。

 人類の歴史は多様性ゆえの発展と対立の歴史であったと思います。多様性ゆえに心豊かな生活を送ることができます。また、多様性はイノベーションの源泉でもあります。一方、多様性ゆえに対立や紛争、そして幾多の戦争を経験してきました。量子科学技術は、学問、芸術やスポーツと同じく人類共通言語であり、多様性の壁を乗り越える大きな力を有しています。QSTでは、この多様性の壁を、量子科学技術を介して乗り越えることにより、量子科学技術そのものを推進するのはもちろんのこと、異分野融合領域を開拓していくことにより、世の中に革新を起こして行きます。またそれだけに止まらず、世界中の多様な人々との共同研究などの人的な交流を介して異文化理解や異文化尊重を育んで行きます。そして、平和で心豊な人類社会の発展に貢献して行きたいと考えています。今、人類は新型コロナウイルス感染症パンデミックを経験しています。またウクライナでは戦争が勃発しています。今ほどQSTの理念である「調和ある多様性の創造」が重要な時はありません。皆さんも、本日より、このQSTの理念を心に深く刻み、それぞれの立場でQSTの発展に貢献してほしいと思います。

 私は常々「夢は叶えるためにある」と言っています。

 夢は人により、組織により様々です。しかし夢に共通することは、その人にとり、あるいはその組織にとっては実現することが大変困難で、不可能にすら思える点です。しかし、夢は所詮夢で、我が身や組織には無関係であると諦めてしまえば、夢は永久に夢です。夢に向かって目の前の1つ1つの山を登り切っていけば、夢は自然と近づいて来ます。夢が実現すればこれほど素晴らしいことはありませんが、たとえ実現しなくても夢を目指して目の前のことを解決する努力をする、その過程が皆さんの人生を豊かにし、組織を活性化します。

 「夢は叶えるためにある」。このことを胸に刻んで、QSTで皆さん方の新しい人生の一歩を踏み出してほしいと思います。

 最後になりますが、皆さんはQSTの新入職員として、内外から期待と注目を浴びていることを認識して、常に良識ある行動に心掛けて下さい。その上で、健康に十分注意を払いながら、皆さんの持てる力を存分に発揮し、職場にフレッシュな風を吹き込んでいただきたいと思います。また、QST内ホームページにある理事長つぶやきのコーナーも時間のあるときに訪れてください。

 

 皆さんと一緒に夢の実現に向けて頑張りたいと思います。

 皆さん方のこれからのご活躍を心から祈念して、お祝いと期待の言葉とさせていただきます。

 

令和4年4月1日

国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構

理事長  平 野 俊 夫