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令和2年度 新入職員歓迎式 理事長訓示

掲載日:2020年4月1日更新
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令和2年度 新入職員歓迎式 理事長訓示

 

 

 皆さん、こんにちは。理事長の平野です。

 本日、皆さんのような夢と希望に満ちた前途有望な方々を、量子科学技術研究開発機構、「量研/QST」の新しい仲間としてお迎えすることができたことは、私たちにとって大きな喜びであり、役職員一同、心より歓迎いたします。

 皆さんは、それぞれに喜びと不安の入り混じった気持ちで、ここにおられることと思いますが、ここにいる我々や配属される職場においては、大きな可能性を秘めた皆さんに大いに期待しているところです。

 QSTは、放射線医学総合研究所と日本原子力研究開発機構の一部が再編統合され、4年前の2016年4月1日に誕生したばかりの研究開発法人です。我々QSTにとって昨年度は、大きな変革の年でありました。QSTが発足して3年目に当たる昨年4月1日に大幅な組織改革を行い、「QST Ver.2」として再始動しました。合言葉は「未来を開く、量子で拓く」です。今年度は、「QST Ver.2」の内容を更に充実させていく段階であります。皆さんは、日本の新しい時代の担い手であるだけでなく、「QST Ver.2」の牽引役でもあります。

 QSTはこれまで、重粒子線等によるがんの治療や、放射線の人体への影響や医学利用、放射線防護や被ばく医療等の研究、量子ビームによる物質・材料科学、生命科学等の先端研究開発、高強度レーザー等を利用した光量子科学研究に加え、国際協定に基づくITER計画及び幅広いアプローチ(BA)活動を中心とした人類究極のエネルギー源である核融合の研究、更には「量子目線」で分子機能を追求し、生命の根本的理解に迫ることを目的とした量子生命科学等を推進してきています。

 これら、量子医学・医療領域、放射線安全領域、量子材料・物質科学領域、量子光学領域、量子エネルギー理工学領域、量子生命科学領域の6研究領域を、5研究所、2センター、1領域、そしてQST病院で展開しています。これらの英知と力を結集し、「世界トップクラスの量子科学技術研究開発プラットフォーム」を構築するとともに、量子科学技術分野の研究シーズを探索し萌芽的研究として育てることで、量子科学技術と医学・生命科学の融合領域等、新たな研究分野の地平を開き、「世界に冠たる“QST”」として先導的役割を果たしていかなければなりません。

 さらに、得られた成果を広く社会に還元するため、大学や産業界等との人材交流や共同研究などを通じて産学官連携活動に積極的に取り組むことで、量子科学技術による世界中の人々との協働を介して新たな知の創造や異文化理解・異文化尊重を育み、QSTの理念である「調和ある多様性の創造」を推進し、平和で心豊かな人類社会の発展に貢献していきたいと考えています。

 ここで、簡単に、QSTの理念を説明したいと思います。

 人類の歴史は多様性ゆえの発展と対立の歴史であったと思います。多様性ゆえに心豊かな生活を送ることができます。また、多様性はイノベーションの源泉でもあります。一方、多様性ゆえに対立や紛争、そして幾多の戦争を経験してきました。量子科学技術は、学問、芸術やスポーツと同じく人類共通言語であり、多様性の壁を乗り越える大きな力を有しています。QSTでは、この多様性の壁を、量子科学技術を介して乗り越えることにより、量子科学技術そのものを推進するのはもちろんのこと、更に異分野融合領域を開拓していくことにより、世の中に革新を起こしていきます。またそれだけに止まらず、世界中の多様な人々との共同研究などの人的な交流を介して異文化理解や異文化尊重を育んでいきます。そして、平和で心豊かな人類社会の発展に貢献していきたいと考えています。皆さんも、本日より、このQSTの理念を心に深く刻み、それぞれの立場でQSTの発展に貢献してほしいと思います。

 今、新型コロナウイルスの嵐が世界に吹き荒れています。

世界は、

グローバル化から、一国主義へ

協調から孤立へ

信頼から疑心暗鬼へ

と流れは大きく変わり、社会には閉塞感が漂っています。

この流れを変えなければなりません。

新型コロナウイルスは私たち人類に語りかけています。

世界は1つです。

多様性の壁を乗り越えて世界に調和をもたらさなければなりません。

対立から協調へ、それができなければ滅亡への道が開かれます。

このような時だからこそ、QSTの理念である、「調和ある多様性の創造」はますます重要となります。

 

 さて、冒頭に、今年度は、「QST Ver.2」の内容を更に充実させていく段階であるとお話ししましたが、いくつかトピックスをお話ししましょう。

 この3月末には、先進超伝導トカマク装置JT-60SAが13年の歳月を経て完成しました。世界中からプラズマ研究の研究者が那珂核融合研究所に集結し、核融合発電の実現に向けて新たなスタートを切ったところです。そして装置完成に引き続き、試験運転を開始し、今年秋頃にはファーストプラズマを予定しています。また、次世代放射光施設の建設が、2023年完成を目指して本格化します。さらに、昨年発足した量子生命科学領域も新研究棟建設の予算が認められ、2022年完成に向けて建設が開始されます。そして昨年基幹高度被ばく医療支援センターとして指定されたQSTで活動の中心となる高度被ばく医療センターでも、新高度被ばく医療施設の建設が始まります。

 このように、今年度は、QST発足以来進めてきた「QST未来戦略2016」がいよいよ具体的に予算化され、それを実現するための最初の段階でもあります。引き続き、改革の成果を最大限に引き出し、真に一つの研究機関として、そして量子科学技術における日本の、ひいては世界の牽引役として、成果の最大化に向けて邁進していきたいと考えています。

 私は常々「夢は叶えるためにある」と言っています。

 夢は人により、組織により様々です。しかし夢に共通することは、その人にとり、あるいはその組織にとっては実現することが大変困難で、到底不可能にすら思える点です。しかし、夢は所詮夢で、我が身や組織には無関係であると諦めてしまえば、夢は永久に夢のままです。夢に向かって目の前の1つ1つの山を登り切っていけば、夢は自然と近づいて来ます。夢が実現すればこれほど素晴らしいことはありませんが、たとえ実現しなくても夢を目指して目の前のことを解決する努力をする、その過程が皆さんの人生を豊かにし、組織を活性化します。

 「夢は叶えるためにある」。このことを胸に刻んで、QSTで皆さん方の新しい人生の一歩を踏み出してほしいと思います。

 2020年は皆さんの人生にとり大きな節目の年として皆さんの記憶に残ると思います。一方人類の歴史20万年においても2020年は大きな変革点でもあります。人類は1万2千年前に農耕時代に入り、人類社会に大変革がもたらされました。その1つに感染症があります。現在の多くの感染症は農耕時代に牛や馬などの野生動物が家畜化されたことにより人類社会にもたらされました。そして、感染症は人類の歴史をも塗り替えてきました。中世ヨーロッパではペストの大流行により人口の50%の人が亡くなり、中世封建体制は崩壊しました。またインカ帝国やアステカ文明はスペイン人がもたらした天然痘によりわずか一年で崩壊しました。人類の歴史は感染症との戦いの歴史であると言っても過言ではありません。そしてその戦いは今でも続いています。重要な点は、人類の歴史の大転換点において感染症が大きな役割を演じたという歴史的事実です。今のコロナ騒ぎは、1年・2年かかるかもしれませんが、必ず終結します。しかし終結後の世界は大きく変わるはずです。18世紀産業革命により始まった現在の科学技術主導の三百年にわたる一時代は間違いなく終わり、今までとは全く異なる新たな歴史が始まると思います。今、私たちは人類歴史上大きな変革点に生きていることを自覚しなければなりません。そして新しい時代を切り開く主役は皆さん、若い人です。QSTも変わっていかなければなりません。その主役は皆さんです。理事長として皆さんの若い力に大きた期待を抱いています。

 最後になりますが、皆さんはQSTの新入職員として、内外から期待と注目を浴びていることを認識して、常に良識ある行動を心掛けて下さい。その上で、健康に十分注意を払いながら、皆さんの持てる力を存分に発揮し、職場にフレッシュな風を吹き込んでいただきたいと思います。また、QST内ホームページにある「理事長のつぶやき」のコーナーも時間のあるときに訪れてください。

 皆さんと一緒に夢の実現に向けて頑張りたいと思います。

 皆さんのこれからのご活躍を心から祈念して、お祝いと期待の言葉とさせていただきます。

 

令和2年4月1日

 

国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構

理事長  平 野 俊 夫

 

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